Home  > McDonnell Douglas AV-8B “Harrier II” 製作記(モノグラム 1/48)<飛行機プラモデル製作<2019年8月号


McDonnell Douglas AV-8B “Harrier II” 製作記
(モノグラム 1/48)

by Kiyoshi Iwama(ひやめし会)


AV-8B Harrier (1/48) Monogram Box Artより

実機紹介

 ハリアーの実機を初めて目にしたのは、1971年に名古屋の小牧基地で開催された国際航空宇宙ショーでのことでした。この時はF-4Jの”Blue Angels”が初来日し(これ以降の来日は無いので、最初で最後だったのかもしれません)、華麗なアクロを見せてくれました。一方で、小粒ながらヘリコプターの様に垂直に離着陸を繰り返すハリアーの姿を目にして、多くの観客が驚かされたものでした。このとき展示されたハリアーは英国空軍のGR.1でした。米国でも海兵隊がこのハリアーGR.1をAV-8Aとして採用し、1971年から運用を開始したのですが、航続距離不足や搭載ペイロード不足が運用の足枷となりました。英国でも同様の問題があり、ホーカーシドレー社とマクダネル・ダグラス社が共同で後継機”スーパー・ハリアー”の開発検討に着手します。しかしその後英国がこの計画から離脱し、マクドネル・ダグラス社が中心となってアドバンスド・ハリアーの開発が進められました。 その結果実用化されたのがAV-8B ハリアーIIです。ハリアーIIの空力性能は、スーパークリティカル・ウィングを使用したGFRP製の大型で軽量化された主翼と、主翼付け根に追加されたLETX(Leading Edge Extension)の採用で大幅に改善されました。また主翼の大型化による翼内の燃料タンクの増量と機外搭載用ハードポイントの増加、そしてロールス・ロイス社によって新しく開発されたペガサスIIエンジン(F402-RR-404)による推力増量が、航続距離やペイロードの改善をもたらしたのです。さらにHOTASやグラスコクピットの採用による操縦性の向上とARBS(Ange rate Bombing System)の搭載による爆撃精度の向上により、ハリアーIIは運用性の高いV/STOL攻撃機へと進化してきます。その成果は英国でも導入されGR.5~GR.9に結実し、完成機はイタリア、スペインにも輸出されています。


AV-8B Harrier II Monogram(1/48)

キット紹介

 今回製作した1/48スケールのAV-8Bは、モノグラムが1987年にリリースしたキットです。1/48のハリアーIIのキットは、ハセガワがAV-8B Harrier II PLUSをリリースした後、そのバリアントとしてAV-8Bもリリースしています。 しかし先月号の記事でも書きましたが、ハセガワのキットには主翼の逆ガル問題があり、結果的にはこの古いモノグラムのキットも捨てがたい存在となっています。


 モノグラムのキットですが、ハセガワのキットを作った後でもあり部品点数の少なさに驚かされました。パネルラインは凸のモールドですが、繊細なラインなのでこれを活かすことにしました。主翼は上下貼り合わせ、胴体は左右貼り合わせで形が出来上がります。増槽やミサイルランチャーはパイロンと一体成型ですが、それでも立派に通用するのがモノグラム流儀でしょうか。クリア・パーツのウィンドシールドやキャノピーはハセガワに比べて肉厚で、少々レンズ効果も見られます。しかしタイヤについている”Goodyear”の彫刻などは流石です。 ウェポンにはAIM-9Lサイドワインダー・ミサイル 2発とMk.82 スネークアイ500lb爆弾 3発、そしてGAU-12 25mmガンパックが付属しています。スネークアイの1発は胴体下に取り付けるものですが、ガンパックかどちらかの選択となります。作例ではガンパックを選びました。残るはパーツの合いの良否ですが、場所によってそれぞれで、随分苦労したところもありました。
キットにはVMA-331のデカールが付属していましたが、スーパースケールのデカール No.MS48-938を使用し、VMA-513 “Nightmares”の機体に仕上げています。

製作

 最初に胴体、主翼など主要パーツを仮組し、組立手順や塗装手順を検討します。この脳内モデリングも楽しみの一つです。 その結果インストとは異なる製作手順になることがしばしばです。


1. コクピットの組み立て
 バスタブ式のコクピットには射出座席のシート部分もモールドされています。座席の左右のパーツを取り付けるだけで(写真1)の状態となります。これにメインパネル、操縦桿、そしてスロットルを組み込めば完成です。メインパネルやサイドコンソールも計器類やスイッチ類が細かく彫刻されているので、艶消 しの黒で塗装した後、筆で塗分けました。(写真2)がメインパネルです。また座席にはシートベルトもモールドされているので、これも塗り分けるだけで十分です。(写真3)実際にはパイロットフィギュアを座らせたので、見えなくなりました。 (写真1) メインパネルを取り付ける前のコクピット

(写真2)メインパネル

(写真3) 座席の詳細



2. 胴体の組み立て
 胴体の左右のパーツを接着するには、まず上記のコクピット、ペガサスのエンジンファン、そして主脚柱を組み込まなければなりません。エンジンファンは問題ないのですが、主脚柱は胴体から突き出るため、ハンドリングや塗装作業の支障になります。このため少し細工をすることにしました。
(写真4)のように主脚柱を胴体に取り付ける固定部の根元から脚柱を切り取り、固定部側の中心に穴を開け、脚柱側には金属棒を埋め込み、後から脚柱を差し込めるように細工しました。
エンジンファンはインタフェースのチェックだけ行い、ダクト内側をインシグニア・ホワイト(FS17875/Mr.カラー316)で、ファン部を黒鉄色と銀の混色で塗装しました。(写真5)

(写真4) 分割した主脚柱

(写真5) エンジンフロントファン


 またこれらの部品を組み込む前に、コクピットの収まる内壁部をグレー(FS36231/ Mr.カラー317)で、またインテイク内部にあたる部分をインシグニア・ホワイトで塗装しておきます。 (写真6)がコクピット部分の胴体内壁部の塗装、(写真7)がインテイク内部への塗装です。


(写真6) コクピット部胴体内壁への塗装
(写真7) インテイク部への塗装

 もう一つ準備しておくものがあります。胴体パーツの左右結合後、インテイク部分に取り付けるインテイクリップです。モノグラムのキットは、インテイクリップの横にある補助インテイクの扉も3枚が一体化されています。先にこの補助インテイクの扉をリップ部分に取り付けて整形しておきます。(写真8)ハセガワのキットのように1枚ずつ取り付けるよりは随分楽です。

これでようやく胴体の組み立て準備が整いました。
(写真8) インテイクリップ部(左側)


 次にこれらのパーツを胴体に取り付けていきます。右側の胴体パーツにコクピットとエンジンファンを組み込んだ状態が(写真9)です。その位置関係が良く分かると思います。

(写真9) コクピットとエンジンファンを組み込んだ状態


 この後胴体の左右を貼り合わせ、インテイクリップも取り付けます。所々にできた段差や隙間を辛抱強く修正していきます。特にパネルラインが凸のため、貼り合わせ部は慎重に進めます。
(写真10)はグレア・シールドの段差修正です。装済みでしたがサンドペーパーで段差をなくしました。 
(写真11)はインテイクリップ部の段差修正です。胴体側を削っています。またインテイクリップはミディアムグレー(FS36231)に塗装してから接着しました。

最後にウィンドシールドと胴体とのすり合わせを行い、できるだけ隙間がでないように調整しましたが、完全にはなくすことができませんでした。またこの時、機首のARBSのセンサーウィンドとのすり合わせも済ませておきます。


(写真10) グレア・シールドの段差修正

(写真11) インテイクリップ部の段差修正


3. 主翼の組み立て
 主翼は上下のパーツを貼り合わせるだけで形になりますが、下面の内側フラップ中央部の分割ラインに大きな隙間が生じるのと、フラップの断面形状が実機とは大きく異なるという問題があります。実機ではフラップはコアンダ効果を得るために大きくドループしています。 そこで(写真12)のように分割ラインの隙間を埋めてからフラップを削り直し、さらにサフェーサを吹いて形を整える作業を何度か繰り返し、ハセガワのキットと同じような形状に修正しました。



 こうして修正の終わった主翼ですが、下面に修正跡があるのでサフェーサを吹いて表面を整えてから下面色のライトグレーを塗りました。ところが主翼下面に取り付ける左右の補助輪部と主翼とのフィットチェックを忘れていたのです。主翼下面の塗装後に補助輪部を組み込んでみると、主翼との間に隙間の発生することが分かりました。(写真13) 既にマスキングをしてミディアムグレーの塗装準備をしていたのですが、隙間をパテで埋め、整形後下面のライトグレーを再塗装するという羽目になりました。補助輪を先に取り付けてしまうとその後の工程が厄介になると考えたのですが、ここは先に接着して整形しておくべき個所のようです。

(写真13) 補助輪部と主翼取り付け部の隙間



4. 機体塗装
 組み上がった主翼と胴体の結合が終わると、グレー3色の機体塗装です。胴体と主翼及び水平尾翼下面をライトグレー(FS36320 /Mr.カラー307)、前胴部、胴体側面と垂直尾翼、及び水平尾翼上面をミディアムグレー(FS36231/Mr.カラー317)、主翼上面をダークグレー(FS36118/Mr.カラー305)で塗り分けます。 塗装は明るい下面のグレーをまず塗って、マスキングして次のグレーという手順で塗り上げていきました。塗りあがった状態が(写真14.~16)です。(写真16)でインテイク内の塗分けの様子が少し分かるかと思います。


(写真14) 塗装の終わった機体上面


(写真15) 塗装の終わった機体下面


(写真16) 塗装の終わった前胴部


5.  その他機体部品・外装品の紹介
 機体に取り付けるパーツ類について、いくつか紹介しておきます。(写真17)がGAU-12 25mmガンパックです。機体の下面に取り付けたとき隙間が空かないようにインタフェース部を良く摺合せしておきます。 塗装は機体下面色と同じライトグレー(FS36320/Mr.カラー307)で、砲口とガス抜き口を黒鉄色で塗っています。

(写真17) GAU-12 25㎜ガンパック


 (写真18)が前脚、(写真19)が主脚です。写真では良く見えませんが、前脚に付く前照灯にはガラス部分のプラ材をくり貫き、ウェーブのH・アイズ3ミニを埋め込みました。 脚柱、タイヤとも繊細な彫刻が施されているので塗分けして少し墨で汚してやるだけで実感のある仕上がりになります。

(写真18)  前脚
(写真19)  主脚

(写真20)が完成した状態の増槽です。先に述べたようにパイロンと一体で成型されていますが、こうしてみると違和感がありません。流石、モノグラムです。但し左右の接合部には段差がところどころにでき、凸のラインを消さないように整形するのに苦労しました。整形後尾部の安定フィンを付け増槽本体をライトグレー(FS36320/Mr.カラー307)、パイロンをミディアムグレー(FS36231/Mr.カラー317)に塗り分けます。デカールを貼った後はクリアでオーバーコートし、パネルラインへの墨を入れとタンク表面に少々のオイル汚れを加えれば完成です。 (写真20) 増槽

 次に搭載するウェポン類ですが、(写真21) がパイロン/ランチャーに取り付けたAIM-9L サイドワインダー、(写真21)がパイロンに取り付けたMk.82 スネークアイ500lb爆弾です。 サイドワインダーの方は良く出来ていますが、Mk.82の方はあまり出来が悪く、ハセガワのウェポンセットから持ってきました。パイロンとランチャーが一体になっていると搭載物に制約ができますが、作るにはこの方が楽だと感じました。なおパイロン/ランチャーの塗装色はミディアムグレー(FS36231/Mr.カラー317)です。

(写真20) AIM-9L
(写真21) Mk.82 スネークアイ 500lb爆弾

 最後に紹介するのがキャノピーです。キャノピーはフレーム部とプレキシグラス部の2つのパーツから成りますが、このフィッティングが悪く接着するだけだと実感を損ねます。仕方なく、接着後隙間をパテで埋め整形してから、改めてフレームの塗装を行うという手順を踏みました。但し、フレーム部のキャノピーの内側にあたる部分は後で塗装することができませんので、予め艶消しの黒で塗っておきます。プレキシグラス部のクリア・パーツは少し表面がうねって見えたため、内外面ともサンドペーパーでうねりを落とし、最後にコンパウンドで磨きました。 (写真22) キャノピー


デカール貼り

6. デカールの貼り付け
 機体のデカールはこの状態で貼っていきます。初めに書きましたようにスーパースケールのデカールを使用しています。フィルムが薄いのでハセガワのデカールより容易に貼れました。それでもロービジのデカールは苦労します。 (写真23)はデカールを貼り終えた上面から見た機体。(写真24)が下面から見た機体です。いずれもガンパック、空中給油の受油プローブ、前方の排気ノズル、そして後方排気ノズルの耐熱板を取り付けた状態での写真です。

(写真23)  デカールを貼り終えた機体上面


(写真24)  デカールを貼り終えた機体下面



 7. 完成へ
 デカールを貼り終えた機体に水平尾翼を取り付け、その後艶消しクリアでコーティングを施し、パネルラインへの墨入れと多少の汚しを加えました。そして最後に残った部品を取り付けます。まずコクピットにパイロットフィギュアを座らせました。その後、整流板、後方の排気ノズル、前脚、主脚、ウェポン類、機首のARBSのウィンドウ、そしてウィンドシールドとキャノピーなどを取り付けて完成です。(写真25~29)が完成写真です。 因みにパイロットフィギュアはキットに付属していたものは少し大きくてコクピットに入らず、ハセガワのF-4ファントムから流用しました。また写真では分り辛いですが、ARBSのウィンドウの内部にクリアーブルーに塗ったレンズを埋め込み、内部のセンサーを表現してみました。
 リリースされて30年以上が経つ古いキットですが、全体のシルエットは決して悪くないキットです。根気よく手直しするとモノグラムらしいAV-8Bを手にすることができると思います。

(写真25)  完成したAV-8B Harrier II


(写真26)  完成したAV-8B Harrier II


(写真27)  完成したAV-8B Harrier II


(写真28)  完成したAV-8B Harrier II


(写真29)  完成したAV-8B Harrier II



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Vol.132 2019 August.   www.webmodelers.com /Office webmodelers all right reserved /  
           editor Hiromichi Taguchi 田口博通 /無断転載を禁ず  リンクフリー
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