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特集 絶版キット

飛燕2型改 (マルサン 1/50)

  by 小山新一


絶版キットの行方

 オークションで落札された絶版キットたちの多くは、コレクターのもとで、未組のまま保存されていくのであろう。そうした扱われ方に、意義を唱える気持はない。それも、プラモデルに対する愛情だと思うし、彼らによって資料としての絶版キットは保存されていくわけだから、私のようなモデラーは安心して作ることが出来るというものだ。

 ランナーについたパーツは切り離して、接着、組立てれば一機の航空機、あるいは一輛の戦車になるべく成型されている。その組立ての手順を書いた取説には完成写真だって載っているではないか。プラモデルは本来組立て、完成させるためのものなのである。

キットについて

 さて、マルサン 1/50 飛燕2型改 である。今回作ったのは、私の手元にある2個のキットのうち、最後期の黒箱である。このボックスのシリーズ・デザインは今でも新鮮だ。ボックス正面には、白バックに機体のイラストが描かれている。飛燕の場合、2型改の左側面が正確・精密に描いてある。

黒箱正面


  このイラストに、中のキットが忠実であればと期待して箱をあけると、大きな落胆を味わうのだが・・・。全パーツの写真をみていただけば、今どきの1/48 クラスのキットしか知らぬモデラーは、めまいさえ起こすのでなかろうか。左右の胴体を合わせて出来るコクピットの、くぼみに入れるパーツは一個のみ、座席と一体に成型されたパイロットだけだ。主翼は、左右が上下の貼り合わせだが、脚庫のくぼみなし。脚庫の形に砂目のモールドがあるのみだ。ここを黒く塗れということらしい。


全パーツ


 こうしたシンプルきわまる構成で、パーツ・リストは1、プロペラ~27、アンテナで終わっている。1/100 クラスとあまり違わないパーツ数で、全体形はのちに出された同社1/100 飛燕2型改に及ばない。ことほど左様に、デッサンも細部も取り柄なしと断じざるを得ないのだが、これがマルサン「世界の傑作機」シリーズの第一作であることを思えば、その存在意義は大きい。まだ扱いなれぬ、プラスチックという新素材を用い、ソリッド・モデル的感覚で、ともかくも「飛燕以外にはみえぬ」モデルを作り上げたのである。これを世に出し、多くのモデラーの反響を糧に、スタッフたちは努力をかさね、やがて「零式三座水偵」、「百式司偵」、「F86D」などの当時の水準を抜く名キットを作り出していくのである。

制作

  絶版キットには敬意を表し、修正追加工作をしない方針で作ることにしています。従って、合わせ目隙間を埋める以外の工作はなし。オリジナルを尊重して作り、完成させました。塗装はすべて筆塗りで、日の丸部隊マークも手描きです。2型改唯一写真が残る、飛行第56戦隊のものにしてあります。

組立て完了 日の丸下地塗り 


迷彩塗装完了


完成




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