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  百式司令部偵察機Ⅲ型
(アルカンシェール(旧マルサン)1/48)

  by 加藤 寛之



 マルサンの倒産後に相当数の飛行機キットの金型が他社に流出した。アルカンシェールの百式司令部偵察機Ⅲ型もそのひとつ。このキットはサニーが生産しており、アルカンシェールはその箱絵を1色刷りにして流用している。キット内面に1961年の刻印があるから約60年前の金型で、マルサン製だから1/50が正しい。橋本喜久男氏設計の傑作キットとして高く評価されたキットで、旧キットのリサイクル市場がなかったころはマニア垂涎の製品だった。
 「そのうちに作ろう」と思って持ち続けていたが、「そろそろ作るか」となって開封した。製作方針(というほどでもないが)は、キットの味を活かすこと・時代感を残すこと。細かく手を加えるくらいならばタミヤのキットを作ったほうがいいから、要するに丁寧に作ってオシマイにしよう、ってこと。当然、凸線のパネルラインやリベットは、そのまま使う。



  開封して、ざっとパーツ確認と製作の手順を検討する。
主要パーツをランナーから切り離すのだが、ゲートは太く、プラは金属かと思うほどキンキンに硬い。主要パーツの表面は鏡面仕上げ的に美しい。傷はほとんどない。バリはプラ板サイズ的な大きいものも散見される。風防はあらためて磨かれたのか、非常にきれい。ただし枠のモールドは内面にある。型式は集合型排気管である初期のⅢ型で、プロペラはちゃんと先細り形、スピンナー先端には機動用フックが見事に再現されている。動翼類は可動だけれども、これは固定にする。このキットの当時でもマニアは固定して綺麗に作ろうとするのが普通だったから、それでいいのだ。主脚も固定にすれば、後づけに出来る。評判が悪かった脚扉も固定する。このキットはエンジンがなく、冷却ファンがある。橋本喜久男氏によれば、キットの設計当時に冷却ファンの有無が分からず、後にエンジンへ改造しやすい造形にしたらしい。これはキットの歴史だから、そのまま使う(楽だし)。コックピットは、計器盤と両側面、背部もそれなりにしっかり造られており、当時ならば最高レベル。後席周りも高水準。カメラ窓はもちろん、翼端灯や機首の着陸灯も透明パーツで、この時代のキット水準をはるかに超越している。
作る。基本的にキット尊重なので、軽い工作だけ。
エルロンの固定には、翼との隙間にプラ板を入れ、段差はパテを使って均一化させ、主翼との一体感を出す。ただし上面側だけで下面は手を抜く。他の動翼類は接着し、パテを薄く入れるだけでOK。
胴体側面や下面の窓は、厚み部分を上面色や黒で塗り、出来たときの厚み感を緩和させる。
プロペラは良く出来ているので、中心に近いところの厚みを少しだけ削ってOKとした。
脚カバーは固定するので、可動のための凹凸を整形。フチの厚みを切り取って薄く見せる。このごまかし方法は昔の一般的な工作方法。
尾輪が面白い。ブロックから尾輪が出ている。ブロックの側面を下面色に塗り、前後を黒でごまかす方式だ。ほとんど見えないところだから、これは楽しい。
主脚のホイールカバーは厚すぎるので、半分くらいの厚さに削った。
カウルフラップが飛び出しており、しかも分割線が凸なので改修しようかと思ったが、やめた。この時代、飛行機キットのカウルフラップは段差をつけた凸表現が多かった。この時代の表現方法なのだ。
主翼は上反角が不足なので、下面側にプラ板を挟んで角度を強くした。
まあ、このくらい。



  塗る。
『世界の傑作機』旧版№64(1975年)p.23に初期のⅢ型が載っていて、うまいことに尾翼マークも胴体帯もない。これなら日の丸を6枚貼って終了にできる。塗装嫌いの私にピッタリだ。初期のⅢ型なので、上側面を濃緑色、下面灰色に決める。日の丸は白フチなし。下面色の範囲を確認しておく。ラダーが明るい色に見えるが、反射の違いだろうと判断。プロペラとスピンナーは暗い同色だろうから、茶褐色とする。
最後に半光沢のスプレーをプ~~として出来上がり。
これで完成。予想をはるかに超えてイイカンジだ。

  追記:
 横から見たときにカウリングがやや上向きで「イヤだな」と思ったのだが、『世界の傑作機』旧版№64の塗装図を見たら、軽い上向きに描いている。「なんだ、橋本氏はこう描いてもいたのか」と分かり、改修せずにキットのまま組んだ。橋本作品だからそれでいいのだ。


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