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特集 レシプロ

サーブJ21A-3 ”赤のA”1945年 (エレール 1/72)

  by 寿



 レシプロ特集ってことで思わず作っちゃったのがこれ、スウェーデンの奇天烈もとい先進的未来志向形態戦闘機J21戦闘機であります。国防省からの要求に従ってサーブのウェンストリーム技師が一二日間で構想したスケッチは提出日が四月一日であったため「北欧空戦史」(学研M文庫刊)の著者中山雅弘氏より「エイプリルフールの戦闘機」などと謂われております。「工場創立以来の連続番号がついているところからみて、どうやら四月二日以降も真面目に取り組むつもりの機体であることがわかる」と続くところで更に笑ってしまいますが。



 一見ゲテモノに見えますが同氏が書いていらっしゃるようにオランダのデ・シェルデS.21やアメリカのバルティーXP54、日本の閃電やキ-98が在るので一概にウェンストリーム技師が素っ頓狂であった訳でも無いのです。しかしそれでもやっぱりヘンだよね。 



 類似機のデ・シェルデS.21の完成が1940年初頭、J21の初飛行が1943年六月だったからドイツがオランダに侵攻してなかったらデ・シェルデS.21もきっともっと早く飛行していてウェンストリーム技師もハラハラドキドキしなくても済んだかもしんない。完成するまで世間の風当たりはスンゴク強かったようです。途中でJ21と平行して別の「真っ当な」戦闘機も用意しろとか国防省に言われちゃってるし(マスタング似のJ23の事だ。後で中止になっちゃったけれど)。



 それでも大戦中に実用化したんだから大したものですよ。戦後はジェット化まで果たしちゃったしね。でも本格的ジェット戦闘機トゥンナンの実用化に目処がついてたからもう「期待の戦闘機」では無くなっていたみたい。(この辺りはWikipedia参照です)



 しかし今回の制作に当たって「北欧空戦史」を読み返しちゃったけれどやっぱりオモロイね。中山さんの軽妙な語り口はクセになります。未読の方は是非一度手に取ってみて下さい。お陰で近頃は本命J21就役までの「間に合わせ」として作られた木金混合機J22がもう気になって気になって。コイツのキットって何処か出してないもんですかね。



製作の詳細

(写真1) パーツはこんだけ。この時期のプラモはパーツ数が少なくって良いね。プロポーションは正確だしバリも無いしモールドも繊細。パーツの合いも良ければ歪みも無い。ちょびっと「おや?」と思うような箇所もあるけれどこの完成度の前には些細なことじゃ。流石エレール素晴らしいお仕事。凸彫りだからって敬遠している方々がいるけれど非常~に勿体ないと力説させていただきます。
(写真2) 今回は忘れずに機種へのオモリ投入に成功。マッチのミーティアの時は勢いに任せたお陰で機種分断の刑に処さねばならんかったでのう。ちなみにJ21はマーチンベイカーから特許売ってもらって射出座席を装備しているのだそうです、凄い。



(写真3) パーツ数少ないからコクピット塗ったら此処まで一瞬で出来ちゃう。正にこっちのもんだモデラーの思うがままって感じ。最近のキットって此処まで来るのがも~タイヘンでタイヘンで。

(写真4) ヒコーキの形になったらバリバリパテ削って下塗り開始。モールドが消えようと気にしな~い。後に塗りで再現すれば良いだけじゃ。一等大事なのはプロポーションの再現と表面の滑らかさなのであります。



(写真5) 下面色塗ったら上面も下地塗って中間色塗ってエアブラシで上塗りしたらこのたうり。まぁこの辺りはルーチンワークじゃね。実際の塗装よりも大事なのは色の選定だったりするし一旦方針が決まってしまえば後は早いのよ。前段取りが実作業よりも大事ってのは仕事と変わらんよね。

(写真6) だーっと大雑把にスミ入れした後は筆でちまちまと落としたい所だけ落としてゆきまする。消えたモールドもこのとき「たぶんこのヘンこの辺りにあるんだろうな」的なニュアンスで残してく。人間の目なんて誤魔化され易いもんさ!それっぽい影があると途中で途切れてても勝手に「連続してる」と勘違いしてくれる。ラッキー♪てな感じです。




(写真7) 今回の大目玉はデカール貼りでございました。もーなんちゅうか台紙に張り付いた糊が強力でいくら水に漬けてても取れないのよ。きっと百年待ってもこのままに違いない。いくら気の長いわたしでも寿命が尽きてしまいますがな。ちう訳でお湯で煮込む事にしました。飲み頃にまで湧かしたお湯を魔法瓶に入れて作業台にて待機。

(写真8) 適当な容器にちょぼちょぼと使う分だけ入れて煮だしてゆきます。まぁ後は普通のデカールと同じ要領じゃね。これでデカールが死滅してて木っ端微塵になったりニスが昇天してふにゃふにゃのベロベロになったりしたら泣くけれど頑丈なヤツで良かった良かった。


(写真9) 真鍮線と真鍮パイプとを使ってプロペラ大回転を目論んでみました。息を吹きかけるとこのたうり。

(写真10) デカール貼ってトップコート吹いたらマスキングを剥がすんだけれどデザインナイフで剥がす境界線を軽くなぞってあげれば「塗った塗料と一緒にベリっ」てな事を防げて安心です。あくまで軽~くってところがミソ。強くなぞり過ぎたらキャノピー傷つけちゃうしね。



(写真11) そんなこんなで完成しましたエレールのJ21。寡聞にして知らないけれどこの機体って他のメーカーから出ているのかなぁ~。スペシャルホビー辺りが出してそうな気もするけれど。或いはトランペッターとか。とか思ってネットを徘徊してみたらありましたがなヨンパチが。吃驚するようなお値段だったけれど。しかもジェット化されたR型まであったし。
 まぁわたくし寿と致しましてはこのエレール製で充分でございます。素のままでも良しコテコテにおひねり回しても良しと素材が良いので後は料理人の腕次第でございますですよ。もっとも誰かタダでくれるって言うのなら拒まないのですけれど!



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