ハリアーの実機を初めて目にしたのは、1971年に名古屋の小牧基地で開催された国際航空宇宙ショーでのことでした。この時はF-4Jの”Blue
Angels”が初来日し(これ以降の来日は無いので、最初で最後だったのかもしれません)、華麗なアクロを見せてくれました。一方で、小粒ながらヘリコプターの様に垂直に離着陸を繰り返すハリアーの姿を目にして、多くの観客が驚かされたものでした。このとき展示されたハリアーは英国空軍のGR.1でした。米国でも海兵隊がこのハリアーGR.1をAV-8Aとして採用し、1971年から運用を開始したのですが、航続距離不足や搭載ペイロード不足が運用の足枷となりました。英国でも同様の問題があり、ホーカーシドレー社とマクダネル・ダグラス社が共同で後継機”スーパー・ハリアー”の開発検討に着手します。しかしその後英国がこの計画から離脱し、マクドネル・ダグラス社が中心となってアドバンスド・ハリアーの開発が進められました。 |
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その結果実用化されたのがAV-8B ハリアーIIです。ハリアーIIの空力性能は、スーパークリティカル・ウィングを使用したGFRP製の大型で軽量化された主翼と、主翼付け根に追加されたLETX(Leading
Edge Extension)の採用で大幅に改善されました。また主翼の大型化による翼内の燃料タンクの増量と機外搭載用ハードポイントの増加、そしてロールス・ロイス社によって新しく開発されたペガサスIIエンジン(F402-RR-404)による推力増量が、航続距離やペイロードの改善をもたらしたのです。さらにHOTASやグラスコクピットの採用による操縦性の向上とARBS(Ange
rate Bombing System)の搭載による爆撃精度の向上により、ハリアーIIは運用性の高いV/STOL攻撃機へと進化してきます。その成果は英国でも導入されGR.5~GR.9に結実し、完成機はイタリア、スペインにも輸出されています。 |