Home  > <日本航空史> 麒麟が飛ぶ>コラム>2020年5月号 

誌上個展

<日本航空史> 麒麟が飛ぶ

  by 加藤 寛之
プラモデル コラム

 「麒麟」は今年が旬とみたので、書きためてある原稿を飛ばし、急遽「麒麟号」にした。
 スーパーマリンというとスピットファイアと言いたいが、水上機に強い会社だ。その水上機である飛行艇のひとつ、サザンプトンが昭和2年に1機、輸入されたそうだ。それでどうしたかだが、『日本軍用機三面図集 海軍機篇』(鳳文書林、昭和37年)の「八九式飛行艇」の解説に、「サザンプトン艇の長所を取入れて生まれたのがこの八九式飛行艇で、・・・艇体はサザンプトン艇に範をとっている」とある。「九○式一号飛行艇」にも、「・・・艇体はサザンプトン艇、八九艇の形式が踏襲され、・・・」とある。飛行艇設計製造の技術参考資料らしい。
 サザンプトンは昭和11年に民間へ払い下げられて「麒麟号」という旅客機に改装された。ビールのラベルにもよく似たポーズで、機首に麒麟を描いている。白黒写真でも胴体が明るい色なのは分るが、白か黄色かピンクが、そういうことは分らない。肝心の麒麟図とか電光マークも、色はサッパリ分らなかった。それが偶然に今回掲載の雑誌を入手して知ることができた。「科学画報」第26巻第1号で、発行日は昭和11年12月15日。つまりサザンプトンが麒麟号になって間もないころの発行だ。麒麟の図は黒、電光は橙色、機体はほぼ白か・・・とは言っても、この表紙の絵が正しい色かどうかまでは分らないが、まあ信じたい。



 麒麟号は旅客機だから、エアガールがすすめる飲み物はキリンビールだといいな・・・と根拠のない妄想をしていたのだが、ホントにキリンビールを提供していた。『時代が求めた「女性像」~「女性像」の変容と変遷』第18巻(まゆ書房、2013年)という書名の復刻本に、中正夫『航空と女性』(越後屋書房、昭和18年)が収録されているのだが、 そこに「昭和11年、塀大濱の日本航空輸送研究所でもエア・ガールを採用し、これは21人乗りの大飛行艇だけに、ゆったりとその名もキリン號の機上にキリン・ビールを乗客にすすめながら、温泉地別府や白濱へ飛びまして、・・・」とあった。同時代の記述だから真実だと思う。


オマケ
 山口誠『客室乗務員の誕生-「おもてなし」化する日本社会』(岩波新書、2020年)に当時のエアガールのことがいろいろ書いてあって、勉強になった。

ついでに、有名なTVドラマの背景にあった航空業界事情も興味深かった。



  Home ><日本航空史> 麒麟が飛ぶ>コラム>2020年5月号

Vol.141 2020 May.   www.webmodelers.com /Office webmodelers all right reserved / editor Hiromichi Taguchi
                  田口博通 / 無断転載を禁ず/  リンクフリー
「webモデラーズ について」 「広告のご出稿について」

プラモデル模型製作記事


TOTAL PAGE