Home > 零戦32型&FM-2 (スウィート 1/144)< 飛行機プラモデルの製作<2018年11月号

特集 グラマンVS零戦

  零戦32型&FM-2 (スウィート 1/144)

by 寿

 グラマンvs零戦ということで作ってしまいました、FM-2と零戦32型。どちらも元となった機体の能力向上型ということで、比べてみるにはちょうどイイかなぁ~なんて思った次第。どちらもそれぞれの機種で一番好きな型式だしね。(まぁ、これが最大の理由なんだけどw)
 零戦32型はエンジン乗せ換えて翼端切り飛ばして速度の増大を目論んだんだけど、これが思ったほどに効果が出なくて、そのうえ水平旋回と航続距離の低下ばかりが取り沙汰され「改悪だ」なんて陰口叩かれてたりします。




 航続距離への不満は基地設営能力の不足を機体性能で補おうとした運用上の誤りであって、機体がスカタンだった訳じゃないんですけどね。一部のベテランパイロットには酷評されてますけどそれは21型以外眼中にない方々の寸評であって、戦闘機の命とも言える横転性能の良さや上昇力とツッコミ性能の向上を評価している搭乗員も少なくないのでありますですよ。
 実際52型は32型のヴァージョンアップだし、32型の不評を受けて開発した22型ですけど、それが完成した頃にはもう新しい基地の設営が終わって32型でも不足なく充分に活躍出来てますしね。逆に22型が不必要だったりなんかしてw・・・・
 あーもうなんちゅうかね、三菱と設計陣虐めんなって話ですよ!
 とある元戦闘機搭乗員の方は「ヒコーキはその特質に合った使い方をせにゃならんし、いくら(その扱い方に)慣れ親しんでいたからといって、以前の愛機と同じ扱いをしたらイカン」といった旨のことをおっしゃってます。なんか身につまされるなぁ~。やっぱ慣れと惰性だけで物事に向き合っちゃイカンってことでしょうかね?




 一方のFM-2はというと、こっちの事情はちょっと違ってきます。
 当初アメリカは零戦に対抗する為にF4F-3で挑んでいて、空母搭載用に武装強化と翼の折りたたみ機構を導入したのがF4F-4なんですが、これがパイロットにはひじょ~に評判が悪かった。機銃は増えたけど一挺辺りの装弾数が半分近くにまで減った上、機体がうーんと重くなっちゃって飛行特性が全般的に悪くなり、まるでダメ夫な感じ。
 対零戦戦法「サッチ・ウィーブ」を提唱したジョン・S・サッチ少佐曰く、「零戦に比べてF4F-4は上昇力、機動性、速度のどの点においても哀れな程劣る。(この機体で)零戦と闘って生還したらそれだけで驚くに値する」のだそうです。
 開戦劈頭「零戦無敵神話」の頃の話でしょうなぁ。




 これを受けてエンジンを一回り上のものに強化。武装をF4F-3のレベルに戻し、垂直尾翼と細部をちょびっといじったのがXF4F-8で、これをGM傘下のイースタン航空会社で量産したのがFM-2、といった次第です。F4F-4に比べて性能は大きく上がったようで、パイロットの中では後のF6FよりFM-2に乗ることを好んだのだとか。うーん、一転して大人気の機体になってしまったね。零戦32型とはえらい違いじゃ。
 ただ、F4F-4に比べて過給気が二段から一段に減っているので高空性能は逆に落ちたけど、その時点においてはもう護衛空母で通商破壊作戦に従事していたもんだから、あんまり問題視されなかったみたい。そもそも日本機の高空性能はそれほど図抜けたものでもなかったし。
 やっぱ機材というのは使い方一つで活きもするし、反面駄目にも為るという好例っすよね?




 まぁ、組織運用を見れば日本は農業国から工業国に脱皮しようとする矢先での開戦で、近代戦を闘うノウハウが未成熟だったということ。そしてアメリカは当時軍事マネジメント能力が突出していて、リサーチ&リカバリー能力が半端なく高かったということ。その辺りが大きな違いになっているようにも思えます。
 結局、工業製品の大量生産と販売、市場拡大の手法をそのまま戦場に持ち込み、子細洩らさず包み込んで圧倒しようというのがアメリカ流の戦争で、近代兵站への理解が浅いまま主戦兵力のみに全てを注力し勝負を目論んだのが日本流の戦争、といったありきたりところに落ち着くのでありましょうか。

製作の詳細

(写真1)今回の獲物はスウィートの零戦32型とFM2。対決シリーズだから複数機作っちゃうぜ。たくさん作るならやっぱ1/144でしょ!それぞれ一機ずつ作ればいいんだけれど、一箱に二機入っているからまとめて作っちゃう。合計四機だ。モノがちっこいし、何とかなるでしょ。

(写真2) 零戦もなんだけどFM2もモールドがすっごい繊細。水平尾翼のバランスタブの作動リンクも左右で違うし、点検孔まである。っていうか実機も左右同じ部品使って上下反転するから当たり前か。でもちゃんと左右間違えないように刻印打ってあるところが素敵。



(写真3)ドロップタンクはまだしも、おまけで黒猫のラッキーまで付いてる。二機分なので当然猫も二匹。此所には写ってないけど車輪止めもパーツ化されてる。サービス精神旺盛じゃのう。


(写真4) FM2のパテが乾くのを待つ間、零戦にも手を着ける。まずは透け防止にニュートラルグレーをぺたぺた。翼の後縁なんてぺらっぺらだしね。スウィートの製品全般に言えるけど、全てのパーツが精緻なのがこれまたステキポインツ。いや~ナナニイでもなかなかないよ、これだけの精度のキット。
 小物パーツなんてピンセット無しじゃ接着不可だしね。



(写真5) 取り敢えずこの時点で接着できるところは全部着けちゃう。クリップに挟んで一夜干し。本日の作業はここまで。モノがちっちゃいんで老眼の進んだこの身に長時間の作業は辛いわ。

(写真6)心機一転、ぢゃないけど一晩寝て英気を養いキャノピーにチャレンジ。いつものよーに接着面は黒に塗ってシルバリング防止だ。ランナーに付いた状態で塗るのがミソ。切り離しちゃうと指やピンセットで挟んだ途端、あっという間にどっかに飛んでっちゃうので話にならんのよ。



(写真7) 零戦は明灰緑色で塗って、FM2は下塗り。ペラはグロスブラックで下塗りしたあと、GSIクレオスの8番をスプレーでぷーと吹く。まぁこの辺までは予定通りかのう。


(写真8) FM2のうち一匹はトライカラーでいくので上面をネービーブルーにして、胴体の横っ面をライトグレーでてきとーに薄めたネービーブルーを面相筆でぺたぺた。ホントはインターメディエイトブルーなんでもっともっと明るい水色なんだけど、今回はイメージ優先でこっちの色に。



(写真9) 四匹とも基本塗装が終了。キャノピーくっつけて窓枠を面相筆で塗り塗りしたところなんだけど、まぁ見たとおりマスキング無しの状態ですわ。こんだけちっこいと結構めんどいので、乾いた後ではみ出した部分をこそぎ落とす訳ですね。

下地を黒にするのは透け防止のためと、はみ出たときのアラ隠しとご承知くださいませませ。





(写真10) 作業の合間にペラもちまちま塗っていきます。イッチョンチョンなのに先端の警戒色塗り分け用に繊細な凸モールドがある。筆塗りしたときの塗料の厚みとほぼ一緒でちょびっと感動。気配りモード全開じゃね?


(写真11) スウィートの醍醐味は色々あるけど、やっぱ最大なのはこのカルトグラフ製のデカールでしょう!色よし発色よしフィッティングよし。柔軟な上に丈夫で白色の透けもないときた。オマケにニスの余白も小さくて言うことありませんな。流石はイタリアの専門メーカー、高品質の看板に偽りなしであります。
 しかも版下を出したスウィートのサービス精神の旺盛さよ。小さいデカールには予備を備え、FM2には猫の足跡デカールやらおまけパーツ用のデカールやら、留まるところを知りません。甲板用の印刷まであるしね。これだけでも「買って良かった」とシアワセになれること請け合いの豪華な内容。いや~、かっちょええわスウィート。よくわかっちょる。モデラー心をくすぐる小技が効き過ぎ。


(写真12) キャノピー枠を塗るだけ塗ったらはみ出し部分のトリミングでございます。塗料が完全に硬化した後で挑むところがポイント。ラッカー系は乾くの早いけど硬化するには二日程掛かっちゃうからね。
 で、固まったことを確認した後にデザインナイフでかる~く(ホントに軽くだよ?)ケガいてアタリをつけちゃう。

(写真13) 然る後に爪楊枝を準備。



(写真14) ヤスリでトンぎらかせて~


(写真15)はみ出した部分をこさぎ落としてゆきます。事前にアタリをつけておかないと剥がしたくない所までハゲちゃうしね。マスキングとどっちが手間取らないか、そこはモデラー次第だな~
 ちなみに、わたくし寿はこっちの方が楽。あと窓枠トリミングは一番最後に回してデカールだのスミ入れだの、他の作業を全て終えてしまうのが完成への早道であります。時間は有効に使わねば!


(写真16)そんなこんなで完成しちゃったよ、スウィート軍団。なんかナナニイ作るのと同じ手間がかかったような気がしないでもないけど、まぁ出来上がっちゃったからいいや。塗る面積が小さかったのは確かだしね。完成後も場所とらないし!


(写真17) 一斉にひっくり返っているとバカみたいだ。思わず「マヌケか」って突っ込みたくなる。でも一回は見てみたいでしょ?裏側。
 そーいや以前展示会で「裏側見せて下さい」って言って来た人が居て、そこにある全部の展示品をひっくり返したことがあったナ。後にも先にもその人だけだったけど。


(写真18) 黙ってたらナナニイと言っても通用しそう。繊細緻密なモールドと正確なプロポーションがこのキットの魅力です。


(写真19) やっぱ明かるい色は暗い色と比べて繊細さで分が悪いな~アップになると尚更で1/144以外には見えない~。でもこれはワタクシ寿の技量が拙いのであって、上手いモデラーにかかればもっともっと見栄えがする筈。このキットはずっとずう~っとスバラシイのに。うーん、うーんごめんよぉ~


(写真20) 第93混成飛行隊CVE-84.USSペトロフベイ所属機
幸運を呼ぶ四つ葉のクローバーがステキ


(写真21) メリーランド州バタクセント・リバー海軍基地実験部所属機
猫の足跡着きの滑り止めはキットオリジナルです。実機には付いてないので信用しないよーにw


(写真22) 二機そろい踏み。こうしてみるとビア樽なワイルドキャットもかっちょよくねぇ?


(写真23) 第251航空隊 昭和18年1月~4月豊橋基地
ちなみに主翼前縁の識別帯は、黄色と赤色どちらでも良かったようです。とは言え、赤色は見た事ないけどね。


(写真24) 報国-872 昭和17年8月ニューギニア ブナ基地
報国SWEET号です。いや~なんか貼ってみたかったんだよね、スウィートのロゴ。意外と似合ってるでしょ、日の丸と同じ赤だし。え、駄目?


(写真25) ほぼ同じ寸法の零戦32型とFM2。翼端が切り飛ばされた分、零戦は翼幅がワイルドキャットに近くなって横転性能が増し、FM2はエンジンを載せ替えたお陰で出力重量比が以前より良くなってます。こうしてみると胴体以外驚く程よく似てます。似たような要求の元で似たようなエンジンを元に作れば、よく似た機体が出来上がってくるということでしょうか。
 この二機こそが正に同等の力量をもったライバル同士だと思うのですが、皆様はいかがお感じでございましょうか。


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