Home  > Grumman F11F-1 “Tiger” 製作記(Hasegawa 1/72)<飛行機プラモデル製作<2018年11月号


Grumman F11F-1 “Tiger” 製作記(Hasegawa 1/72)

by Kiyoshi Iwama(ひやめし会)


F11F-1 Tiger (1/72) Hasegawa Box Photoより


 久しぶりの投稿です。今回は本誌でも既に何回か取り上げられたことのある、グラマンF11F-1”タイガー“(ハセガワ 1/72)です。1960年代の初めころでしたか、TVで(勿論白黒の時代ですが)”ジェットパイロット“というアメリカのTVドラマが放映されていました。 ブルー・エンジェルスのパイロットが主役のドラマです。ドラマの中で、アクロバット飛行を演じるブルー・エンジェルスの実写シーンが登場するのですが、その時使用されていた機体がF11F-1タイガーで、その流麗な姿に魅了された記憶が今も残っています。


F11F-1 Tiger Hasegawa (1/72)

実機紹介

 さてそのF11F-1タイガーですが、F9F-2~5パンサー、F9F-6~8クーガーを産み出したグラマンが、その後継機として小型軽量ながら超音速で水平飛行が可能な戦闘機として開発した機体です。そのために採用されたのがエリアルールで、エリアルールを世界で初めて実用化した機体でもあります。1953年4月に海軍から試作オーダーを受け6機の試作機の開発に着手し、初号機を翌年の1954年7月19日に初飛行させるというスピード開発を成し遂げています。現在では考えられないことです。 その後のテスト飛行で目標の超音速突破をやってのけ、世界初の超音速艦上戦闘機となりました。海軍は量産型の開発もオーダーしますが、テスト飛行で安定性の問題が発生、その改修とJ65エンジンの生産遅延などにより部隊配備にも遅れが生じ、部隊配備が始まったのは計画より2年遅れの1957年3月のことでした。


 部隊配備の遅れは、後発のF8Uクルーセイダーの出現とも重なり、量産機数にも大きな影響を与え、最終的には201機という少数で生産を終えることになりました。しかし安定性では問題を発生したにもかかわらず、軽量で頑強な機体は操縦性と運動性では抜群の性能を示し、海軍のアクロバットチーム“ブルー・エンジェルス”に採用されたのです。 その後グラマンは、タイガーの性能向上型として、エンジンを推力の大きなJ79-GE-3Aに換装、大型のレーダを搭載できるように機首を大きくしたF11F-1F“スーパー・タイガー”を試作し海軍に売り込むものの失敗、日本の航空自衛隊のF-X商戦にも名乗りを上げましたがF-104に敗れ、F-14“トムキャット”で起死回生を図るまで、グラマンの名前は戦闘機の世界から消え去ることになりました。

キット紹介

 さてF11F-1タイガーのキットですが、ハセガワからF9F-2パンサー、F9F-8クーガーに続き1981年にリリースされたキットです。パンサーとクーガ―は、美しい凹彫のパネルラインを持つキットでしたが、何故かタイガーになって凸彫のパネルラインに戻ってしまいました。 タイガーのキットと言うと、リンドバーグからリリースされた1/48のキットもありますが、まともなキットはハセガワのこのキットしかなく、今でも貴重な存在です。そこで今回はパネルラインの筋彫りに挑戦してみました。


F11F-1 Tiger Hasegawa (1/72)

製作

 在庫のキットは最初にリリースされた当時のものでデカールに不安がありましたが、別売のデカールも入手できそうになく、キットのデカールが使えることを祈りながら作業を進めました。付属のデカールにはシャークマウスで知られるVF-21“フリー・ランサーズ”と訓練飛行隊のVT-23のマークがついていますが、勿論VF-21に仕上げます。  話はそれますが、何故単座機に訓練飛行隊のマークと思われるかもしれませんが、前置きで述べたようにF11Fは実戦部隊での寿命が短かったのですが、持ち前の操縦性の良さを買われ、第一線を退いたのちも訓練部隊で使用され続けた所以です。


F11F-1 Tiger Hasegawa (1/72)

 まずは全体を見ていきます。キットはこの頃のハセガワのキット同様、少ない部品で構成されています。主翼や水平尾翼は左右は別物ですが1枚板で構成されています。そのためかモールド表面に少し引けがみられますが、サンドペーパーで少し調整する程度で済ませました。胴体は左右のパーツを貼り合わせ、そこに左右の主尾翼を差し込めばもう「士」の字に出来上がりです。エンジン後部のアフターバーナー部は別部品ですがピッタリ接合できます。問題点はエアー・インテイクのパーツが胴体部と少し相性が悪いことくらいでしょうか。最初にすり合わせが必要なようです。しかし全体としてはF11F-1の特徴を良く捉えています。 キャノピーやウィンドシールドも薄くて透明度が秀逸です。また搭載兵装としては、サイドワインダーが4発とエリアルールを採用したのかと思えるような胴体の括れたドロップタンクが2本付属していました。搭載形態としては、サイドワインダー4発か、サイドワインダー2発とドロップタンク2本のいずれかの組み合わせとなり、今回は後者を選択しました。


工作
 さて工作ですが、まずはパネルラインの筋彫りです。よく見ると結構細かなラインが入っています。実機と比べると少し異なるところもありますが、そこはあまり考えずにキットのラインに沿って遮二無二カッターを動かしていきます。 但し胴体の左右が繋がっているラインは接着した際にずれる可能性があるため、接着後に行うことにしました。


F11F-1 Tiger Hasegawa (1/72)


コクピット
 単体部品の筋彫りが終わったなら、次は胴体に組み込むコクピットの製作です。コクピットは先に塗装をします。これまでのキットと少し異なっているのは主計器盤がクリアパーツで成形されており、ガンサイトのミラーも一体になっていることです。
 バスタブ式のコクピット内部はMr.カラーの317グレー(FS36231)で、計器盤は艶消しの黒で塗装し、デカールを貼って、操縦桿を取り付ければ完了です。(写真1)
 胴体パーツのコクピット内壁部も同じグレーで仕上げておきます。(写真2)

(写真1) コクピット
(写真2) グレーに塗ったコクピット内壁

インテイクダクト
 次に胴体側面のエアー・インテイク部です。ここが一つの難所です。境界層スプリット・ベーンの塗装を考えたときに、塗装の手順をどうしようか悩みました。結果的にはまずエアー・インテイクの部品と胴体のラインがうまく合うように仮組状態で事前にすり合わせを行い、インテイクの内側やスプリット・ベーンをMr.カラー316インシグニアホワイト(FS17875)で塗装し、インテイク部品はリップ部のメタル部を先に塗装し、マスキングした状態で胴体と接合することにしました。 (写真3)がスプリット・ベーン取り付け前の胴体部です。スプリット・ベーンの取り付く部分も予めインシグニアホワイトで塗装しておきます。
そして塗装の終わったスプリット・ベーンを取り付けます。(写真4)


(写真3)白色塗装をした胴体インテイク部 
(写真4) インテイク部にスプリット・ベーンを取り付けた状態



 この状態でコクピットを組み込んで左右胴体パーツを接着します。このとき機首に鉛の錘を入れておきました。垂直尾翼にピトー管がモールドされているので、引っ掛けて折れやすいので取り扱いに注意する必要があります。胴体の接着が終われば、インテイク部の取り付けですが、その前に主翼と水平尾翼、そして後部のノズル部のフィットチェックをしておきます。なかなか良くできており、僅かな調整でそこそこ隙間なくフィットしました。
インテイク部と胴体は予めすり合わせをしていたのですが、やはり少し段差ができてしまいました。再度サンドペーパーで調整し、残っていた胴体をまたぐパネルラインの筋彫りを行い胴体の工作は完了です。
 主翼や水平尾翼は一枚板の整形ですのでバリ取り程度で問題ないでしょう。その他の小部品もパーティングラインの消去とバリ取り程度で済ませました。

塗装

 既に書きましたように、塗料は基本的にGSIクレオスのMr.カラーを使用しています。胴体と主尾翼がうまくフィットするので、塗装はそれぞれ別々に行いました。塗装は米海軍標準色の上面Mr.カラー315ライトグレー(FS16440)、下面Mr.カラー316インシグニアホワイト(FS17875)です。 胴体の上下面の塗分け部はぼかしになっているので、インシグニアホワイトを塗った後、ライトグレーを塗る際にマスキング紙のエッジ部を浮かせ、塗装境界部がぼかしになるように塗っていきます。


 インテイクのスプリット・ベーンの塗装は入り口付近まで上下面色で塗分けられているため、胴体部の塗分けと繋がるようにマスキングして塗りました。(写真5)
 
 垂直尾翼の前縁はベアメタルですのでファインシルバーで塗装し、チップ部前縁部を半艶の黒で、そしてピトー管の先端は銀で塗りました。また水平尾翼の取り付け部もファインシルバーで、ドームは半艶の黒、コクピットの防眩部は艶消しの黒で塗っています。
(写真5) エアー・インテイク部の塗分け


 主翼は胴体同様上面がライトグレー、下面が白ですが、フラッペロン上面とその前部にあるスポイラーもインシグニアホワイトで塗装します。 前縁にあるスラット部はベアメタルのため、フィニシャーズのファインシルバーで塗装しました。また水平尾翼は上下面ともインシグニアホワイトで、前縁がベアメタルです。


 小部品としては脚、脚扉、ノズル部、ウィンドシールドとキャノピー、パイロンや搭載兵装などいろいろありますが、ここでは脚、ウィンドシールドとキャノピー、そしてドロップタンクのみを紹介しておきます。脚は小さいながらも良くできています。
 脚のシリンダー部はクロームシルバーで塗装し、その他の部分はインシグニアホワイトで塗装します。ハブをインシグニアホワイト、タイヤを艶消しの黒で塗った車輪を取り付け、エナメルの黒で少し汚れを付けるといい感じになります。(写真6)
ウィンドシールドとキャノピーは、前述したように透明度の良い優れもので、胴体にもピタッとフィットします。ただ小さいのでマスキングに苦労しました。マスキング終了後半艶の黒を吹き付けその上から胴体と同じライトグレーを吹き付けました。マスキングは最後のクリア塗装によるオーバーコートが終わってから外します。(写真7)はマスキングを外した後のものです。


(写真6) 塗装後の前脚と主脚
(写真7) 塗装後のウィンドシールドとキャノピー


 ドロップタンクはパイロンと一体になっています。タンクは機体同様上下をライトグレーとインシグニアホワイトで塗り分けます。またパイロンの前縁はベアメタルとなっているため、ファインシルバーで塗装しました。機体同様グラマラスなタンクとなっています。(写真8) (写真8) 塗装後のロップタンク

デカール貼り

 デカールは年代物のため危惧していましたが、案の定シャークマウスの貼り付けでトラブルが発生しました。マークセッターで軟化させながら機首の曲面にフィットさせるよう、水を含ませた筆で軽くなでながら作業をしていたのですが、(写真9)のようにデカールに割れが拡がりました。 やむなくできるだけ隙間が最小限になる様にフィットさせ、乾燥後細い面相筆にエナメル塗料を含ませ、隙間に塗っていきました。近くで見ると完全でないことが分かりますが、少し離れるとごまかせそうです。
修正後が(写真10)です。

(写真9)修復前のデカール 
(写真10) 修復後のデカール


 幸い残りのデカールは貼りきることができました。(写真11)がデカールを貼り終えた胴体、 (写真12)、(写真13)がデカールを貼り終えた主翼の上下面です。

(写真11) デカールを貼り終えたタイガーの胴体


(写真12) デカールを貼り終えた主翼(上面)
(写真13) デカールを貼り終えた主翼(下面)

完成

 まずは、主翼、水平尾翼、脚、エンジンノズル部を胴体に取り付け、クリア塗料によるオーバーコートを行いました。クリア塗料には、Mr.カラーのスーパークリアの半艶を使用し、少し艶が残るようにしています。その後クリアレッドとクリアブルーで翼端灯を塗り、パネルラインへ墨入れをしていきます。 そして残った水平尾翼、脚、脚扉、兵装、等々を取り付けます。但し、脚扉は取り付け前に端面をMr.カラー327レッド(FS11136)の艶消しで塗装しておきます。最後にウィンドシールドとキャノピーを木工用ボンドで接着すれば完成です。(写真14~15)
スタイリッシュなタイガーを再現できて満足です。

(写真14) 完成したF11F-1“タイガー”


(写真15) 完成したF11F-1“タイガー”



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