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SAAB 37 VIGGEN PROTOTYPE (タミヤ 1/100)
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五六式(TYPE-56)
ドラケンのつづきです。今回は,現代のヨーロッパの空を飛んでいるイカみたいな戦闘機たちのご先祖様とも言える,SAABのビゲンです。キット発売当時の五六式は,白髪染めのビゲンしか知らんかったです。←ホントは,ヴィゲンだってば・・・。
<実機について>
SAAB 37 ビゲンは,SAAB 35 ドラケンの後継機として開発された多用途機で,攻撃戦闘機AJ 37,復座練習機SK 37,偵察機SH 37/SF 37,迎撃戦闘機JA 37などのバリエーションがある。SAAB 35ドラケンでは,超音速飛行性能を実現つつSTOL性能を高めるためダブルデルタ翼が採用されたが,本機では,さらにそれを発展させたカナードを加えたデルタ翼を採用した。この形態を採用した航空機は,SAAB 37以前には,実用機として成功した機体がなく(震電,惜しかった!),革新的なものであった。カナードを加えたデルタ翼機は,後に,IAI クフィルやダッソー ラファール,ユーロファイター タイフーンなどにも採用されポピュラーなものとなった。さらに,SAAB 37 は,旅客機に採用されているスラストリバーサー(逆推力装置)を装備し,着陸距離を短縮することにも成功している。
本機は,航空自衛隊の第二次FXの選定候補であったが,航続性能が十分でないなどの理由で,F-4ファントムⅡに敗れた。
<キットについて>
初版は,ミニジェット機シリーズNo11として1969年にリリースされ,1983年に再版,1986年にレベルから箱とデカールを変更して発売されています。
現在は,各国語併記の組み立て説明書ですが,当時は,英語版の説明書が別に付いていました。
キットは,ハセガワの1/72スケールのキットと同じく,試作第1~3号機を再現したもので,試作4号機以降の機体や実戦配備されたAJ 37とは,主翼前縁やベントラルフィンの形状,レーダー警戒アンテナフェアリングの位置などが異なっています。
実戦配備された機体を再現するには,キットに改造を加えるか,1970年代にリリースされたMATCHBOXやHELLERのキット,もしくは,近年リリースされたTARANGUS/SPECIALHOBBYのキットを製作するかということになります。
<製作>
1 かなりいじることになるので,実用化された機体を再現するのはやめにして無難に試作機として完成させることにしました。
2 若干テールヘビー気味なのでイジェクションシート直後(おもりを隠す手間がかからないので)におもりを入れています。
3 気をつけていたのに垂直尾翼についているピトー管が折れてしまったので後で,自作のものをつけました。
4 ジェット排気口が,本体にフィットしないので干渉する部分を削り込みました。また,エレボン後端とのラインがつながらないのでプラ板を貼って整形し,ラインが自然につながるようにしました。
また,ジェット排気口の内側にダボとその受けがあり,目立つので削り取りました。 キットの部品は,スラストリバーサーが作動した状態を再現するものです。飛行状態で組むなら,排気口周辺の加工が必要です。
排気口に見える3枚の貝殻状の部品は,ジェットの排気を反転させて前方に排出するもので,これにより,着陸距離が短くなります。この3枚の部品は,通常は,排気口の内側に密着しています。
赤で囲んだ部分も,スラストリバーサーが作動した状態を再現するものです。通常は,引き込まれています。
5 特に,カナード周辺の部品の合わせが悪いのでここに力を入れました。
・カナードを含む胴体背面部の部品4を合わせてみます。
・部品4が成型後に左右に広がって胴体との間に段差を作っています。
・部品4熱湯に浸した後,左右の幅が狭まるように力を加え,元に戻らないよう水につけて本来の形に近づけていきます。胴体との密着度を確かめてちょうど良くなるまでこの作業を繰り返します。
・部品4の後部,左側のみを胴体にがっちり接着します。1日おいて,右側と前部を接着し,1日おきます。
・部品4の前後と胴体との間にも隙間ができる(この隙間も,成型後の変形の疑いがあるのですが,力を加えて修正するのは,難しいと思います。)のでプラ板を前の合わせ目に貼って隙間を埋めます。また,風防との間にも隙間があくのでヘッドレストのあたりにも同じ厚さのプラ板を貼って調整しました。
・カナード下面と胴体との間にも隙間ができます。とくに,胴体右側の接着面が波打っていたのでヤスリで平面を出します。
・この時点で,カナード下面と胴体の間にわずかに隙間があいているので流し込み接着剤で接着面を溶かした後,ぎゅっと抑え,30分ほどビデオでも見ながら圧着するのを待ちます。左右同時に行うとゆがみが出るので片側に1日、もう片側に1日かけて固着させます。この時点でカナードに下反角がついてしまいました・・・涙・・・。
・カナードの下反角は,一旦放置して,ジエットインテーク(部品6と7)を接着します。ここにも隙間ができますが,接着面を平面ヤスリで整形して調整すると段差や隙間の発生を抑えることができます。次の作業に備えてジエットインテークとカナードは,がっちり接着しておきます。ここで念のために1日放置しておきます。
※右が,インテークとカナードの取り付け角を加工したもの。
左は,未加工。
・カナードについてしまった下反角は,カナード上面と胴体のつなぎ目に切り込みを入れてやることで上に曲げて修正できます。初めは,カッターであたりを取り切り込みがある程度の深さになったら筋彫り用のツールで溝の幅を0.1mmほどに広げてやります。カナードを折ってしまわないように少しずつ力を加えてわずかに上反角がつくまで曲げてやります。うまく曲がらない場合は,無理に曲げようとせずに少しだけ切り込みを深くしたり幅を広げてやったりすると良いでしょう。
この作業の前に部品同士ががっちり固着していないと折り曲げ加工がうまくいかなくなるので注意が必要です。また,強引に作業をすると,部品が割れたり修復不能なゆがみができたりして貴重な絶版(・・・だよね?)キットがおじゃんになります。くれぐれも慎重に。
ちなみに,試作4号機以降,カナードは水平に取りつけられているそうです。
6 キットの塗装図では,試作2号機のレドームは,銀色と指定されていますが,手許の資料本の実機写真では,黒くなっていました。撮影時期によって,違いがあるのかもしれません。
7 デカールは,マイクロスケールのリキッドデカールフィルムで保護しました。
一つ一つの作業の難易度は,そんなに高くないのですが,結構時間を喰いました。接着部分の固着を待つ時間が結構長く,その待ち時間を,寝る時間と重ねるとか,小部品の加工や塗装に回すとか,他のキットの製作を進めるとか工夫をしないと時間ばかりが経ってしまいます。
<完成>
五六式は,実機を見たことがないし,中学生の時,このキットとハセガワのキットしか作っていないのでビゲンの正解は,この形だったりします。実用化された機体の主翼前縁には,ドッグツースとも呼ばれる切り欠きがあります。キットの発売から50年あまり,タミヤもハセガワもこの部分の改修はしなかったんだな・・・。
武装てんこ盛りです。
中央の増槽は,その左右のセンサーの先の塗装が終わるまでは組み込まない方が良いでしょう。
Rb04対艦ミサイルは,部品数が4と多いですが,簡単に組みあげられました。
採用したRM 8エンジン(旅客機や輸送機によく使われるJT8Dターボファンエンジンを改設計したもの)の直径が大きいので,ビゲンは,ドラケンよりもかなり大柄な機体となりました。
ドラケンとそろい踏みです。両方とも,合わせの調整や脚部の組み立てにかなり難儀しました。ビゲンの場合,最後の最後になって主脚の4つのタイヤを接地させるのにまたまた苦労(主脚付け根を切り詰め,主脚ステーの長さとバランスを取ります。この作業のおかげで主脚の接着面周辺がぐちゃぐちゃになってしまいました・・・涙・・・。)することになりました。
1/100スケールのジェット機は,1/72スケールのモデルよりもコンパクトでありながら,1/144スケールのモデルに感じられる扱いにくさがなく,なかなか魅力的だと感じました。タミヤさんが完全新金型でリニューアルしてくれたら・・・等と妄想してしまいます。
1 Mig-19E FARMER
2 F-100D SUPER SABRE
3 A-7D CORSAIR II
4 F-8E CRUSAIDER
5 A-4E/F SKYHAWK
6 F-4D SKYRAY
7 LIGHTNING F-6
8 F-35A LIGHTNING II
9 MIRAGE IIIC
10 RAFALE
・・・なんてね。
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