Home  > Mitsubishi/Boeing F-15DJ “Eagle” 製作記(Hasegawa 1/48)>特集 ハセガワの航空機プラモデル>2020年5月号

特集 ハセガワの航空機プラモデル

Mitsubishi/Boeing F-15DJ “Eagle” 製作記
(Hasegawa 1/48)

by Kiyoshi Iwama(ひやめし会)


F-15DJ EAGLE “AGGRESSOR 2013” (1/48) Hasegawa Box Photoより

 航空自衛隊飛行教導群のF-15DJ “Eagle”は、施された奇抜な迷彩塗装から海外の航空ファンにも注目されている。また現用機の飛行機モデラーなら一度は作ってみたい機体の一つではないだろうか。 その思いとは逆に、複雑な迷彩塗装とステンシルの多さにしり込みさせられるモデラーも多いかもしれない。そういう本人もその一人である。そこで今回は一念発起して、F-15DJ“アグレッサー・イーグル”にチャレンジしてみることにした。

実機紹介

 航空自衛隊のF-15DJは単座型のF-15Jとともに1978年度から調達が始まった。J/DJ型は基本的に米空軍のC/D型を空自仕様にしたものである。ほとんど同じ仕様ではあるが、自己防御用の電子戦システムがリリースされなかったため、J型では国産のECM装置J/ALQ-8を核にした、国産の自己防御システムを搭載している。その後はJ-MSIPの適用が進むなどして、日本のイーグルは独自の進化を遂げるようになった。DJ型に話を戻すと、DJ型は計48機が導入されている。当初計画では調達機数が少なかったので、全機輸入の予定であったが機数が増えることになり、C-3契約の12機までが輸入で、C-6,C-7契約の8機がノックダウン生産で、以降ライセンス生産に切り替えられ、三菱重工で生産された。 これまでに1機が小松沖で墜落し、大破したが残りの機体はすべて運用状態にある。J型同様後期の生産機については、一部に近代化改修が施されているが、まだ機数は少ない。

 アグレッサー機を運用する飛行教導群には7機のDJ型と2機のJ型が配備されている。仮想敵機という任務柄、機体に加わる荷重が大きく、また荷重頻度も高い。このため機体はIRAN時期などにローテーションされ、短期での損耗に配慮した運用がなされている。また通常任務のDJ型とは異なり、AN/ALQ-131 ECMポッドなど仮想敵機としての電子装備を常用するため、アグレッサー仕様の機体となっている。


F-15DJ Aggressor Eagle Hasegawa(1/48)

キット紹介

 今回製作したキットはハセガワが2013年末にデカール替えで発売したもので、その年の飛行教導隊(当時はまだ航空総隊直轄の飛行教導隊であった)の機体2種類(92-8068 & 92-8092)のデカールが付属したものである。このF-15DJのオリジナル設計は1980年代後半とやや古いが、形状はしっかりしている。時代を経て少しずつ部品が変更されたりしてきたが、金型の劣化の跡も見られ、最近のグレートウォールホビーのキットなどと見比べると見劣りもする。しかし、30年近い開発年月の差を考えるとやむを得ないと言えよう。 キットにはノズルベーンを取り外したノズルの組み立てパーツ(エッチングパーツを含む)やステップ、そしてステップに立つパイロットのフィギュアも付属していた。最近はアグレッサー機の迷彩塗装のデカールが海外のメーカから発売されているが、ここは塗装でチャレンジすることにした。選んだ機体は、濃淡の緑色の迷彩を施した、92-8092号機である。

製作

 少し古いキットでもあるので、パーツの合わせ目やモールドの退けなどをチェックし、各パーツを仮組しておく。キットは単座型と複座型のコンパチブル・キットのため、前胴部と中・後胴部が別物になっている。仮組の結果、この両者の接合部は比較的うまくフィットするようなので、それぞれの工作完了後に結合することにした。 また主翼と胴体の接合部には段差が生じるので、塗装前に主翼も接合し、整形後に塗装に入ることにした。これで全体の工程がある程度決まった。ではそれぞれの部分の製作に移る。


1. 前胴部
 前胴部の作業の大半はコクピットの製作である。いつもならエッチングパーツを利用しているがF-15DJ用は見つからず、今回はキットのパーツを使い、塗装で仕上げることにした。コクピットや主計器板を機内色のグレー(FS36231)で塗り、計器盤やサイドコンソールは計器間の境目などをマスキングし、艶消しの黒で塗装、スイッチ類をグレーや金属色で塗分けた。(写真1)がコクピットのバスタブ、(写真2)が前席の主計器盤、(写真3)が後席の主計器盤。(写真2と3)をよく見ると外し残したマスキングテープが見える。  (写真1) コクピット部


(写真2)前席の主計器盤

(写真3) 後席の主計器盤


 前胴部には他にも前脚収納部があり、内部を白で塗装しておく。胴体部分は防眩部とキャノピーとの接触部をあらかじめ確認し、段差や隙間を修正し、艶消し黒で塗装する。 そして前脚収納部をコクピット部に取り付けて前胴部へ組み込む。この際念のため機首部に錘を取り付けた。

(写真4) 組み上がった前胴部



2. 中・後胴部
 中・後胴部では仮組の際にエアー・インテイク部の部品接合部に段差が生じることが分かった。インテイクダクトは上下半割になっており、その奥にエンジンファンが取り付く。これを組み立て、中・後胴部の下側パーツに組み込む。一方インテイクリップ部とインテイク内断面積を変化させるためのランプを胴体上側パーツに組み込む。ここでインテイクダクトが隙間なく取り付けられるのならラッキーだが、現実はそんなに甘くない。各所に隙間と段差ができる。 例えば(写真5)のように前方のダクト部を構成する部品は思うようにはフィットしない。
仕方なく寸法を調整しながら接着と整形を繰り返す。またインテイクリップ部も左右部品を接着した際、外側を合せると内側に段差が生じ、パテで修正した。(写真6)

(写真5) インテイク ダクト部
(写真6) インテイク リップ部

 上、下の胴体部品が完成した後は、接着作業となる。このときM61A1バルカン砲の砲口部も右翼肩部の所定位置に取り付けてなければならない。そのため取り付け部分の内壁部も少し整形し、接合ラインが目立たないようにしておく。またキットの砲口部は砲身の先が出っ張っているだけなので、(写真7)のようにピンバイスで砲口を空け、塗装した。(写真は塗装前) (写真7) バルカン砲の砲口部

 そして上・下の胴体パーツを接着し、整形後、コクピット部を艶消しの黒で、また主脚収納部を白で塗装した。(写真8 & 9)これで中・後胴部の工作は一段落である。

(写真8) 組み上がった中・後胴部上面
(写真9) 組み上がった中・後胴部下面


3. 主翼
 キットの主翼は左右それぞれ上下に分割されているので、まずはこれを接着する。上下と言っても下面の部品は内翼部の下面しかなく、しかも前縁のキャンバー部と後縁の動翼部は上面部品と一体成型されている。また組み立てると分かるが、上下面部品の接合部には僅かながら隙間や段差が生じる。 接着後は、まずはこの部分を修正する。そしてその後エルロンを切り離した。(写真10)駐機中の実機では、エルロンが下がっているケースが多くみられるので、今回はエルロンの切り離しにチャレンジしてみることにした。後は胴体への取り付けであるが、これは機体組立のところで述べる。

(写真10) 主翼と切り離したエルロン



4. 機体組立
 塗装前に前胴部、中・後胴部、主翼、そして垂直尾翼を接着する。接着する際に注意しなければならないのは垂直尾翼である。垂直尾翼は翼の中心線ではなく、内側の面が垂直になるように固定しなければならない。仮組の時に確認し、接合面を事前に調整しておく。 その他の部分は接着後の修正が必要となる。
(写真11)は前胴部と中・後胴部を接合した状況を示す。コクピット後席辺りに接合ラインが見える。写真では見えないが下面の方が、修正箇所が大きかった。

(写真11) 前胴部と中・後胴部の接合部位


 (写真12)は主翼の取り付け状況を示す。接合部の段差や隙間が無くなるように修正した。サンドペーパー掛けで削れたパネルラインは彫り直した。
 
(写真12) 主翼と胴体の接合部位
 (写真13)は、垂直尾翼と後胴部との接合状況を示す。取り付け面を事前に調整したが、隙間ができたのでパテで埋めている。この部分、実機ではこのような分割ラインは見えない。

(写真13) 垂直尾翼の接合部位

これで塗装前の機体の組み立てはほぼ終わった。
いろいろ小物が残っているが、これについては後程まとめて述べる。


5. 塗装とデカール貼り付け
 塗装工程は、本機を製作する上で最も厄介な作業の一つかもしれない。塗装は2段階に分かれる。最初にF-15のグレー迷彩の基本塗装、そして次にアグレッサーの迷彩塗装となる。
基本の迷彩塗装に入る前に後胴部のアフターバーナー周辺を金属色に塗装し、乾燥後マスキングする。
またキャノピーとウィンドシールドのプレキシグラス部をマスキングし、フレーム部を艶消しの黒で塗装する。塗装を終えたキャノピーとウィンドシールドは、両面テープで胴体に仮止めした。(写真14)
キャノピーの幅より胴体側が若干幅広だったので、胴体側とフィットするようにサンドペーパーを掛けて調整した。

(写真14) キャノピーとウィンドシールドを下塗り後、胴体に仮付けした状態


 これで準備が整ったので、機体全面にグレーFS36375を吹き付ける。次に濃いグレーFS36320を塗るために迷彩パターンのマスキングを作成し、機体に貼り付ける。(写真15)が今回作成した迷彩パターンを貼り付けた状態である。 FS36320を塗装するパターンの周囲にマスキングテープを貼り付けたもので、はみ出ているFS36375の部分には更にマスキングテープで蓋をした。写真には無いが水平尾翼にも同じ処置を施している。

(写真15) F-15基本迷彩塗装のマスキング


 こうして出来上がった基本迷彩塗装が(写真16)である。この2色のグレーの濃淡差はそれほど大きくないので、写真でも迷彩パターンが良く分からないかもしれない。

(写真16) 塗り終わったF-15の基本迷彩塗装


 次に緑色のアグレッサー迷彩色の塗装であるが、その前にやはりマスキング作業をしなければならない。緑色の迷彩塗装のマスキングの説明は省くが、F-15DJのアグレッサー迷彩は、可動部やアクセス部、また各種ステンシルの部分はマスキングされて塗装されている。ステンシルについては、デカールがグレーを下地にして印刷されているためマスキングの配慮は不要であるが、その他の部分についてはマスキングしておかなければならない。(写真17)。 この作業の後、淡緑色と濃緑色を順次マスキングを施しながら吹き付けていった。淡緑色の方はキットのインストにはデイトナグリーンと艶消しの白を1:1の割合で混合するとあり、試しに混色して余った部品に塗ってみたが実機の色とも異なるように感じた。そのため自己流に調色し、青味がかった緑に修正して塗ることにした。迷彩塗装を終え、マスキングテープを外した機体上面と側面の状態を(写真18)、(写真19)に示す

(写真17) アグレッサー迷彩塗装前のマスキング


(写真18) アグレッサー迷彩(機体上面)
(写真19) アグレッサー迷彩(機体側面)

 塗装が終わるとデカール貼りである。航空自衛隊の機体には多くのステンシルが貼られている。この機体も例外ではない。 細かなステンシルをそこら中に貼らなければならず、迷彩塗装と同じくらい苦労を強いられた。(写真20)に一例を示す。

(写真20) 無数にあるステンシル



6. その他部品
 6.1 エンジンノズル
 最初にも書いたが、エンジンノズルにはノズルベーンを外した状態のノズルを製作できるパーツが付いていた。プラパーツとステンレスのエッチングパーツとで構成される。ステンレスのエッチングパーツはハンドリングが多少厄介であったが、出来上がるとそれらしく仕上がった。(写真21) (写真21) エンジンノズル


 6.2 前脚と主脚収容部扉
 前脚の前照灯はクリアパーツの背面をクロームシルバーで塗装し、その上から白色塗装することで、ライトの反射面の感じを出した。また脚柱に巻かれている金属リングはアルミ箔を貼ってみた。(写真22) また主脚収納部の扉には開閉バーが見えるが、キットにはついてないのでプラ棒で作成し、取り付けた。(写真23)

(写真22) 前脚
(写真23) 主脚収納部扉


 6.3 搭載兵装
 機体への搭載兵装は、キットの箱写真の機体が搭載している、センターラインの燃料タンク、左舷パイロンに取り付けているAAM-3訓練弾、そして右舷パイロンに取り付けているACMIポッドとした。キットにはAAM-3とACMIポッドは付属してないため、ハセガワのウェポンセットを利用している。AAM-3は塗装を訓練弾とし、ACMIポッドではポッド前方部に取り付けられているデータリンクのアンテナを0.2㎜のアルミ線で自作してみた。(写真24)が燃料タンク、(写真25)がAAM-3、(写真26)がACMIポッドである。いずれもパイロンに取り付けた状態である。 (写真24) センターパイロンに取り付けた燃料タンク

(写真25) AAM-3 近距離空対空ミサイル
(写真26) ACMIポッド


  6.4 射出座席
 射出座席(ACES II )はキットの部品を使用せず、Quickboost製のレジンパーツを使用した。シートベルトもモールドされており、細かく塗り分ければ実感のあるシートに出来上がる。(写真27) (写真27) ACES II 射出座席



  6.5 キャノピー
 キャノピー、ウィンドシールドとも中央にパーティングラインが残っているので、何種類かのサンドペーパーを使ってパーティングラインを消した後、コンパウンドで磨いて透明度を取り戻す。そしてプレキシグラス部をマスキングし、塗装した。従来F-15J/DJのキャノピーやウィンドシールドの枠は一部金属のままで未塗装の部分があったが、最近はグレーの塗装が施されているようで、今回はすべて塗装でカバーした。実はリアビュー・ミラーも用意したが、実機のミラーはキャノピーの枠の中に納まり、フレームからは出っ張らないため、キットでの再現は難しいので断念した。(写真28) (写真28) キャノピー



7. 組立
 5項までに紹介したデカールを貼り終えた機体と水平尾翼、キャノピー、ウィンドシールドなどにクリア塗料(半ツヤ)でオーバーコートし、その後墨入れや、汚しを軽くつける。(自衛隊機はいつもきれいに清掃されており、あまり汚れていない)その後、部品を機体に取り付けていった。 上記で紹介しなかったが、コクピットの前席に着くHUDのコンバイナーガラスはキットのクリアパーツとして入っているが、分厚く実感を損ねるので、0.2㎜のプラ板で自作して取り付けた。(写真29)

(写真29) 自作したHUDのコンバイナーガラス

完成

 最後にウィンドシールドとキャノピーを接着すれば完成。キャノピーはオープン状態で固定した。(写真31~35)  古いキットで少々苦労したところもあるが、イメージしたアグレッサー・イーグルに仕上がった。最初にも書いたが、このハセガワのキットは、最近のキットと見比べると見劣りするところもあるが、基本的には良く出来たキットだと思う。皆さんもコスパの面からもチャレンジしてみては如何?

(写真31)  完成したF-15DJ Aggressor Eagle


(写真32)  完成したF-15DJ Aggressor Eagle


(写真33)  完成したF-15DJ Aggressor Eagle


(写真34)  完成したF-15DJ Aggressor Eagle


(写真35)  完成したF-15DJ Aggressor Eagle



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