以下はファインモールド社製品の航空機モデルに対する私見である。
初めて有限会社ファインモールドの製品に接したとき、おそらく1/48の隼III型だったと記憶するが、解説書と称する講釈が長い割に、肝心のキット本体はといえば、薄っぺらな部品にケガキ針でひっかいたようなモールドがあるだけのお粗末な内容で、なんと頭でっかちで口先ばかりの優等生ぶった学級委員みたいな会社が出てきたか、と呆れたものである。
その後、彗星、橘花、秋水、そして烈風と、本来ならばしかるべき技術をもったメーカーが堅実に世に問うべきアイテム群を、あたらこの会社が中途半端にモデル化してしまったために、他の会社がその後追いをしかねるようになった状況を見るに及んで、ファインモールド社の存在は私にとっては迷惑以外の何ものでもなくなった。
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ところが、いつのころからだろうか、私の手持ちの範囲では桜花あたりからなのだが、まるでタミヤ社から技術者を引き抜いたかのようにその金型製造は一変した。今までにない重厚感がパーツの凹凸両面に備わり、モデラー目線のパーツ分割にはさらに磨きがかかり、細部に亘るその考証は従前のまま欠けたるところがない。また当初は零細企業の宿命とはいえ、他社の同種キットに比べると倍にもなる価格も重たく感じられたものであったが、最近では各社の大幅な値上げによりその差が解消されつつあるのも、同社にとっては大いに追い風となっているであろう。
我が国の大手メーカーがアイテムの選択に対して全くリスクをとらなくなった現在、最新の九七司偵/九八陸偵シリーズを例に挙げるまでもなく、国産メーカーでなければ製品化しえない旧陸海軍大戦機を求めうるのは、もはやこのファインモールド社の開拓精神をおいて他にない。航研機とは言わない、せめて1/48の完璧な零式三座水偵をいつの日にか拝してみたいものである。 |