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特集 ジェット

BAeニムロッド MR.2P (エアフィックス 1/72) 

  by 寿



 事故で落ちたヒコーキは数多あれど、デ・ハビランド・コメットほどに航空機の設計構造史へ示唆をもたらした機体はそう多くないのではないでしょうか。特に航空機構造材への応力集中と金属疲労とが、想定外の短時間に致命的な破壊をもたらすというのは、当時の旅客機機設計に大きな影響を与えたと記されています。



 事故の反省から大幅に機体構造を見直して、「これでもう大丈夫」的なところまで造り上げた四代目コメット4ですが会社の信頼性回復までは及ばず、生産機は軍部に引き取られる形で少数が作られたに過ぎなかったとかなんとか。おまけにデ・ハビランド社は経営不振の末、ホーカーシドレー(BAeの前身)に吸収されてしまいます。一度失った信用を取り戻すのは生半可ではないということなんでしょうねぇ。



 でもそんなコメットさんを魔改造したニムロッドは軍用機として40年以上活躍。近年惜しまれつつ退役しております。まだ性能的には全然使えるけれど、機体寿命が尽きたとかなんとか。どうもめちゃ信頼性の高い機体であったようです。古参のイギリス機にありがちな「信者」の数も少なくないようで、電子機器はもちろんエンジンから胴体から装備品まで一切合切「改造」してMRA.4なんてほぼ新造機みたいな改造ニムロッドを作っちゃったりする始末。旅客機だったコメットさんを魔改造して作った機体を、更に魔改造する訳ですな。ダブル役満であります。



 でも新規のエンジンと新設計の胴体がアンマッチになった上、試験している内に「機体強度がマジヤバい」とかいう話が出たりとかで、開発費がバンバン上がっちゃったようです。



あのー、それっていっそのこと新造機にした方がお安くないですか?最初は21機のMR.2全部改造する予定が「予算が無い」ってコトで9機に減らされたらしいし。



財政面での圧迫と、それに伴う老朽化への未対応が祟ってついに2006年墜落事故起こしてます。それでもメゲず改造機の試験を繰り返していたようですが、予算削減の煽りを喰らって遂に計画は中止。おかげで約40億ポンドが無駄になったとかなんとか。やはりこれは「英国面」、ブリティッシュ・サイドなんでございましょうか。(ウィキペディア参照)



 しかし見方を変えれば、実に熱心なファンが付いてくれたのうニムロッド。ヒコーキ冥利に尽きるんでないかい?



 本来の用途では無かったとはいえ、ある意味これも成功した機体の一つと言えるのかもしれません。初代コメットの窮状から鑑みれば実に複雑な生涯であります。設計者はどんな心境だったのでしょうか。



 ちなみにニムロッドの代替機はアメリカのボーイングP-8になるようです。日本のカワサキP-1と競り勝った機体ですね。日本はただの当て馬だったような気もするけれど、まぁそのヘンはお互い様じゃね。そして貧乏な英空軍は本体よりも高価なオプションシステム、UAVを果たしてどう扱うつもりなのか。オプション無しのP-8はうま味が無いような気がするし、なんだか先行き怪しいなぁ~

 まぁそれを含めて「流石えげれす」ってところなのかもしれませんけれどもね。

製作の詳細

(写真1)ナナニイとはいえ、ちょーデカいニムロッド。前輪式なので当然尻餅防止のオモリも要るし、それも考慮した強度の確保が必須です。なのでフロントギアは一部真ちゅう線で置き換え。

(写真2)まぁこんな感じでダンパーの伸縮部分を基本に真ちゅう線にしてパイプを被せて、リンク部分はプラ材のままという姑息な仕様。一番ヤバそうな箇所を補強したからコレでかなりマシなんじゃありませんかね?うん、そうだ。大丈夫に違いない・・・・たぶん


(写真3) 取り付けはこんな感じで。脚庫の中なんて誰も見ないからこれでヨロシ。大切なのはリアリズムよりも強度の確保なのであります。

(写真4) 内部を黒で塗ったらオモリを投入。デカいボルトとナットを入るだけ入れ込んでみる。うーん、コレくらい入っていればいいかなぁ~もうちょっと追加した方がイイ?なんせコイツはめちゃテールヘビーだからなぁ~


(写真5) 接着剤が乾くのを待つ間、水平尾翼を作っとく。ちなみにコレは以前作った同スケールのゼロ戦との比較です。尾翼だけでゼロ戦の主翼よりもデカい。ふざけるな!
 流石、元旅客機だっただけのことはあるよ。

(写真6) 基本ナナニイ旅客機サイズのニムロッド。どー考えても完成後は邪魔になること請け合いであります。なので、またしてもネオジム磁石を使って分離合体を目論んでみました。まずは水平尾翼に埋め込んでみて具合を見てみる。うん、悪くなさそうじゃね。


(写真7) :で、またしてもやってしまいました放置プレイ。前の写真からこの写真まで七年の歳月が流れております。ちなみにフロントギアの加工から数えると一三年じゃ。お手つきばっかり増やしてどーする、大概にせえよとか言われそうだ。
 作り始めた時には一年くらいで完成させる予定だったんだけれどもなぁ。要はそれだけニムロッドが手強いというコトなのであります。予定は未定で決定では無いってコトでご了承ください。
 それはそれとして、メインイベントは胴体と主翼の方じゃのう。さ~て、どうしてくれましょうかねぇ。

(写真8) 胴体の方は取り敢えず後部ドアの辺りからぶった切って、脱着可とすることにしました。ネオジム磁石は念の為三つずつ、接合面と合わせて計六個の大盤振る舞いであります。



(写真9) 主翼はいろいろと考えた挙げ句、左右一体の主翼をぶった切って真ちゅうパイプで補強。尚且つ磁石での接合を目論んでみたのあります。でもね・・・・

(写真10) 大失敗の巻であります。磁石の張力と共に、すり合わせた後にハメ込む誘導用の真ちゅう線でガイドを着ければ何とかなるかなぁ~なんて思っていたんだけれど、想像以上に曲面へのフィッティングが難物。どーしてもスキマが開いちゃうのであります。えぇ~どーするよコレ?
 しょーがないので主翼の分離合体は断念。瞬間様を流し込んで、埋め込んだ磁石やパイプはそのままはめ殺しにすることにしました。嗚呼、なんたるちあ。
 せめてパイプの埋め込みで機体強度は上がったのだと、転ばぬ先の杖なのだとそう思いたい・・・・


(写真11) 色々と紆余曲折はあったけれど、それでも何とか完成であります。主翼の件が無かったら昨年度の年末には完成していたのになぁ。
 何時もなら「完成品は正義」と宣いたいところなのですが、流石に今回は釈然としない。失敗は成功の母なのかもしんないけれど、シクったコトを軽く流せるほどわたしは大人では無いのですよ。この屈辱は必ず雪ぐと心に誓うものなのであります。幸いだか何だか知らないけれどニムロッドはもう一匹手付かずのヤツが控えているしね。
 リベンジの舞台は既に用意周到、準備万端。
「次はぐうの音も出ないほどの仕上がりにしてくれる!」
 拳を固め夕陽に吠えるのであります。まぁ、いつかその内にね。

(写真12) おまけ。ネオジム磁石ばらばらの術!ホントは主翼も脱着可にする予定だったんだけれどもなぁ・・・・まぁコレでも幾分コンパクトに出来るから、まずは良しとすべきなのかもしれません。ぬおぉぉ、悔しいぃ~



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