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特集 タミヤ48

<すごいタミヤ、残念なタミヤ>

by Windy Wing 2013


 個人的にはタミヤというのは今日、世界一の実力を持った模型メーカーではないかと思うのですが、そんな会社の製品でも、やはり「すごい」製品と「残念な」製品があることはどうしても否めない事実です。そこで今回は1/48スケールの航空機キットを中心に、それぞれのパーツや解説書などについて実例を挙げながら、このメーカーの真実を今一度、深掘りしてみたいと思います。


<すごいタミヤ(1):1/48 メッサーシュミットBf109E-3>

タミヤのキットの魅力はなんといってもそのダイナミックな造形表現にあります。同社1/48の<Bf109E-3>も初版は1996年とそう新しくもない製品ですが、簡易な構成にもかかわらず、極めて巧みにこの武骨な大戦初期の騎士道精神を立体化しており、後発のエデュアルド社やエアフィックス社の同スケールキットに勝るとも劣らぬ完成度を見せます。このようにタミヤの製品にはどの時代においても、一定の安定感と安心感があり、場末の模型屋のオヤジがよく「タミヤのだから」という理由だけでビギナーに新製品を奨めているのも、なにやら胡散臭いながら、まったく理解できない話ではありません。


<すごいタミヤ(2):1/48 ハインケルHe162A-2サラマンダー&1/72 川崎 三式戦闘機 飛燕1型丁>

 また、タミヤという会社は業界の最大手とは思えないほどしばしば、新しい手法の部品構成を試みてくれています。その一例として、1/48の<He162A-2>では、機首の一部が前部風防の透明パーツと一体化されていて、完成時にありがちな風防と胴体の取り付けのスキマをなくし、確実な組み立てと美しい曲線の再現に一役買っています。ただこの構成は、私の知る限りでは本キット以外には採用されておらず(<Fi156Cシュトルヒ>のような複雑なものは別として)、あるいは塗装をしないユーザーから「実感に欠ける」とクレームがついたのかもしれません。このあたりは例えば、透明とソリッドの二種類のパーツを用意するなど、いろいろな意見を取り入れながら、さらに新しい発想のキットを開発していただければと思います。
また同じような例として、最新の<飛燕1型丁>では1/48でも1/72でも、胴体の背中に当たる部分が実機の外板継ぎ目どおりに別パーツになっており、左右胴体の上部の合わせ目を消す必要がなくなりました。これも確実な金型技術を持つ同社だから可能となった構成ですが、そのおかげで、追加発売された1/72の銀メッキのキットでは「合わせ目を消すか、メッキを残すか」の苦渋の選択を迫られることなく、ストレスフリーに工作を進めることができます。


<すごいタミヤ(3):1/72 BAeホーク>

タミヤ製品のもうひとつの楽しみはその海外製品、特にイタレリ社のパーツを使った限定販売品にあります。当初は1/72の<C-119>や<C-130>などの大型キットに実機解説冊子を追加して様子を探っていたようですが、その後、この会社の優れた製品をピックアップして、1/48の<ホーカー・ハリケーン>や<Hs123A-1>、<Ar196A>、さらには1/48と1/72で<BAeホーク>など、名品とまでは申しませんが、なかなか味わい深いキットを多数、日本語解説書付きで発売してくれていました。最近では<F-35>のA/B型などが記憶に新しいところですが、ライセンスの関係か、これらも一定数の流通が終了するとその入手が困難になってしまうのはいたしかたのないところでありましょうか。しかしながら、このタミヤ/イタレリ製品の人気のほどは、オークションなどであまり値崩れしていないところからも量られようというものなので、また本国で良いキットが発売された折りには、それらを精力的に紹介していただきたいものです。


<残念なタミヤ(1):1/48 フォッケウルフFw190D-9>

ところが最初の欄で書いた「ダイナミックな造形表現」が行き過ぎると、あまりにアクの強すぎるシルエットとなってしまい、この<Fw190D-9>の機首のような残念な結果となってしまうこともタミヤにはしばしばあります。同じくFw190A/G系全般の機首もゲンコツの塊のような残念な造形であるし、そもそも同社1/48創生期の<疾風>や<雷電二一型>も発売当時こそ絶賛されていましたが、実はその機首の形状や胴体断面などはこの「残念組」の大代表です。今さら言うまでもありませんが、プラモデルの造形というものは実機の設計図をそのまま形にしても「なんだか違う感」を生み出してしまう不思議なもので、「全然違うのにそうとしか見えないデフォルメ」でこそ設計者の底力は試されます。



<残念なタミヤ(2):1/48 メッサーシュミットBf109G-6>

タミヤというのは妙な会社で、なぜか組立解説書にパーツ図をつけません。ひとつのキットの中に日本語と英語の実機解説書が入っていても、パーツ図はどこにも見当たりません。使わないパーツがいっぱいあって、みんながとても困っていても、パーツ図には知らん顔をしています。「頑迷固陋で、指摘されるとむしろ意地になって改めない」とあっては、どこぞの世界的スポーツ大会の偉いさんのように社会から総スカンを喰らいますぞ。


<すごいぞ、タミヤ!>

近年は金型製作に種々の手法が取り入れられ始めたとはいえ、メーカーが一定の技術力を維持しながら商品を供給し続けることが難しいのは他の会社の歴史を見れば明らかです。そしてその意味において、タミヤは21世紀以降、基本的な品質は落とさずに、そして同時に、新たな挑戦を続けてくれている数少ない企業のひとつであることに疑う余地はありません。願わくば、これからもこのユーザー目線を忘れない「トライアル&サクセス」を不断に続けていただきますよう、「すごいタミヤ」に心からのエールを送ります。



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