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 疾風 (アリイ 1/48)

  by 加藤 寛之




 元は大滝製作所(オオタキ)が開発したキット。原型の木型は当時の高名な原型師の作品で、つまりは精度で再現するのではなく、模型化の感性をタップリと盛り込んだキット。木型から金型への転写も人間技で充分ではないし、製作経費の妥当性もある。  そこを勘案してキット化されている面白さがキットの味わいになる・・・、と偉そうに書いたが、今回の疾風製作で初めて気付いたことがあった。



 それは主翼の造形。胴体付根の厚さに対して翼端がやや薄い。“あれ?”と思った。組み進めて分った。主脚付根までは、実機のように主翼が厚い。そこから翼端に向かって薄くなるのだが、ここで前縁をやや削り込んでいる。だから、前から見ると上反角が主翼の中ほどで弱くなったように見える。それが捻り下げのように見える。巧妙な工作だ。
 下面の主翼後縁と胴体フィレットの馴染みもすごい。ここは上面と同じような逆アールが軽くある場所だが、キットはフィレット下面が膨らみぎみなので、主翼と段差がつく。ここを主翼に合うように胴体を削ると、ちゃんと逆アールがつく。おそらく木型では再現してあったのだろう。



 胴体内に組み込むコックピットは、後ろの胴枠の底辺部分や全体の幅で、胴体の太さを決定している。主翼下面パーツにある脚庫のガッチリとした構造をあいまって、主翼上反角が恐ろしい硬さできまる。それが上述の主翼造形と組み合わさるのだ。
 プロペラの形もいい。最近のキットでも分厚いことがあるプロペラ前面側の中央部分後縁が、“プロペラの形はこうしましょうね”と削り込んである。その分、後ろ側の再現は我慢している。プラモデル化での妥協だろう。
 残念なことは、風防パーツと胴体の合いはこの時代らしくてもともと悪いのだが、さらに金型の傷みでパーツとしての限界になっていたこと。今回は欠けたところを補修し、傷やゆがみ、くもりは胴体内を黒くし風防の傷部分も黒く塗ることで見えにくくしてごまかした。銀色塗装にしたのも、黒と銀のコントラストで黒塗りを見えにくくするためだ。




 さて、このキットも簡単なので、わずか2日で完成した。大きすぎるリベット表現をむしろ強調するように塗ったことで、キットの個性がきわだったと思う。主翼前縁のオレンジ色はオレンジ色をそのまま使ったが、黄橙色よりも感じがいい。次からこれにしようかと思う。
左翼の着陸灯は、いつものように塗装で済ませた。キットの日の丸は白帯の上に刷ってあったので使えず、ハセガワデカール(懐かしい!)を貼った。垂直尾翼の数字は架空、それらしければOKなのだ。



  全体の姿は、実にどっしりとした日本機らしい曲線をもった疾風の表現になっている。図面のような現代的キットとは、まったく違う味わいだと思う。 プラモデルが表現競争だった、なにも知らずに作って楽しかった時代に、達人が遺した作品だったのだ。



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