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(Photo) 世界を旅する オチキスH39 軽戦車

by  コルディッツ
博物館実機写真

 ナルビクの戦争博物館前に鎮座するフランス製戦車は、オチキスH39と分かりました。APX-R砲塔上にドイツ式のハッチが設置されていますので、ドイツ軍に捕獲され改修された車輌です。それでも分からないのは、このH39がナルビクに逆上陸したフランス軍遺棄車輌の改造か、それとも最終的にノルウェーを占領したドイツ軍がフランスで捕獲したのかです。仮にドイツ軍がフランスで入手し、搬送したとすれば、その経路は海路ではなく、スウェーデン国鉄を利用したのではないかと、妄想を巡らせました。
 1935年に開発されたH35騎兵戦車の搭載するオチキスM1935直列6気筒液冷ガソリンエンジン(75hp)を、オチキスM1938直列6気筒液冷ガソリンエンジン(120hp)に換装して、H39が誕生しました。
 このタイプをH38とする資料もあります。 馬力向上で路上最高速度が27.3km/hから35.5km/hに改善され、歩兵戦車としても採用されました。車体後部の機関室関室の上面は、新エンジンの容積確保のため、後方に向けて下方へ傾斜する線が、水平に進む線になりました。
 H35/H39は乗員構成は2名のため、実戦での運用が難しく、ドイツ軍装甲部隊に敗北します。ちなみに英仏が乗員2名に拘わったのは、第一次世界大戦による少子高齢化の影響と説明されますので、現在の陸上自衛隊も頭が痛いことかと思います。
 H39の武装は21口径37mm砲SA18 1門と7.5mm機関銃1挺で、最大装甲厚は40mm。なおH39の一部はより強力な33口径37mm砲 SA38に換装しています。21口径をH38、33口径をH39と分ける資料もありますが、H38はどうも非公式な呼称のようです。
※ 本稿は「万有ガイド・シリーズ17 戦車」(著者:ブルーノ・ ベンベヌーティ、フルビオ・ミグリア、翻訳:森尾総夫、日本語版監修:江畑謙介、小学館 昭和57年発行)と、戦車博物館の説明板、Wikipediaを参照しました。


 Hotchkiss H39 (オチキスH39)
 戦争博物館(ナルビク)にて        2002年7月撮影


1940年4月にドイツ軍はノルウェーに侵攻、4月9日にナルビクを
占領しました。翌日から英仏軍とポーランド軍、ノルウェー軍は
奪回作戦を敢行し、ドイツ軍を敗北寸前まで追い込みましたが、
5月にフランス本国が侵攻されたので、6月8日までに撤退しました。
 フランス軍はナルビクに15輌のH39を揚陸し、うち12輌を英本土
に戻しました。これらは自由フランス軍に配属され、アフリカの
ガボンでヴィシーフランス軍との戦闘に使用された後、シリアに
移動しています。

 Hotchkiss H39 (オチキスH39)
 戦車博物館(ソミュール)にて       2016年8月撮影


H39はバトル・オブ・フランスの敗戦後、ドイツ軍に捕獲されて
使用された他、ヴィシーフランス軍にも配備されていました。
 1942年の連合軍の北アフリカ上陸作戦を、13輌のH35と14輌の
H39が迎撃し、4輌のM3スチュアート戦車を破壊しています。










砲塔背部がハッチになっていて、車長はハッチを開いて着座し、周囲を観察します。平和時の行軍なら兎も角、戦闘時には使えない構造でした。




H39の戦歴を見ると、戦前にポーランドに3輌が試験的に輸出され、
1939年の対独戦と対ソ戦を戦っていました。戦後も仏領インドシナ
など植民地でも使用され、イスラエルに買われたH39は1952年まで
現役と、意外にワールドワイドの活躍に感心しました。

 Renault R35(ルノーR35)
 戦車博物館(ソミュール)にて       2016年8月撮影 
 フランス産の純正APX-R砲塔の特徴は、車長展望用のドームです。


Marder-Hotchkiss (マルダー・オチキス)
 戦車博物館(ソミュール)にて       2016年8月撮影 
 1943年から1944にかけて、ドイツ軍はH39の車体を活用して、
48輌の自走砲を製造しました。武装は105mm軽榴弾砲18/40です。
 ドイツ軍は10.5cm leFH18(Sf) auf Geschutzwagen 39H(f) として
制式化しました。 ※ Uにはウムラウトが付きます。




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