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  特集 35

P-35A/J-9 (ホビークラフト1/48)

by  コルディッツ

 私の高校生時代に「航空情報」に連載されていた北欧空戦史ー 題名は「森と湖と空」だったかとーに夢中になりました。
 その結果、ヒコーキ博物館巡礼に行き着いてしまった訳ですが、 当時の北欧4ヶ国中で、辛うじて中立を維持したスウェーデンの、 やや滑稽感の漂う空軍拡張策のドタバタに惹かれました。
 とりわけ米陸軍航空隊が初採用した、近代的な引込脚の金属製単葉戦闘機セバスキーP-35の輸出型EP-1-06の、スウェーデン導入経過は気の毒過ぎました。スウェーデンが120機発注、半分の60機を受領したところで、第二次世界大戦開始によりアメリカが禁輸処置にします。慌てたスウェーデンはイタリアから複葉戦闘機フィアットCR42を獲得します。こうしてP-35A/EP-1-06のスウェーデン戦闘機番号はJ-9なのに、CR42の戦闘機番号はJ-11となる逆転現象が生じました。
 この様な不運な機体は私の好みですが、当然ながらプラモデルにも恵まれません。私の記憶では最初のキットはホビークラフトの1/48でしたが、プラモデルにも不運が波及したようで、これも私の記憶ですが、ハセガワが1/48キットの大躍進を開始した時期と同期していたかと。そのためホビークラフトキットを購入したのに、ハセガワと比べて見劣りしてので、長~く積みプラにしていました。



 久々開封してみたら、パーツは揃っていても、デカールが行方不明でした。F8(第8部隊)の指定塗装で、上側面はタンの地色にグリーンの斑点、下面はグレーとイタリア的迷彩だったので、デカール紛失は痛かったです。そこでスウェーデン製造の「フライング カラーズ アエロデカールズ」を購入、そのJ-9の指定塗装もF8ですが、上側面はオリーブグリーン地色にジンクロメイトの編み目、下面は白、ライトブルーグレー、黒の三分割と全然違います。当時のスウェーデン空軍は同じ部隊でも、塗装は様々でOKのようです。そこで安心して塗装を進めましたが、スウェーデン機の緑色に拘りがあったのと、ジンクロ編み目が上手く進まないので、スペシャルホビー1/72のF8の塗装例を参考に替えて、独自に進めてみました。その結果、「私の思う緑色」に拘り過ぎて、まるで日本軍機の濃緑色になってしまい、深く反省しています。



 写真は改装前のスウェーデン空軍博物館のJ-9。手前の風防周囲が写っているのは、P-35にインスパイアされてイタリアで開発のRe2000(スウェーデンではJ-20)です。(2002年7月撮影)



 ホビークラフトのキットは、外見はまあまあですが、主脚柱の差し込み口の口径が合わない等、基本的な所に想定外の落とし穴が多くて、振り回されました…



 P-35A/J-9の右胴体操縦席後方に窓付きのハッチがあり、胴体内にカメラやシートが置かれたりしますが、キットは空洞でした。
 F8はストックホルム防空に従事していたので、戦闘機専用と考え、胴体内に床代りのプラ板を敷く対応で済ませました。スペシャルホビーでは、シートを設置するようになっています。
 餡のないモナカの如きホビークラフトキットでしたが、作ってみたら、仮組みで手抜きしなければそれなりの形になり、これで良いと思いました。実は何箱かのホビークラフト(とこれを継承したアカデミー)のキットを積みプラにしていましたが、これで成仏への道が開けました!



 窓を覗くと、カメラが見えます。(2014年6月撮影)
 アメリカが禁輸で巻き上げた60機のEP-106は、P-35Aとして陸軍航空隊機となり、うち48機がフィリピンに配属されました。日米開戦と同時に台南航空隊の攻撃を受けて数日で壊滅します。一説ではP-35Aのマニュアルはスウェーデン語のままで、現場に混乱を招いたようです。



 アメリカ空軍博物館のP-35A。両翼に装備した7.62mm機関銃が見えません。(2005年12月撮影)
 P-35の固定武装は機首に12.7mm機関銃と7.62mm機関銃を各1挺、P-35A/J-9は機首に12.7mm機関銃2挺、主翼に7.62mm機関銃2挺と増強しています。エンジンもP&WR-1830-9ツインワスプ(850hp) からP&WR-1830-45ツインワスプ(1,050hp)に強化しています。
 残存機は現在は3機で、スウェーデン空軍博物館とアメリカ空軍博物館に展示され、1機のJ-9が飛行可能状態に向けてアメリカでレストア中とのことです。




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Vol.168 2022 August.     www.webmodelers.com /Office webmodelers all right reserved /
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