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誌上個展

<日本航空史>二式水戦 実機とプラモデルの流用の話

  by 加藤 寛之
プラモデル コラム

 LSのキットは、アリイ版を含めて何機作ったかわからない。「二式」だから「零式」よりも制式年がおそくて、零戦の量産が行なわれている最中での生産機ということになる。実機を簡単にいえば零戦の水上機型なのだが、もちろんプラモデル的には零戦21型のキットと別な金型である。


 二式水戦のプラモデルは、零戦に似た垂直尾翼であることが多いが、実機はラダーのリブ1枚分くらい背が高くて、上部の寸法も前後共に広くなっている。前縁は、側面から見たときに垂直安定板の前縁をくるむように形成しているパネルの幅が、下よりも上で広いことで分る。ラダーは零戦と見比べやすい。このあたりは、『航空ファン』2001年10月号記事にも書いてある。昭和30年代の古い図面にはちゃんと大きく描かれているものがあるので、プラモデルが流行るころに曖昧になったのだろうと思う。




 プラモデルのフロートも難アリだ。細すぎる。実機のフロートにうつる影や台車を置く位置の表示線などがどう見えているかをちゃんと検討すれば、もっと太いと分る。フロートは私のいきつけの模型店「ワールドホビーショップはせがわ」の店主が写真を頼りに木で型を作ってレジンで複製、差替えパーツとして売ったことがあった。幅広で丸々としており、特に主フロートの後半は全然違う形だった。その後に本に図面がでたが、“ほぼピタリ”という、素晴らしい技だった。まあ、私も二式水戦の写真をボ~と見ていた一人なので、偉そうなことはいえない。
 もうちょっと書く。資料は『世界の傑作機』スペシャルエディション6「零式艦上戦闘機」(文林堂、平成24年)だけにする。
 p.45に「初期生産機のなかには翼端折りたたみ機構が残されているものもあった」とある。実機でも流用できるものは使うのが普通だろう。p.115下の飛行中写真の灰色機をみると、胴日の丸前の分割部と同様な筋が翼端にも見える。私は特別なシーリングの跡だろうと思っている。
 流用がダメな部分もある。水上機の操縦席へは、陸上機の反対側の右後方から登る。p.113上とp.114上の写真を見ると、日の丸の下にハシゴがかかっていて、その上の胴体に2本の手架けがある。このハシゴを架けるパーツと手架けは二式水戦ならではのもの。左側の同様な部品は実機に不要だと思うが、私は確認していない。右後方から登るならば、零戦ならば左翼の足元にある滑り止めも左翼側にないと思う。これも私は未確認。
 二式水戦には、転倒した際の支えとなる保護支柱が後部風防内にない。それはそうだろう、転倒しても頭をおさえるのは水だから。零戦の場合、保護支柱の天井部分は不透明部になるが、支柱がない二式水戦は透明。でも、「何かある」ように見える写真もある。よって、私は断定しない。



 掲載写真の説明。
編隊で飛ぶ写真は戦時中に公開されたもの。そのために機番などは塗りつぶされているものの、大きな垂直尾翼は容易に確認できる。




 キットを2つ。
 アリイは旧LSのキットを引き継いだもの。箱絵を見ると、垂直尾翼はキットにあわせて描いてある。風防内に保護支柱があるのは軽い誤りだが、これもキットと同じ。とはいえ私の大好きなキットで、しばらく前に数個買い足した。エルロン、フラップ、風防、プロペラ回転と、可動たっぷりの楽しいキットだ。友人情報では、LSの初期のキットは主フロートが短いという。LS時代の当初は1/75表記だった。
 ヨーデルモデルは珍品。箱絵がいい。カッコいいだけでなく、このキットの流通していた時代として細部考証もすばらしい絵だ。キットはというと、主翼とフロートは2式水戦専用。胴体は零戦の流用で固定尾輪があり、細かいパーツ群は隼(!)&零戦との共用とみた。そんな感じだから、1/72表記を信じるには勇気がいる。わりと最近、なんでも扱うリサイクルショップから当時価格と同じ100円で購入した。



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