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特集 ヘリ

 Westland Sea King AEW2
(Hasegawa 1/48 Sikorsky SH-3H 改造)

by 大山 盛幹



 Westland Sea King AEW2は2009年にHasegawaよりキットが発売されていますが、今回の作例はHasegawaのキット発売前に製作にかかったものです。以前、大阪開催のJMC展示会で、Hasegawaの企画開発部T係長に「Sea Kingのイギリス型の発売を考えて頂けませんか?」とお願いしたところ、「自分自身としては、是非出したいと思っているけれど、企画が通らないだろうから難しい。」と答えられたことが思い出されます。だったら、既に発売されていた米海軍のSH-3Hから改造するしかないとなりました。



 しかし、よくあることでSea King AEW2へ改造製作中に、企画が通ったのでしょうSea King AEW2のキットが発売され、以降続々Westland Sea Kingのシリーズが発売されてしまいました。このキットを製作すると、後述の改造をすることなく、誰でも堂々としたSea King AEW2を完成することができます(ただし、早期警戒用レドームが膨らんだ状態で再現されていますので注意が必要です)。



 HSS-1の後継対潜ヘリコプターとしてSikorsky SH-3 Sea Kingは1957年にHSS-2として米海軍に採用され、イギリスでもWessexHAS1、HAS3の後継機としてWestland社がライセンス生産するSea Kingを採用しました。対潜型としては、米海軍のSH-3Dとほぼ同型のHAS1、テイルローターブレードが6枚になったHAS2、HAS2の対潜機器を更新したHAS5、HAS6があり、救難型としてHAR3、輸送型としてHC4が、さらに、HAS5から対潜機器をはずして汎用型や輸送型にしたHU5、HC5などの派生型、そしてCommandoをはじめとする各種輸出型もありました。



 1978年にイギリス最後の固定翼搭載空母Ark Royal(Ⅲ)が退役した後は、Sea Harrierを搭載するHermesと Invincible級空母しかなく、Ark Royal(Ⅲ)に搭載していたGannet AEW3のような早期警戒機はこれらの空母には搭載されていませんでした。そのような状況の中、1982年にフォークランド紛争が発生し、派遣されたイギリス機動部隊の中核となるHermes、Invincibleの2空母には早期警戒機の搭載はなかったため第二次世界大戦時のようにレーダーピケット艦を配置することに迫られました。しかし、レーダーピケット艦の対空レーダーでは探知距離が限られ、水平線以遠を監視できないため、Sheffieldをはじめとして数隻の艦船が沈没等被害を受ける結果となりました。  Hermesと Invincible級空母は船型が小さく且つ固定翼艦載機の発艦がスキージャンプ方式でカタパルトがないことから米海軍のようにE-2Cの搭載は不可能でした。これを補うためにヘリコプターの早期警戒機を開発するという案が出され、急ぎSea KingAEW2が開発されましたが、フォークランド紛争には間に合いませんでした。しかしながら、イギリス海軍は各空母にSea King AEW2搭載を決めました。その後、Sea KingAEW2の早期警戒システムを更新したSea King ASaC7へ、そしてSea KingASaC7の早期警戒システムの能力向上型をMarlin HAS2に移植したMarlin AEW2へと発展していきます。



 さて、先述の通り、今回はSH-3HからSea King AEW2へ改造したため、その改造部分は次の通りです。
結局、SH-3HとSea King AEW2との差異の部分を改造することになります。
① 胴体右舷に早期警戒用サーチウォーターレーダーのレドームを設置します。
② 左舷後部胴体にストレーキを設置します。
③ テイルローターを5翅から6翅に変更します。
④ 水平安定板をSH-3Dのそれと同様に短縮し、補助支柱を撤去します。
⑤ スポンソンフロートをSH-3Dのそれと同様に短縮します。
⑥ 後部胴体背面にレドームを設置します。
⑦ エンジンインテイク前のメッシュのモールドを埋めます。
⑧ 胴体下面の懸吊式ソナー口を塞ぎます。
⑨ 機首に2ヵ所、左右胴体に各2ヵ所にセンサーパネルを設置します。
⑩ 右舷前方の窓を塞ぎます。



 これらの改造部分のパーツは、自作パーツに加えてFlightpathのWestland Sea King AEW2改造パーツFP-48-65を使用しました。これには、フロート、背面レドーム、早期警戒レドームがレジンパーツで用意され、細部パーツとしてエッチングパーツが含まれていました。但し、背面レドームとスポンソンフロートはCutting Edge ModelworksのCEC48038の方が自分のイメージに近かったためこちらを使用しています。
さらに、Flightpathのパーツや自作パーツで次のディテールアップを行いました。
① 胴体左舷のドアを開状態にしました。
② ドアを開状態にしたため、ステップ、手摺をつけるとことと併せてドア付近内部の見える範囲を実機らしく工作しました(ステップはFlightpathパーツを使用)。具体的には補助席、消火器の設置、天井部に各種配線を取り付けました。
③ プラ板、プラパイプで自作したサンドフィルターで、キットパーツのインテイクカバーを置き換えました(サンドフィルターは、厚紙でモックアップを何個か作って大きさを調整しました
(後日AirwavesよりそのものズバリのレジンパーツAES48089が発売されました)。
④ モールドされているメッシュ部分を、金属メッシュに置き換えました。
⑤ メインローターを折りたたんだ状態にし、ローターブレード固定索を取り付けました。
⑥ 水平安定板に放電索を取り付けました。
⑦ 排気管カバーを取り付けました(黄色のカバーで単色の機体のよいアクセントになります)。



 塗装は、1994年Culdrose基地の早期警戒飛行隊 849飛行隊所属のD-Day記念塗装機です。全面ミディアムシーグレー(BS381C:637)で後部胴体に白黒のインベイションストライプが塗装されています。
デカールは、Model AllianceのMA-48103を使用しました。WWP Wings & Wheels Publications「Westland Sea King in detail(新版2006年)」の25頁に写真があります。



 今回、使用した資料の主なものは次の通りです。
Westland Sea Kingの資料はLinewrights「Aeroguide №10 Westland Sea King HAR Mk3(1985年)」、文林堂「世界の傑作機№15 シコルスキー SH-3 シーキング(1989年)」、WWP Wings & Wheels Publications「Westland Sea King in detail(旧版1999年)(新版2006年)」(AEW2の写真はそれぞれ見開き2頁ながら、他のタイプのWestland 製Sea Kingの参考になる細部写真が多数掲載されています)、Warpaint Books Limited「Warpaint №95 Westland Sea King(2013年)」です。
 Sikorsky SH-3の資料としてはSquadron/signal 「In Action №150 H-3 Sea King(1995年)」、モデルアート社「モデルアート11月号臨時増刊 スーパーディテール・シリーズ№3 HSS-2(1985年)」を使用しました、



 しかし、早期警戒型というマイナーなタイプのため、どの書籍にも写真掲載が数枚しかなく、やはり大きな助けとなったのはネットです。今回の製作にあたってはWestland Sea Kingの写真が全部で2,000余枚、その内、早期警戒型の写真は500余枚も集めることができ、世界中のモデラー、マニアの方が強い味方となりました。






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