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飛行機プラモデルの製作

 スピットファイア Mk.1(ハセガワ 1/72)

  by 加藤 寛之




 とっくに定番商品でなくなったが、2枚ペラで平らなキャノピーの初期型と、3枚ペラの膨らんだキャノピーのタイプを選んで作れる、魅力的な構成が特徴。エアフィックスの羽布張り主翼のハリケーンが売り出されたのに、この商品が流通していないのは残念だ。
 コックピットは、床板と背もたれ、操縦悍、正面の計器盤の4点に、お好みでお人形さんが乗せられる。このキットが発売された時代では、充分な構成だ。出来上がってしまえば全く見えないので支障がない。
 胴体は定番の左右分割で、ラダーは左胴体に付けられている。組んで右側を見ても破綻していない。垂直尾翼は非常に薄く実感をもって造られている。安定板とラダーの間のミゾは深く掘られ、ラダー側には適度の丸みを付けてあって、いかにも「ここは動きます」と見える。ラダーの羽布表現に布目はこの時代の表現方法だから、欠点などではない。むしろリブと羽布の適度な浪打表現の素晴らしさに驚く。




 主翼は下面が1枚、上面は胴体をはさんで左右パーツという定番の構成。ただしエルロンとフラップ、翼端は上面に一体成型。これによって、翼先端から後縁がシャープに仕上がっている。エルロンの羽布表現はラダーと同様の見事さだ。機首の形も、四角いエンジンを収めていることを意識した、いい感じの形をしている。排気管はあとから接着する方式で、形もスッキリ出来ている。
 このキットのパネルラインは凸表現だ。だが実に繊細で、今日の精密キットにしばしばみられる強い凹線表現とは大いに異なる。実機はプラモのような凹でも凸でもないのだから、これは模型の時代性であり、好みの問題に過ぎない。このキットは、極めて細い凸線とちょっと強調した凹凸部分を組み合わせて単調さを避け、模型としての巧みさをみせている。




 スピットファイアといえば、主翼後縁が胴体と接するところで逆ガルの形になっていることが特徴だが、このキットは単純にまとめている。これは設計者の模型としての割り切りだと確信であり、巧みさの一つだとみたい。なぜならば、楕円翼に胴体が載っている平面形の理解は確実に表現してあり、正面から見た翼厚の変化も見事、翼断面形の再現も72キットとして充分すぎるものがある。設計し木型を起こして人が、上述の逆ガルを知らなかったはずがない。では、なぜ逆ガルにしなかったのか。 逆ガルにすれば胴体下面の分割が複雑になり、子供にはそこの接着が難しくなる。一部のマニアよりも、より多数のモデラーを大切にした選択に違いない。その本当の腕のよさは、プロペラを見ればわかる。素晴らしい、の一言に尽きる。私は、これらの処理をあらためて見たときに「これこそプラモデル、これこそ飛行機を知った人の味わい」と感動した。主翼下面のラジエーターや脚庫のあっさりとした表現も、特に気にならない。気になる人は自分で加工して再現すればよいのだ。なぜって、気になるくらいの人は、自分で工作できる人でもあるのだから。




 感動していたら、ちょっと上反角が不足してしまった。次に作るときは注意しよう。
 タイヤや脚は、この時代では充分の出来。今だって、ジロジロ見る人はいないのだから、問題はない(SLB展示会は300機も並ぶので)。書いておきたいのは、タイヤとホイールの境が深く明確であること。塗りやすいのだ。作る人への配慮がここにもある。その主脚は、接着の角度を示す側面図と正面図が示されている。
当時の金型精度が原因とも言えるが、それをちゃんと補っているわけだし、現代のキットだって怪しいのはいくらでもある。
 塗装は当然ながら2種ある。塗装に関心がない私は、いつものようにテキトウに塗る。デカールはちゃんと使えてうれしかった。出来上がったと思って数日たち、ふっと塗装図をみたら主翼の機銃のところに赤を塗る指示があった。・・・もう、いいや。




 さて、プラモデルは出来がいいほうがイイに決まっている。では、出来がいい、とはなんだろうか。私にとっては、「簡単」で「キットに製造側の個性がみえること」が重要だ。このキットには、メチャメチャな高得点を付けたい。
 これは妄想なんだけど、エアフィックスの羽布主翼のハリケーンとこのハセガワのスピットファイアに特製デカールを追加して、「苦しかった英国の戦いにまにあった飛行機」のセット商品があったらいいナと思っている。値段にもよるけどね。


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