Home  > Lockheed F-104C “Starfighter”(ESCI 1/72)>特集 絶版キットをおしげもなく作り倒す>2021年9月号

特集 絶版キットを おしげもなく作り倒す

Lockheed F-104C “Starfighter”(ESCI 1/72)

by Kiyoshi Iwama(ひやめし会)

Lockheed F-104C (1/72) ESCI Box Artより


 ハセガワのF-104J(1/72)と並行製作していたESCIのF-104C(1/72)がやっと完成しました。購入して30年以上が経つこのキットですが、既にESCIブランドは1999年に消滅、金型はイタレリに移り、現在はイタレリブランドで発売されているようです。しかしイタレリのキットも最近は店頭でも見かけなくなりました。絶版になったのかどうかは断言はできませんが、今となっては貴重なキットかもしれません。
ESCIのキットは繊細な表面の筋彫りがお気に入りですが、時々落とし穴もあり、注意も必要です。このF-104Cも良く出来ていますが、じっくり見てみると2つほど問題点が出てきました。一つは、翼端と翼下の増槽の直径がかなり小さいことです。もう一つはキャノピーの天井が厚く、見る方向によってはレンズのように見えることです。後者の修正は難しく諦めました。前者については、翼端にはサイドワインダーを取り付けることで問題回避し、翼下にはハセガワのキットから流用したタンクを搭載することにしました。それでもこのキットには、ハセガワのキットには無かったエアーブレーキの開閉状態が選択できる利点もあり、作品では開状態で仕上げてみました。またキットには米空軍3種、とプエルトリコANGの4種類のデカールが付属していましたが、南ヴェトナムに派遣された479th TFW(戦術航空団)の機体に仕上げています。 

F-104C “Starfighter” ESCI (1/72)

実機紹介

 F-104についてはF-104Jの製作記事でも書きましたので、ここでは今回製作したC型について述べてみます。米空軍は自国で開発されたF-104を前期生産型のA/B/C/D型しか採用せず、調達機数も試作機を含めトータル296機という少数で調達を終えています。特にC型は77機しか調達されていません。当初の計画では440機を調達する予定でしたが、363機がキャンセルされたのです。最初の量産型となるF-104Aは制空戦闘機として採用されたのですが、C型の採用に踏み切ったTAC(戦術空軍)の要望に応じ、C型では対地攻撃も可能な全天候型戦闘機に変更されました。なかでも、戦術核兵器の搭載を可能にしたことが大きな特徴で、胴下のセンターラインパイロンには2,000lbの搭載物が懸架できるようになったのです。またエンジンもそれに合わせ、出力15,800lbで燃料消費量の少ないJ79-GE-7Aに換装されています。また航続距離の伸延のため空中給油プローブが左舷コクピット横に装着可能となり、生産の途中ではアスレティング・フックがベントラルフィンの右舷に取り付けられました。さらに1961年以降には前部胴体下にAIM-9B サイドワインダー空対空ミサイル2発が装備可能なランチャーが追加されています。

F-104C “Starfighter” ESCI (1/72)


 部隊配備の開始は1958年10月15日で、最初に配備されたのは戦術空軍(TAC)のカリフォルニア州ジョージ空軍基地に配備されていた第479戦術航空団第476戦術飛行隊(479th TFW/476th TFS)でした。また複座の練習型となるF-104Dが1ヵ月遅れで同航空団に配備されています。C型は調達機数が少なかったこともあり、配備された実戦飛行隊(訓練飛行隊除く)は、第479戦術航空団傘下の第434,第435,第436そして第476飛行隊のみというものでした。これらの飛行隊は1960年代に入るとソ連との冷戦が高まる中、在欧米空軍へローテーション配備されるようになります。またヴェトナム戦争が激化すると総計25機のF-104Cが1965年の4月から南ヴェトナムのダ・ナン空軍基地へ展開し、上空援護や地上攻撃の任務に就き、この間の総出撃回数は2,269回、総飛行時間8,820時間に及びました。さらに翌年の1966年5月から1967年の6月までは、タイのウドンRTABに分遣隊を派遣しています。こうした実戦での貢献があったものの他機種に比べ事故率が高く、1968年の初めには479th TFWのF-104Cは米空軍の第1線を退き、一部の機体がプエルトリコANGへと配転されたのです。

製作

 ではキットを見ていきます。ハセガワのキットを先に製作したので、どうしても比較したくなります。胴体はハセガワ同様分割されていますが、分割面は後胴部寄りで、垂直尾翼の前方部です。胴体に嵌め合い部分があって位置決めは楽ですが、多少の段差が生じますが許容範囲内です。その他はハセガワと同じような構成ですが、主脚が後付けできるので作業性が向上します。胴体左右のエアー・インテイクは胴体との接合部ですり合わせが必要となるため、内部のみを先に塗装して組付けることにしました。一体成型されている主翼は少し表面にうねりがあるので、軽く整形が必要です。一つ心配なのが主翼の取り付け角度です。ハセガワのキットはしっかり下反角が決まりましたが、このキットでは胴体に差し込んだ状態ではぐらつき、主翼の下半角が決まりそうにありません。また全体の組み立ては、胴体と主翼、水平尾翼はそれぞれ塗装を終え、デカールも貼り終えてから接合する手順で進めることにしました。以下、各部の工作過程について紹介します。

1. コクピット
 前胴部を組み立てるために、最初にコクピットの組み立てから入ります。コクピットはバスタブタイプの簡単な構成です。キットの主計器盤とサイドコンソールは、デカール仕上げですが、少しリアリティに欠けます。また形状も実機とは少し異なるようです。キャノピーの中では良く分からないので、F-104Jの製作時に余ったエッチングパーツを利用して主計器盤を作り直しました。(写真1)
サイドコンソールはキットのデカールを貼り付けただけです。また主計器盤の形状を変えたので、グレアシールド部も作り直しました。
(写真1) 主計器盤


 射出座席は一体成型で胸のベルトがモールドされていましたので、塗装で済ませました。腰のベルトはモールドが無かったのでジャンクパーツの中からのベルトのエッチングパーツを探し出し、塗装して付けてみました。(写真2)
(写真2) エジェクションシート


 そして主計器盤と操縦桿を取り付けたコクピットタブを前中胴部のパーツに組み込みます。(写真3)
デカール仕上げのサイドコンソールが少しおもちゃっぽく見えます。エジェクションシートはキャノピーを取り付ける前に組み込みます。 

(写真3) 前中胴部にコクピットタブを組み込んだ様子



2. 胴体部
  万一のために機首部に錘を取り付け、前中胴部の左右パーツを貼り合わせました。(写真4,5) 
下面のモールドは少し甘く、接合部を整形したあと一部パネルラインを彫り直しました。またモールドの凹みはパテを埋めて修正しています。

(写真4)  前中胴部を斜め上から見る

(写真5)  前中胴部を下面から見る

 次に後胴部ですが、こちらも左右の2パーツですので貼り合わせて整形するだけですが、貼り合わせる前に内側を黒鉄色で塗っておきました。排気ダクトとノズルは最終段階で取り付けます。垂直尾翼も面積の少ないC型仕様です。

(写真6) 組み立てた後胴部


 前中胴部と後胴部を合体する前に左右のエアー・インテイクを取り付けました。胴体との合いもまずまずです。そして前後の胴体部を合体し、給油プローブを取り付けました。その後接合部を整形、そして塗装です。レドームと垂直尾翼の一部をエアクラフト・グレイで塗装し、乾燥後マスキングして金属塗装を行います。(写真7)
基本的には銀塗装が主体でグンゼの8番で塗りました。胴体後部のエンジン部外板は写真で見てもいくつかの金属色に反射して見えますので、外板パネルをマスキングしながら銀やスーパーステンレス、あるいは焼き鉄色と銀の混色などでアクセントを付けています。(写真8)

(写真7) レドーム塗装後の銀塗装


(写真8) 後部胴体の金属色の塗分け


 さらにマスキングを施し、エアーブレーキ内部をインテリアグリーンに、また機首上面のアンチグレア部を艶消しの黒で塗装しました。(写真9,10)
米空軍のF-104のアンチグレア部はグリーンの機体もありますが、南ヴェトナムに展開した479th TFWの機体のアンチグレア部は黒でした。 

(写真9) エアーブレーキ内部の塗装

(写真10) アンチグレア部の塗装


 次はデカールの貼り付けです。見た目は美しいデカールでしたが、経年変化のせいか割れが生じたり、シルバリングを起こしたりで苦労させられました。(写真11と12)に一部を紹介します。
(写真11)は前胴部です。自作したグレアシールドが見えます。
(写真12)は後部胴体です。エアーブレーキを取り付けた後の写真ですが、少しシルバリングを起こしているのが分かります。

(写真11) デカール貼り付け後の前胴部 
(写真12) デカール貼り付け後の後胴部



 最後に展開状態のエアーブレーキ、ベントラルフィン横のアレスティング・フック、そして水平尾翼を取り付ければ胴体部は完成です。(写真13)キットのエアーブレーキは取り付け位置の説明もなく、手間取りました。

(写真13) 最後に取り付けた、エアーブレーキ、アレスティング・フック、そして水平尾翼



3. 主翼
 タンクの直径が小さいことから主翼端にはサイドワインダーミサイルを搭載することにしたと書きましたが、ランチャーもサイズ的に正確なハセガワのパーツを流用することにしました。(写真14)がハセガワの翼端ランチャーを取り付けた左右の主翼です。

(写真14) ハセガワのランチャー部品を取り付けた主翼


 工作はこの程度で、あとは塗装とデカール貼りです。空自のF-104Jは上面が白、下面がエアクラフト・グレイでしたが、米空軍のF-104は上面が白、下面は無塗装です。正確には翼付け根の一部とランチャーは金属色です。キットもそのように塗装してデカールを貼りました。(写真15)は上面から見たデカールも貼り終えた主翼です。 

(写真15) デカールを貼り終えた主翼上面


 次に主翼下に取り付ける増槽です。ハセガワのキットの増槽を、ESCIのキットのパイロンに取り付け塗装をしました。(写真16)は、パイロンに増槽を取り付けた塗装前の様子です。 

(写真16) パイロンに取り付けた増槽



4. 最終組み立てと仕上げ
 最終組み立てで最も注意する点は、主翼の取り付け下半角です。ボール紙で簡単な組み立て治具を作り、主翼を胴体に接着して一昼夜寝かせました。その状態で、艶消し塗装の部分をマスキングし、半艶のスーパークリア―でデカール保護のオーバーコートを行い、乾燥後、脚、脚カバー、排気ノズル、ピトー管、キャノピーを取り付け、最後にAIM-9Bサイドワインダーミサイルを主翼端のランチャーへ、そして増槽をそれぞれ左右の主翼に取り付けて完成です。(写真17~)が完成写真です。  

(写真17)  完成したF-104C “Starfighter”


(写真18)  完成したF-104C “Starfighter”


(写真19)  完成したF-104C “Starfighter”


 何十年もストックしていたキットがやっと陽の目を見ました。古いキットで難点もありましたが、完成して見ればまずまずです。欲しいキットを手に入れる喜びもありますが、完成の喜びには勝てないですね。 


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Vol.157  2021 September.     www.webmodelers.com /Office webmodelers all right reserved /
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