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特集 絶版キット

McDonnell RF-101C “Voodoo”(Hasegawa 1/72)

by Kiyoshi Iwama(ひやめし会)

RF-101C Voodoo (1/72) Hasegawa Box Artより


 今年はコロナ禍に在って自宅で過ごす時間が長くなり、自然に模型と向き合う時間も長くなった。そのため自室にプラモの箱が溢れ、片付けを余儀なくされる事態に。そのとき見つけた製作途中のキットが今回の作例である。トップに示したボックスアートの箱に入っていたが、「アメリカ空軍偵察機」とあるのに、英語では「U.S. NAVY RECONNAISSANCE AIRCRAFT」とあるのが面白い。このキットが発売されたのはまだそんな時代であったことが分かる。このモデルは既に本誌にも数回登場しており読者には新鮮味に欠けるが、筆者にとっては長期間温存していた懐かしのキットで、この機に完成させることにした。
 1969年に定価250円でハセガワから発売された初代のRF-101Cのキットである。恐らくRF-101Cのモデル化としては世界初のキットではないだろうか?その後デカール替えや新しいパーツを追加したりして再版を重ねられたが、今ではハセガワのホームページからも名前が消えている。絶版となったのかもしれない。最近Valomから、パネルラインが凹彫りでエッチングやレジンのパーツが入った精密モデルがリリースされたので、ハセガワのこのモデルを製作しようという人はいないかもしれない。それでも当時としては飛行機モデラーにとってはありがたい存在であった。作例は、1950~60年代に三沢基地に駐留していた45th TRS “Polka Dots”の所属機に仕上げている。

RF-101C Voodoo Hasegawa(1/72)

実機紹介

 F-101 ブードゥーはセンチュリーシリーズの中でも派生機の多い機体であるが、大きくは単座のF-101A/C系と複座のF-101B/F系に類別できる。F-101開発のスタート点は爆撃機の護衛戦闘機を目指したもので、スピードと長い足が求められた。そのためマクダネル社では、燃料をたっぷり詰める大きな胴体にアフターバーナー付きの強力なJ57ターボジエットエンジン2基を搭載し、後退角35°の機体の割には小さな主翼を取り付けた機体を開発した。エリアルールがまだ発見されてない時代、高速性能を得るための手段としては妥当であったが、翼面荷重の大きな主翼は機動性の悪い機体を産み出すことになった。とは言え高速性能は当時としては一流で、数々の速度記録を樹立していることからもその凄さが窺える。またそのダッシュ力と航続性能は、後に複座のB型が防空戦闘機として大量にADC(航空防衛軍団)で採用される要因にもなった。

RF-101C “Voodoo”


 さて本題の偵察機型であるが、当時米空軍のTAC(戦術航空軍団)で使用されていた戦術偵察機、RF-84F サンダーストリークに替わる機体として開発された。A型の試作機YRF-101Aは1956年5月10日に初飛行している。RF-101Cの初号機の初飛行は1957年7月12日である。RF-101A/Cは外形的にはなかなか区別がつきにくい。外形的には、C型がラムエアの小さな筒形のインテイクを垂直尾翼上方に設けているのとジェットノズルの外観が若干異なる程度の差異で、残るはC型での構造の強化である。RF-101はF-101A/Cのレーダや機関砲が搭載されている機首から前胴部を再設計し、カメラを搭載して戦術偵察機にしたものであり、飛行性能はそのまま受け継がれている。そのため、高速性能と航続距離の長さ、そして安定した飛行性能は偵察用カメラのプラットフォームとしては最適であった。1958年の台湾海峡危機1962年のキューバ危機、1964年からのヴェトナム戦争と、実戦でも大いに活躍した。しかし、丸腰での偵察活動は敵防空網の餌食となる確率も高く、ヴェトナムでは被害が続出した。

RF-101C “Voodoo”


 最後にRF-101Cの偵察用カメラシステムに触れておく。当初6台のカメラ装備を標準とし、取り除かれた弾倉あたりに装備されたフェアチャイルド製KA-1 垂直スプリットカメラ2台、機首下面と両側面に配置し、左右水平線180°をカバーするトライカメラステーションのフェアチャイルド製KA-2 3台、そして前方傾斜部に配置されたフェアチャイルド製KA-2 1台から構成されていた。1965年にカメラが換装され、高度200ftでも撮影可能なハイコン製KS-72 1台、フェアチャイルド製KA-56 低高度用パノラミックカメラ 1台、フェアチャイルド製KA-1垂直スチールカメラ 2台の4台で、これが新しい標準装備となった。またこの変更に伴い機首下面のビューファインダーの形状も変わっている。カメラシステムとは関係ないが、この変更時期にELパネルライトが機首、中央胴体、垂直尾翼前方部に追加されており、機体の時期を知る手立てになる。

RF-101C Voodoo Hasegawa(1/72)

製作

 最初に書いた様に45th TRSポルカドッツ所属のRF-101Cに仕上げた。デカールは何年か前に、静岡ホビーショーのハセガワブース内のジャンクパーツの出店で偶然見つけたものを使用している。このデカールはオリジナルのものとは違い、ポルカドッツのブルーの色も修正され、細かなステンシルも入っていた。恐らく後年デカール替えで発売されたキットのものであろう。印刷もシルクスクリーン印刷で、内容も充実したものである。

1. コクピット
 最初に書いた様に今回挑戦するのはお手付きキットで、胴体は左右接着済みしかも。コクピット内も何やら濃いグレーで塗られている。(書いている本人が塗ったものだが、昔のことで忘れてしまった)そう言えばこの頃のキットにはコクピットを作り込むような風潮は無かった。キットにもサイドコンソールの付いたコクピットは入っているものの、主計器盤は無い。新たに入手したデカールには主計器盤やサイドコンソール盤面が印刷されていたので、後のキットでは改修されていたのかもしれない。折角なのでこのデカールを活かすことにした。
まずコクピットの色をダークガルグレイに塗り直し、主計器盤のデカールをプラ板に貼り付け、乾燥後クリアの艶消しを吹き付け、その後外周に沿って切り抜く。これをコクピットの前方に貼り付けるが、このままでは計器盤が丸出しとなる。そこで、0.25㎜のプラ板を切り出し、フード状にグレアシールド上部に貼り付け、グレアシールド全体を艶消しの黒で塗装した。(写真1)サイドコンソールのデカールはコクピットの口からピンセットで貼り付けた。軟化剤で柔らかくして水を含ませた筆で押し付けながら馴染ませれば何とかなった。操縦桿もないのでプラ棒などでそれらしく作り、プラシートでベルトを作り座席に貼り付け塗装した。
(写真2)座席は後で取り付けるとしてコクピットの改修はこれで終了。

(写真1) 改修したコクピット

(写真2) 射出座席


2. 胴体と翼の工作
 このキットが作られた頃の成型技術は現在とは比べられないだろう。初期ロットのキットであるが表面の仕上がりは綺麗とは言えない。各所に修正の必要な退けなどが見られ、パテを盛ってペーパー掛けすると凸のパネルラインは消えそうで、パネルラインは彫り直すことにした。

 工作作業であるが、まずパネルラインの筋彫りから始める。主翼と尾翼は直線部が多いので楽に終えたが、胴体は曲線部があり少し手間取った。
その後クリアパーツのフィットチェックを行う。キャノピーと胴体の合いは比較的良いがキャノピーの方が若干大きく、キャノピー後方のバルジ部とに段差が生じるため、バルジ部の方にパテを盛って整形して段差をなくした。
次にカメラ窓である。サイズ的にはすり合わせればある程度ピッタリ入る。しかし場所によってクリアパーツが厚く(あるいは胴体側の穴が浅く)、胴体から出っ張る。その部分は窓パーツの歪のある表面側をサンドペーパーで肉を落とし、コンパウンドで磨いて修正した。
また胴体下面には2本のブレードアンテナがモールドされているが、位置が実機とは異なるので削り取って、プラ板で作ったアンテナを最後に取り付けた。

 主翼の機体への取り付けについてはどうするか迷った。構成からすると主翼下面パーツを先に胴体に取り付け、その後主翼の上面パーツを取り付けるのが常道の様であるが、そうすると主翼の上下パーツ内側にモールドされているインテイクダクト中央のガイドベーンがうまくつながるのかどうか、組み立ててみないと分からないのである。前方から見て目立つところであり、失敗が許されない。後からの修正は難しそうだ。いろいろ考えた末、主翼の上下パーツ接着を先に行うことにした。
まず主脚収納部を艶消しの赤(FS31136)で塗装し、ガイドベーンがずれないように上下接着し、インテイクダクト内部やインテイク外形を整形していった。インテイクダクト内部は整形後外側から銀塗料を吹き付けた。(写真3)はデカールを貼った後のインテイク部の写真であるが、ガイドベーンやインテイク外形の修正がある程度うまくいったことが分かる。

 それでもこの主翼は良く出来ていると思った。こんな時代にインテイクダクトが配慮されているのだ。それに翼上面には境界層制御板がそんなに分厚くもなくモールドされている。今ならきっと別部品である。

(写真3) インテイク部詳細

 しかし、その一方で胴体と主翼の接合は少し厄介になった。胴体側の寸法が大きいので、そのままだとうまく嵌め込めない。しかたなく、主翼側を現合で削りながらフィットさせる羽目となった。

 次に水平尾翼の改修。水平尾翼は左右一体化されており、これを垂直尾翼に嵌め込んで、垂直尾翼のフィンチップとラダーが一体となった部品を上から嵌め込んで固定する構成となっている。このまま組み立てると作業性が悪くなるので、水平尾翼を中央の嵌め込み部で切断し、塗装後に嵌め込めるようにした。
(写真4)が2つに分割した水平尾翼。
(写真5)が塗装後の写真で、垂直尾翼側の完成状態を示すものである。尾翼上方にある扇型の穴の部分が水平尾翼の差し込み部分となる。 

(写真4) 左右分割した水平尾翼
(写真5) 垂直尾翼部


3. 塗装
 RF-101の塗装であるが、三沢基地で運用が始まった45th TRSの機体は無塗装であったが、後に塩害対策で制空グレー(FS16473)に塗られた。しかし、静岡で手に入れたデカールのマーキングは無塗装時代のもので、全面銀(Mr.カラー8番)で塗装し、所々少し混色してアクセントを付けた。

 普段はあまりサフェーサを使わないが、今回はパテ埋めしたところもあるので既に塗装済みの個所をマスキングして全面にサフェーサを吹き、乾燥後少し磨いて銀塗装を行った。その後マスキングしながら各部分を塗っていった。
(写真6)が塗り終わった段階の機首の写真である。先端部はセミグロスブラックで塗装し、機首上面のアンチグレア塗装はグリーン(FS34075)で塗った。またカメラ窓の部分は艶消しの黒で塗っている。

(写真6) 塗装を終えた機首部

(写真7)が塗装を終えた、下面から見た機体後部の様子である。ジェット排気のあたる部分は焼き鉄色、黒鉄色、スーパーシルバーで塗分けた。垂直尾翼後端に見えるマスキングテープは、航法灯を透明パーツに作り替えたので塗装時に巻き付けていたものである。

(写真7) 塗装を終えた機体後部(下面)

4. その他の主なパーツ
 この時代のプラモはパーツが少ない。従って面倒なことをしなければ、あっという間に形が出来上がる。このキットも残る部品は、ウィンドシールドとキャノピー、脚と脚扉、開閉の選択できるエアブレーキ、排気ノズル、燃料放出パイプ、増槽くらいである。
(写真8)が主脚、(写真9)が前脚。今の様に精密感はないが、良しとする。
(写真10)が排気ノズルであるが、こちらはまずまずの出来である。奥行きが少ないが、この時代なら仕方ない。

(写真8) 主脚 

(写真9) 前脚


(写真10) 排気ノズル


5. デカールの貼り付けと仕上げ
 デカールは硬めなので曲面に貼り付けるのに少し苦労した。一部でシルバリングが発生したが、クリアのオーバーコートで消えることを期待して作業を進めた。問題となったのは細かなステンシル。インストがないので実機の写真頼りに貼り付けた。乾燥した後、半艶のスーパークリア―を吹き付け、パネルラインに軽く墨を入れた。最後に残った部品を取り付けて完成。(写真11)~(写真13)が半世紀の年を経て完成したRF-101C “Voodoo”である。

 プラモに賞味期限がないことを改めて知らされた。また昔のキットを引っ張り出して完成させてみよう。 

(写真11) 完成したRF-101C “Voodoo”


(写真12) 完成したRF-101C “Voodoo”


(写真13) 完成したRF-101C “Voodoo”



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