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  ヤンマーコンバイン YH6115 (ハセガワ1/35)

by 小山新一



(1/35 というスケール)
 日本プラモデルの黎明期、国産のスケール・モデルの縮尺は10進法にもとづくものが多かった。ソリッド・モデルの伝統があったためでもあろう。大きい方から主なものをあげれば、1/35, 1/50, 1/75 あたりとなろうか。それが徐々に、12進法をふくむ英米の縮尺に統一されてしまった。前記のスケールに近いものをあげれば、1/32, 1/48, 1/72 となる。英米2国が、プラモデルの製造・販売で先行していて、品質も高かったためであろうが、大きさの問題もあった。英米のスケールが、みな日本のそれに比べわずかに大きいのだ。ために、1/48のヘルキャットとわが国産の1/50の零戦を並べると、実寸以上の差がつく。スリムでスマートな零戦が、貧弱にさえ見えてしまうのであった。

右側面から


 だが、こうした中で日本発のスケールが、世界の模型業界を席巻したものがある。ミリタリー・モデルにおける1/35 である。これ、ひとえにわが日本のタミヤ模型が、地道にこの縮尺で、高品質のミリタリー・ミニチュアを作り続けてきたからに他ならぬ。このミリタリー・ミニチュア(M・M)シリーズ、今なお増殖を続けているのみならず、初期に販売したアイテムを最新の技術で作りなおしたりもしている。

(ハセガワの建機・農機シリーズ)
 この、ミリタリー・モデルの世界標準スケールで、ヒコーキのハセガワが数年前からユニークな製品を作り続けている。同社のホーム・ページでは「農機・建機シリーズ」の名称で分類され、既発売の製品をひろってみると下記のようになる(機種名のあとのアルファベットと数字の型式は省略)。
    日立建機 油圧ショベル
      〃    ホイールローダ
      〃    コンバインド振動ローラ
    ヤンマー  トラクター
      〃    コンバイン
 これら主要なアイテムに、幾つかサブ・タイプが加わる。たとえばトラクターは四輪駆動が標準だが、後輪をキャタピラーに変えたものもある。こうしたヴァリエーションを加えると2021・12月現在、農機・建機が12種掲載されている。さらに、ミリタリー・モデルの兵士に相当するフィギュアも「建設作業員セット」(A)、(B)の2種が発売されている。

トラクターとコンバイン


(制作)
 今回ヤンマーのコンバインが完成したので、以前作った同じシリーズのヤンマー・トラクターとともに紹介したい。制作途中を写真に撮っていないので、完成写真のみの披露となる。2作を作った限りでいうと、「精密過ぎてつくりにくい箇所あり」となろうか。ヒコーキのハセガワが、ヒコーキと同じコンセプトで建機・農機を作らなくてもよかったのではと感じてしまう。エンジン関係、シャーシなど、下回り部を中心にもっと省略してよかったのでは。

 塗装せずともみられるように、パーツごとに色整形してあって、この点親切である。私の場合、目立たないところは整形色のままにした所もあるが、ボディの赤やメカ部の黒は缶スプレーや筆塗りで塗装した。塗ればやはり、プラの地色のままより実感が増す。その塗料のせいか、パーツの合わせピンがきつくなったところが何か所かあって、丸ヤスリで穴を広げたりした。



(再び1/35 というスケール)
  ハセガワがこの「農機・建機」シリーズの縮尺を、タミヤのM・Mシリーズと同じ1/35 にした意図は不明である。メカの細部まで作り込め、フィギュアの存在感も出しやすいなどのコンセプトによるものであろうか。
 私がとらえるのは、奇しくもこのシリーズが、モデラーに戦争と平和について考えさせる存在になっている点であった。コンバインを動かすキャタピラーは戦車の駆動方式と同じだし、トラクターの四輪独立懸架システムは、装甲車にも用いられる。同じ技術が、ある場合は民生に、ある場合は兵器に応用されるのである。

トラクター側面


トラクターと90式戦車(タミヤ)




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