後に究極の破壊兵器と呼ばれる軌道戦闘要塞の開発が共和国最高議長によって秘密裏に画策されていた当初、その主力武装となるスーパーレーザーの発射口は赤道上に設計されていた。しかし、そのあまりに強力な発射エネルギーの反動を一般戦艦群と同機構のスラスター推進と重力アンカーで制御吸収しきれないことは開発時からすでに予想されており、幾度とないコンピューター・シュミレーションによる試行錯誤の結果、要塞直径を20%拡大し、ビーム発射角に30°のベクトルを付ける反動放散方式の採用により、ようやく本機はその建造に向けての第一歩を踏み出した。
しかし、それでもなお、この反動対策は実動上充分と言えるものではなく、シングル・レーザー単射においてさえも数百km単位の誤差が生じる照準精度であったことはスカリフ補給基地破壊の際の記録映像からも明らかである。もっとも、本機による「汎惑星衛星破壊」という基本思想に対して精密な照準補正を求めることは、あたかも散弾銃にライフル・スコープを装備するがごとき誤謬であり、対象となる惑星衛星を目標として外さない程度の極めて緩徐な調整で許容される設計であったこともまた事実である。
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こうして、赤道上にスーパーレーザー発射口を配した<デス・スター/プロトタイプ>は「Death Star into the Dust(デス・スター没案)」として廃棄され、その電子化された青写真のみが略称「Star
Dust」のファイル名でスカリフのエンジニアリング・ノードにアーカイブされる一方、<デス・スター/第一次計画>はカイバー・クリスタル・フォーミュラによる低エネルギー収束などの各種改良を受けつつ、十余年の歳月を経て、ついに真性<デス・スター>としてその完成を見る。
ところがここに、いささか思い込みのキツいひとりの女性が登場する。彼女は帝国軍において軌道戦闘要塞計画に主導的に関わった研究者である父親から、その弱点を記した設計図を盗み出すように指示され、多くの人々に迷惑をかけながら、ようやくスカリフに潜入したにもかかわらず、ノードの膨大な資料の中からたまたま目についた「Star Dust」というデータ・テープ・カートリッジのファイル名を自らの他愛のない想い出にこじつけて、その内容を検証することなくシタデル・タワーから反乱軍の艦隊司令に送信してしまう。そして驚くべきことには、このカートリッジ・データは魚眼の艦隊司令によっても、さらには反乱軍のリーダー的存在となる女王姫によっても、その内容を一切確認されることのないまま、アストロメク・ドロイドに封入して宙空へ放出されるのである。 |