Home  >CMC LEOPARD-2(A model 1/72)>飛行機プラモデル製作>2019年1月号

特集 東欧&ロシアメーカー

    CMC LEOPARD-2(A model 1/72)

by 五六式



 今月の第二特集は,”東欧&ロシアメーカー”ということで,完成しないことで定評のあるA model (ウクライナ)のキットに挑戦してみました。

 さて,このA model ,キットは,簡易インジェクションで精度は,いまいち,主要部品を接着するときのガイドとなるダボもなく,尾翼やフィンはイモ付けというものが多くて,組み立てにはかなりの困難が伴うと言われています。一方,1/144スケールでは,輸送機や飛行艇,1/72スケールでは,ビジネス機のラインアップが充実していて,貴方のコレクションの穴を埋めてくれるうれしいメーカーであるとも言えます。
今回,組んでみようと思ったのは,最近,A modelが力を入れている,1/72スケールのビジネス機のキットです。ビジネス機といえば,ゲイツ・リアジェットとか,ダッソー・ファルコンとかが王道ですが,うちの在庫は・・・,



ドッジャーン!!

ADAM A700 (同社A500をジェット化した双胴機。ADAM AIRCRAFT社倒産のため,計画中止。)

CMC LEOPARD2 (わずか2機の試作に終わったイギリスの小型4座機。)

PIPER PA-47 (軽飛行機大手のパイパー社の単発ジェット機であるが,経営縮小のため開発中止。)
 残念作ばかりじゃん。しかも,どれも,個性的というか・・・変態(ビジネス機には,変な機体が結構あります。前進翼機のHFB 320 ハンザジェットとか,コクピットがぷくっと膨らんだピアッジョ PD.808とか,先尾翼機ビーチクラフト2000 スターシップとか。我らがホンダ・ジェットだって風変わりだよ。)。

 ただでさえ組みにくいA model のキットで双胴機なんて自殺行為だし,PA-47は,マスキングが面倒そうなのでパス。消去法でレオパード2で行ってみようかぁ!!
きっと,最近のキットなので組み易くなっているよぉ!!←素直にズベズダとかエデュアルドの新キットにしときなよ・・・。

<実機について>

 イギリスのCMC社で1980年代に開発された4人乗り(うち1人はパイロット)のパーソナルビジネスジェット機。ジェット戦闘機のようにキャノピーを跳ね上げて,そこからパイロットも乗客も機内に乗り込むようにしたことにより,小型化を実現(機内通路がいらない)した。 プロトタイプが2機製作されたが,赤く塗装されたものが1号機,エンジンを換装し,与圧コクピットを装備して白く塗装されたものが2号機である。

2009年に,社主で主任デザイナーでもあるIan Chichester-Miles氏の死亡により開発および事業の展開が中止された。

<キットについて(2017年発売)>

 ・試作1号機のキットの新規パーツ入れ替え&デカール替え版と思われます。
・パーツ数40,デカールは,計器盤を除く全てのマーキングにスペアが印刷されています。このゆとりは大きいです。
・箱絵の機体の機首には,ピトー管がついていますが,キットには付属していません。ネットで見られる動画の同一機は,ピトー管をつけないで飛んでいるのでキットのままでOKです。
・上記の3つのキットの中で一番完成に近いキット・・・と思っていました(過去形)。

・組み立ては・・・,たてつけが,わやです。次項参照です。

<製作>

今回のテーマは,とにかく完成させることです。

仮組みをしてみると・・・キャノピーがはまりません。寸法が全く合いません。

終わり。

と,今までなら諦めていたところ(同キットの製作記事を検索していたら,キットの紹介で進行が止まっているところがありました。)ですが,ちょっと待て。
大きく開口しているコクピットが原因で胴体の部品が大きくたわんでいることが分かりました。機首と尾部が上に反っていてコクビット開口部の前後の寸法が短くなっているのです。同様の原因で,コクビット開口部の幅も狭くなっています。

釜ゆでの刑
 対処法は,釜ゆでの刑です。海洋堂のソフビ怪獣キットを作った経験が役立ちました。

1 胴体左右の部品を合わせ,マスキングテープでガチガチに巻いて固定する。(部品がたわんでいるにもかかわらず,左右の部品がピタリと合います。なぜかしら?)

2 お湯を沸かして,ボウル(奥さんに叱られないよう、模型用に別途用意しましょう。)に注ぎ,80℃くらいになったら胴体部品を投入する。これだけで直ることもあるけれど,世の中はそんなに甘くないんだな・・・。

3 やけどをしないようにピンセットで取り出し,両手の親指で機体の腹の中央部を押し上げつつ,残りの指で機首と尾部を下にたわませる。やり過ぎないよう注意。

4 すかさず,水道水(もったいないけれど流しっぱなしの方がよいです。)で冷やし,形を固定させる。

5 キャノピーの部品を当てて,たわみが消えたかどうかをチェックする。

6 修正が足りなければ,2〜5を繰り返す。
7 完璧を求めると人生が終わってしまうので,ほどほどで妥協する。

キャノピーの部品
※ キャノピーの部品をいじってはいけません。バリ取りやゲート跡の処理,コンパウンドを使っての研磨程度にとどめておきましょう。こちらをいじると基準が定まらなくなってしまいます。胴体部品のたわみを修正すると,意外とすんなりフィットします。特に前部の微妙なギザギザはいじらないようにしてください。ここは,胴体部品とピタリと組み合う部分です。隙間の修正は,キャノピー後部の胴体側で行います。
 これで,このキット,一応完成のめどが立ちました。実は,A model のキットの部品は,バリの削りすぎに気をつけたり,部品のたわみを修正したりしてちょちょっと細工してやると結構精度が出てくるんです。まぁ,モデラーの技量に頼るという時点でタミヤなどの国産メーカーに決定的に負けているんですけれど。

左右の胴体の部品
 左右の胴体の部品を接着前に再チェックすると,背部のゆがみが直りきっていなくて断面がM型(中央部がへこんでいる)になっていました。これに対処するためにランナーを差し込んで支えにしています。この機体,テールヘビーなのにどないしよ・・・涙・・・。
胴体の接着のときにコクピット後部の隔壁を挟み込みますが,サイドコンソールと天井に合わせて接着すると,下に隙間ができます。この隙間は,後部シートで見えなくなるので放置します。
隔壁が浮いた分,中央のコンソールも浮いてしまうのでコンソールの部品の下にプラ板を貼ってかさ上げしました。



機体の組み立て
インテリアの塗装に入る前に機体の組み立てを終えることにします。先にインテリアの塗装をすると,コクピットの開口部が大きいので後に作業が入るほど汚してしまう可能性が高くなるからです。 主翼と尾翼,エンジンポッドの取り付けは,ダボがついている(ハレルヤ!神よ!私は,奇跡を見ているのでしょうか?!!)ので取り付け穴の大きさを小径のドリルで調節して取り付けます。尾翼の左右が分かりづらいですが,翼断面を見て雰囲気で(どちらかというと平らな方が下面)判断します。


 胴体下部のフィンは,取扱注意です。周りの薄い部分はバリではありません。フィンの縁だけが薄くなっているのです。ランナーについている部分はダボとして使えるので残しておき,これに合わせて胴体側に穴を開けます。



主翼のフィレット
 主翼のフィレットは,胴体に全くフィットしないので釜ゆでの刑で形を修正してやります。実機には,主翼付け根に黒いシーリングのようなものがついています。非常に目立つのでなんとか再現してやりたいところです。 今回は,名前ペンで書き込んではみ出しをリタッチしました。黒色がきつめだったので機体色の白をさっとオーバースプレーしてやると落ち着いた感じになりました。

※ before
※ after

エンジンポッド
エンジンポッドは・・・,仮組みをしましょう。

挟み込むタービンブレードが邪魔をして部品が合いません。仮組みをして接合部の調整を・・・こんな小さい部品をどうしろというんやぁ〜・・・怒・・・!!

エンジンポッドを本体に取り付けるパイロンの後縁にバリのようなものがありますが,これは,実機にも存在するので形を整えるだけにとどめます。

エンジンポッドと本体とは,ぴたりと合うので最後の最後で接着してもOK・・・というか,水平尾翼の前縁を銀で塗装するときの邪魔になるのでむしろ,そうすることをおすすめします。
とにかく,地味に仮組みをして,がっちりくっつけて,接合部を埋めて,消えたモールドの復活をするという作業を繰り返していくと,だんだん形になっていきます。

大分,形ができてきました。全体にサーフェイサーをかけて表面を整えてからインテリアの塗装と組み立てにかかります。

インテリアの塗装と組み立て
 キットのままだと,キャビンの床がボートのように(中央の正中線に向かって床が低くなっている)なってしまいます。本来なら,床板を部品として入れておくのが真っ当なキットというものですが,そんなものはありません。自作してキャビンの形に合わせるのもつらいので放置して,シートの接着法を工夫してつじつまを合わせます。

後部シートは,キャビン後方の隔壁に接着して解決です。はめ込みがきついので少しずつ削って幅を狭め,てフィットさせます。前部シートも,はめ込みがきつ目ですが,これを利用して座面が水平になるよう調節して(床面でなく)左右と中央のコンソールに接着します。接着位置はけがき線があるのでよく分かります。

前脚収納部は,左右胴体を接着する際に接着するように指示されていますが,座席を組み込んだ後にキャビンの方から差し込むことができます。実は,と機首の内のりよりもこの部品の幅が大きいことが後で判明しました。もし,説明図の手順で組み込んでいたら,調整に手間取っていたことでしょう。対処法としては,様子を見ながら機首と干渉する部分を削ってやるだけでOKです。
この後,前部のコンソールを組み込んで,マスキングを施したキャノピーを接着してやれば,インテリア関係は終了です。ここまでで,キャビン内の塗装を終えていないといけないので,塗装と組み立ての段取りを考えるのに苦労しました。ネットで検索すると,機内のインテリアの写真が容易に見つけられたので助かりました。イメージとしては,高級車のベージュ系の内装に近い感じです。床は,グレー,前席のみ,シートと背当ての色が周りよりも濃いブラウンで,後ろ半分が黒です。

胴体後部に尾翼3枚とエンジンポッド2個がつくので完全にテールヘビーじゃあ,と思っていたら,そうでもありませんでした。思い込みで計器盤の裏におもりを仕込もうと四苦八苦していたのですが,試しに主要部品を取り付けた後,主脚の取り付け穴左右にボールペンの先を差し込んでバランスを見てみると,何のことはない,完成後に尻餅をつかないことが判明しました。テールヘビーに見えるけれど,主脚の位置も後ろに寄っているのでバランスが取れているのでしょう。



キャノピーの透明部品
 キャノピーの透明部品も,本体に負けず劣らずたわんでいました。まず,マスキングを済ませたら,機体とぴったり合っている先端部だけをゼリー状瞬間接着剤でがっちり固定(事前に,前部コンソールと干渉しないようチェックしておきます。)してこれを基準に少しずつ,それに合わせて,流し込み接着剤と瞬間接着剤を併用して右側面を固定,がっちり固まったら,指でたわみを修正しつつ左側面を固定,最後に,後端をこれまた指でたわみを修正しつつ固定しました。キャノピー部品自体は,きちんと寸が合っているのが分かっていたから力技で解決できたわけです。そうでなければ,製作を投げ出してキットを廃棄していたかもしれません(原型を作ってヒートプレスなんてまねはできん。)。 主要部品が全部くっついたら,わーっとサーフェイサーをかけて,軽くサンドペーパーをかけて,白をスプレーして,デカールを貼って,トップコートをかければ,ほぼ完成です。



塗装
※ よくも,ここまで形になってくれたものじゃ・・・。背部のパネルラインは,復活させる過程でどんどん太くなってしまいました。マッチボックスのキットのことを笑えませんね。

機体色の白色は,普通の白のスプレーではなかなか発色しなかったのでMr.カラーの107番キャラクターホワイトに切り替えました。キャラクターホワイトは,半つや消しですが,隠蔽力が高いので助かります。
やっとデカールが貼れると思ったら・・・えっ?水平尾翼前縁に銀色のラインがある?

こらえてくださいよ・・・涙・・・。

ここは,雑貨屋さんで見つけたチェコ製のCENTROPEN シルバーマーカーでお手軽に塗装しました。小部品の銀塗装や銀色のリタッチなどに大変役立っています。”東欧&ロシアメーカー”特集にぴったりの起用ですね。ソードのキットも買えるようになったし,いやぁ,冷戦が終わってよかった,よかった。



デカール
デカールは,一通りスペアがあるので心にゆとりが持てます。フイルムの丈夫さも糊の強さも良好で確実に貼れます。ただ,7番のデカールの指示が行き届いていないので注意が必要です。このマークは,塗装図では,右側面しか指定していませんが,左側面にもあります。どちらの場合も赤い四角は前方になります。右側が赤っていうたてりじゃなかったんだね。五六式は,全部貼り終わってからこのことに気づいて貼り直しました。しかし,件のスペアがあったので比較的簡単に問題が解決しました。A modelさん,ありがとう・・・って言っていいのかなぁ・・・ 塗装図には,脚庫の色の指示がありませんが,前脚扉の裏側がちらっと見える画像があったことから推測するに,ダークグレーのようです。

*エンジンポッドのそばのマークに注意


最後に足回りの部品を接着して終わりです。前脚は,取り付け穴が開いているのにだぼがありませんでした。前脚と主脚を作動させるアームにはだぼがついていますが,差し込む穴が開いていません。 そのため,組み込みには往生しました。最後の最後に何でこんな苦労をせんといかんのか・・・涙・・・。

※ 何とか,完成しました。



<おわりに>

 最初から最後までキャノピーの接着に悩まされました(前述のアダムさんもパイパーさんも,仮組みしてみたら同様でした。)が,結局,力技で解決しました。 A modelのキットの在庫は,あと1ダースほどあります。でも,この人らに尽くしていったら,人生が終わっちゃうんじゃないかなぁ・・・。


  Home>CMC LEOPARD-2(A model 1/72)>飛行機プラモデル製作>2019年1月号
Vol.125 2019 January.   www.webmodelers.com /Office webmodelers all right reserved /  
         editor Hiromichi Taguchi 田口博通 /無断転載を禁ず  リンクフリー
「webモデラーズ について」 「広告のご出稿について」

プラモデル模型製作特集2

TOTAL PAGE