Home  > McDonnell Douglas F-4J “Phantom II”(ESCI 1/48)> 特集今は無きメーカーのプラモデル>2022年12月号

特集 今は無きメーカーのプラモデル

McDonnell Douglas F-4J “Phantom II”(ESCI 1/48)

by Kiyoshi Iwama(ひやめし会)


F-4B/J NAVY PHANTOM (1/48) ESCI Box Artより

 今月号の特集「今は無きメーカのプラモデル」に合わせ、今は無きESCIのF-4J “Phantom II” (1/48) を製作してみました。F-4ファントムと言えばかっての西側を代表する戦闘機で、バリエーションも豊富で多くの国で採用されました。そのためプラモの世界でも各メーカからいろんなスケールのキットが販売されています。そして今だに新製品がリリースされている状況で、その種類の多さはプラモの世界でもトップクラスではないでしょうか。

ESCIのキットは1980年頃にリリースされた古いキットですが、パネルラインが全面凹彫りでした。1981年にリリースされたモノグラムの1/48 F-4J、そしてその翌年の1982年にリリースされた当時の決定版とも言えるハセガワのF-4Jが凸のパネルラインであったことを考えると時代を先取りしたキットだったのかもしれません。

さてキットの方ですが、B/J型コンバーチブルキットと謳われており、F-4B用にVF-111 “Sundowners”、F-4J用にVF-74 “Bedevilers”のデカールが付属していました。しかしパーツの方は、ノーズレドーム下面のセンサーとエンジンノズルはB,J型の二種類が入っていましたが、主翼、水平尾翼、主車輪はJ型用のものしかなく、結局J型を作るしかないキットでした。この時はボックスアートにあるサンダウナーズのF-4Bを製作したかったこともあり、残念ながらそのままお蔵入りとなり40年ほどの時を経た今、やっと形にすることができました。出来上がったファントムはまずまずと言えそうですが、いろいろ課題もありました。この点は製作過程の中で紹介していきます。

実機紹介

 あまりに有名なファントムですので、ここではJ型について簡単に解説しておきます。
 B型の発達型として開発されたのがJ型ですが、実はその前にF-4G(米空軍のワイルドウィーゼル機とは別物)の呼称を持つF-4Bの発展型がありました。この機体はB型を改造して12機が製造され、部隊にも配備されてヴェトナムで実戦を経験しました。B型からの改良点は自動着艦能力を付与し全天候での運用能力を高めたことです。しかしながら米海軍は更に能力を向上したJ型の開発にも着手していたこともあり、G型は量産に入ることなくJ型に置き換えられることになりました。
 J型は、外形的にもB型とはいくつか異なる点があります。B型で装備していた機首下の赤外線センサーが外され、AN/APR-32 RHAW 脅威探知アンテナが取り付けられました。またエンジンを79-GE-8から出力の大きなJ79-GE-10に換装したためノズルが長くなっています。主翼では内翼前縁フラップが廃止され、水平尾翼には前縁スロットが追加されました。これは海軍の離着艦性能向上要求に基づく変更で、この組み合わせで高迎え角での失速性能が改善されています。また着艦時の沈下率向上要求に対応するため、主脚柱の強度向上が図られ、主車輪を空軍のファントムと同じ低圧タイヤに変更しています。このためタイヤの幅が約10㎝厚くなったため、脚収納部の主翼上面が盛り上がりこの部分の翼厚が増しています。さらに運用的には対地攻撃能力を増強するため、ルックダウン能力が付加されたAN/APG-59パルスドップラーレーダを核とする、AWG-10 火器管制システムを搭載しました。これで機首部の重量が増えたため、No.7燃料タンクが後部胴体に増設されています。
 なおF-4Jの初飛行は1966年5月27日で、同年10月1日から部隊への配備が始まりました。総生産機数は522機で、1972年12月に生産を終えています。


F-4J “Phantom II” ESCI (1/48)

製作

 キットのデカールも綺麗な印刷ですが随分古いこともあり、今回は手持ちのマイクロスケールのデカールから、以前から作ってみたかったVF-92 “Silverkings”のものを選びました。またコクピットにはEduardのハセガワのキット用のエッチングパーツを使ってみました。
まずはフィットチェックから始めます。進めていくといくつか問題点が見えてきました。機首レドームが真円であること、胴体が少し幅広で、キャノピーを閉めると胴体のラインとフィットしない点などいろいろです。太めの胴体はどうしようもなさそうです。では各部の製作過程のポイントについて順を追って紹介していきます。

1. コクピット
 まずコクピットの組み立てです。キットのコクピットは主計器盤もサイドコンソールもデカール仕上げで、前後席用の計器盤もフラットな板がついているだけです。エッチングパーツを適用できるように後席用の計器盤はハセガワのキットのパーツに倣ってプラ板で作り直し、その後エッチングの計器盤を貼り付けました。(写真1)が前席用計器盤、(写真2)が後席用計器盤です。そしてコクピットのサイドコンソールにエッチングの計器盤を貼り付け、前後席の計器盤及びジョイスティックを取り付けた状態で胴体左側パーツに仮組してみたのが(写真3)です。なお後席に見える火器管制計算機はキットには付いてないため、ハセガワのキットから流用しました。

(写真1) 前席用計器盤

(写真2) 後席用計器盤



(写真3) コクピット



2. 胴体部の組み立てと改修
 胴体は左右パーツと前胴部下面の3つのパーツから構成されます。これらを貼り合わせる前にコクピット前後席のグレアシールド部を艶消しの黒で塗っておきます。そして先に述べたコクピットを組み込み、胴体の左右パーツそして前胴部下面を接着し、接合部を整形しました。次に機首レドームを取り付けますが、念のためレドームの中に若干の錘を入れました。その後レドーム下面にAN/APR-32 RHAW アンテナを取り付けますが、寸法足らずのためプラ板で作り直しました。また機首側面に取り付ける冷却空気取り込み用のエアースクープですが、キットの部品は形状が間違っているためハセガワのキットの部品を使って作り直しました。(写真4)

(写真4) 機首側面のエアースクープ


 キットのパーツとハセガワのパーツを使ったエアースクープを比較したものが(写真5)です。

(写真5) 機首側面のエアースクープの形状比較


 最後に、レドームを真円から上面を若干フラットにし、実機に近づけるべく修正してみました。(写真6)が修正した機首部です。

(写真6) 修正後の機首部



3. エアーインテイクの改修と取り付け
 ESCIのキットのパーツとハセガワのキットのパーツを比較したのが(写真7)です。写真で見て分かるように、キットのインテイクベーンのダクト内部に続く部分は内側がえぐれています。これでは見た目もおかしいので03㎜のプラ板を貼って平らに修正しました。インテイクベーンの形状もハセガワの方が実機に近いので、ハセガワのパーツからこの部分を切り取って使用することにしました。

 (写真7) インテイクパーツのESCIとハセガワの比較


 次にインテイクダクト部の改修です。最近のF-4のキットではインテイクダクトとエンジン圧縮機フロントファンまでがパーツ化されているものが散見されますが、この時代のキットはそこまでモデル化されているものはほとんどありませんでした。(記憶に残っているのは1/32のレベルのキットくらいしです。)今回はどっちみちインテイクの奥まではよく見えないだろうと思い、インテイクの奥にエンジン圧縮機ファンの写真を貼ってごまかすことを考えました。ネットにアップされているインテイク内部を撮った写真を探し、望遠で撮影されたと思われるものを選びました。それをキットのインテイクに合わせてリサイズし、反転させて作った左右のインテイクの写真を並べてプリントしたのが(写真8)です。奥の方に圧縮機ファンの一部が覗いて見えます。 

(写真8)F-4のエアーインテイク奥の写真



 キットのインテイクには内部に段差があるので滑らかにするためプラ板を加工してダクトを組み込みました(写真9)。 さらにポリパテを貼って整形したのが(写真10)です。この状態で内面をインシグニアホワイトで、インテイクリップを金属色で塗り、エンジンファンの写真を貼ったプラ板と自作のピトー管を取り付けて出来上りです。完成したインテイクダクトが(写真11)です。

 (写真9) プラ板で作ったインテイクダクト
  (写真10) 整形後のインテイクダクト
 

(写真11) 組み上がったインテイクダクト



4. インテイクと主翼の組み込み
 まずインテイクを胴体に取り付けます。(写真11)のインテイクダクトとダクト内壁を接着し、胴体に取り付け、接合部を整形します。主翼取り付け後の状態ですが(写真12)のようになります。

(写真12) インテイク取り付け後の状態


 次に主翼ですが、主翼はハセガワのキット同様、下面が内翼までの左右一体、上面が左右別々でそれぞれ外翼は上下面一体の形でモールドされています。この翼の上下を一体化し胴体に組み込むわけですが、上面のフィット具合は少しきつい目のため、すり合わせて組み込みました。しかしここで別の問題が発覚。下面に大きな隙間ができてしまいました。(写真13)
しかたなく、プラ板を切って隙間を埋め整形しました。(写真14)

  (写真13) 主翼下面に生じた隙間
    (写真14) 隙間の修正

 これで胴体とインテイク、及び主翼の結合が終わり、機体全体が形を成してきました。(写真15)この写真にはありませんが、この後主脚柱の真上にある主翼上面の膨らみをプラ板で作って取り付けました。(写真19)で分かると思います。

(写真15) 主翼とインテイクを取り付けた状態


 ESCIのキットのエンジンノズルは少し貧弱ですのでハセガワのノズルを組み込むことにしました。ハセガワのファントムのノズルはアフターバーナーまでモデル化されているため、キットのノズル取り付け部に穴を開ける必要があります。(写真16)がアフターバーナーの部品が入り込めるように胴体部のお尻に開口した状態です。

(写真16) 胴体尾部に開口したエンジンノズル取り付け部


 これで胴体回りの工作は終了です。3項で述べたインテイクの奥に見えるエンジン圧縮機のフロントファンですが、(写真17)のような状態となります。写真を貼っただけですがそれなりに見えないでしょうか?

(写真17) エアーインテイクの奥は見えますか?


5. 塗装とデカール貼り付け
 機体色は米海軍の標準塗装の上面ライトガルグレイ(FS16440)、下面インシグニアホワイト(FS17875)となります。F-4の場合はフラップ上面とラダーはインシグニアホワイトになりますが、ラダーの色は飛行隊によってはライトガルグレイの場合もあります。今回製作したVF-92の機体は、垂直尾翼と主翼翼端がイエロー(FS13538)の派手な塗装です。またレドームは艶消しの白、機首側面のエアースクープと主翼端先端が黒に塗られています。以上の様に塗り分けていくわけですが、最初はエンジン排気口周辺のメタル部分から塗りだしました。(写真18)
この部分は排気ブラストがまともに当たる部分は焼鉄色、その上面部は黒鉄色を主体に塗装し、ノズル取り付け部分はスーパーステンレス、後端のドラッグシュートの収納カバーは銀で塗装しています。

(写真18) 排気口周辺のメタル塗装


 その後順次マスキングを施しながら、インシグニアホワイト、ライトガルグレイ、イエロー、黒といった順番に塗装していきました。(写真19)
機体上面、(写真20)が機体下面です。

(写真19) 塗装後の機体上面


(写真20) 塗装後の機体下面



 機体以外にもいろいろありますが、次項で紹介します。
 塗装が終わればデカールを貼ります。マイクロスケールのデカールにはそれほど問題はなかったのですが、ウォークウェイのデカールが付いてないので、ハセガワのキットのデカールを使用したのですが、古いためバリバリ割れてしまいました。時間をかけて修正したのですが、穴が開いたところもあり、塗料でタッチアップして済ませましたが、最初から塗装にすべきでした。(写真21)がデカールを貼り終えた機体全景です。

(写真21) デカールを貼り終えた機体全景



6. その他部品
 この項では機体以外のいくつかの部品を紹介します。まず水平尾翼です。ESCIのキットの水平尾翼は、翼のキャンバーが少ないように思いましたがそのまま使用しました。塗装してデカール貼ったのが(写真22)です。

(写真22) 水平尾翼


 次はエンジンノズルです。ハセガワのキットの流用ですが、ハセガワのパーツにはノズル内側が円筒状になっているだけです。アイリスの内側を表現するため、プラ板を3種類短冊状に切りだし、表側のアイリスに沿って貼り付けていきました。
その後金属色を塗装して内面に薄く希釈した艶消し黒を吹き付けて完成です。(写真23)
また(写真24)がエッチングパーツに置き換えた前席のオプティカルサイトです。

(写真23) エンジンノズル
 
    (写真24) オプティカルサイト

 その他にも写真は無いのですが、キットの前脚扉には前照灯とインデックスライトが無いので追加しています。また兵装類ですが、胴下と主翼下の増槽はキットのものを使用しましたが、AIM-9BとAIM-7Eはハセガワのウェポンセットのものを使用しています。さらに、パイロットフィギュアを乗せることにし、ハセガワのキットからフィギュアとエジェクションシートを流用しました。しかしコクピットの底が浅く、シートの底を削ったり、フィギュアの脚を切断してやっとコクピットに収めることができました。(写真25)がシートに座ったフィギュアです。

(写真25) シートに座ったパイロットフィギュア


7. 最終組み立てと仕上げ
 塗装とデカールを貼り終えた機体をスーパークリア(半つや:つや消し=6:4程度)でオーバーコートし、適度に墨入れと汚しを施しました。また主翼端の航法灯は分かり難いですが、一応クリアレッド(左舷)とクリアブルー(右舷)で塗っています。最後に水平尾翼や兵装類を取り付けて完成です。キャノピーは閉じると胴体と合わないため開状態で固定しましたがヒンジ部とアクチュエータが短く少々中途半端な位置で固定することになりました。(写真26~30)に完成機の写真を示します。

(写真26)  完成したF-4J “Phantom II”


(写真27)  完成したF-4J “Phantom II”


(写真28)  完成したF-4J “Phantom II”


(写真29)  完成したF-4J “Phantom II”


(写真30)  完成したF-4J “Phantom II”


 今は無きESCIのF-4J、ようやく完成しました。製作過程でいろいろ問題が出ましたが、これ等をなんとか克服して完成につなげるのもモデリング道の楽しみの一つかもしれません。


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