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特集 西欧

モランソルニェ戦闘機の系譜
(AZモデル&エレール&ハセガワ 1/72)

  by 翔バナイカイ 栗人@ケータイ



 西欧特集のお題の下、西欧の雄の一角フランスを選択。そして同国航空戦力の一角を第一次大戦から第二次大戦まで担い続けたモランソルニェ戦闘機の系譜を取り上げてみました。

1.モランソルニェ Type L


 第一次世界大戦初期に使われたパラソル翼単発機。特にここに挙げたものは、当時の名操縦士であるローラン・ギャロスが「操縦士が操縦しながら機体正面に向けた固定武装で射撃する」というコンセプトを世界で最初に実現した機体で、「戦闘機」の始祖にあたります。1915年4月にギャロスは本機で3機撃墜を記録。しかし後日、この機でドイツ戦線後方に不時着し捕獲され、これがドイツ軍側でプロペラ同調装置つき機銃を備えた戦闘機の登場を促し「フォッカーの懲罰」を招き、その後も敵味方双方で技術エスカレーションが繰り返えされることになっていきました。 

機体をぐるりと一周


キットはAZモデルによる簡易インジェクションキットで、ギャロス機用のデカールもついています。「第一次世界大戦勃発100周年」の記念(?)として2014年に製作したものです。製作では簡易キットの常で、各部支柱の強度確保や取付け補強に一苦労。結局主翼周りの各支柱は、真鍮パイプを加工して作り直しました。 


またキットではコクピット後上方に被さる部分の主翼を大きく切り欠いた構成になっています(Type Lの大部分はキットのとおり)。しかしWINDSOCK等の資料本にあるギャロス機の記録写真ではこの切り欠きは見られません。そこで主翼の切り欠き部分はプラ板で埋め戻して整形しました。こうするとパラソル翼のため後上方の視界がほぼ皆無になり不安を感じますが、ギャロスは「狩人たる自分よりも上にいる敵はいないはず」と割り切っていたのかもしれません。 


機首正面のアップ。カウリング前面のモランソルニェのロゴマークが誇らしげ。
         リギングには「すが糸」(日本人形の髪の毛に使う絹細糸)を使っています。



機首機銃付近のアップ。本機の機銃にはプロペラ同調装置はなく、プロペラブレードに
         当たるタイミングで発射された弾丸はペラブレード裏面に取り付けた跳弾板で弾くしくみ。
         ホチキス機銃とペラブレードの跳弾板はスクラッチしました。



2.モランソルニェ MS225



第一次大戦後、複葉機から単葉機への近代化過渡期の戦闘機。航空機近代化が始まる時に、始祖時代と同じパラソル翼構成に戻っているのが面白いところです。 

機体をぐるりと一周


キットはエレールの古いキットで初版発売は1967年。古いキットですが、リギングがし易いようなパーツ構成になっており、この点は欧米キットの「伝統」でしょうか。製作したのは1980年の黒箱版です。製作当時(2014年)には本機のまとまった資料はほとんどなく、「その昔、父親がこれに乗っていた」等でプライベート写真を公開しているサイト等から断片的な細部写真を見つけ、繋ぎあわせて追加工作の参考に利用しました。 


 組み立ては、胴体と主翼を個別に製作、塗装、マーキングまで済ませてから最終組み立て、という手順で進めました。各パーツの整形、シャープ化を行いつつ、嵌め合わせに注意してゆけば製作はスムースでありました。塗装は短いストロークの筆塗りで行っています(これが最近の私のスタンダード)。そしてマーキングにキット付属のデカールを使いましたが、ここでトラブル発生!元々硬いデカールだったのでデカール軟化剤や強力デカールのりまで使って貼ったものの、一晩経ったら全部勝手に丸まって剥がれてしまったのであります。大慌てで全ラウンデル、主翼下面のコードナンバー、方向舵のシリアル等を塗装でやりなおし、その年のクラブ作品展になんとか間に合わせることができました。エレール黒箱版はデカールが良くないという評判を聞いていましたが、そのとおりだったようです。黒箱版を製作予定の方々はお気をつけあれ(今は別売デカールもあるから心配ないか・・・)。




機首付近のアップ。モランソルニェのロゴはカウリング側面にあります。
この作品のリギングにはナイロンテグスを使っています。



3.モランソルニェ MS406



第二次大戦開戦時のフランス空軍の主力戦闘機。ドイツ軍の電撃戦を称える筆致で書かれた独仏戦の戦記では本機はドイツ空軍に圧倒されてしまったような印象を受けてしまいます。しかし本機の戦闘記録を読んでみると、本機はドイツ空軍相手になかなか勇戦健闘しているではないですか。GCⅠ/2のエース、R.ウィリアム大尉は「フランスの戦い」の中で、15秒間でBf109を3機立て続けに撃墜したという記録も残しています。 




キットはハセガワのキット。プロポーションは良好でモールドもシャープな良いキット。製作もほとんどストレス無しで進めました。修正は、胴体中央部分のギアベイに天井を追加した程度で(キットのままではギアベイからコクピットまで覗けてしまう)、その他はコクピット内装を追加工作、主翼上下の強化リブに細いプラシートを貼り付けて強調、各機銃銃身/ピトー管/胴体下アンテナ/ガンサイトを真鍮素材で作り直したくらいです。
塗装は私のスタンダードで、迷彩塗装のボカシも含めて短いストロークで筆塗りしてからクリアがけして研ぎ出ししています。マーキングは先ほど挙げたGCⅠ/2のウィリアム大尉機として仕上げました。 


 MS406はフランス空軍以外にフィンランド空軍やスイス空軍でも使われ、それぞれでエンジン換装など独自にリファインされたものがありますが、モランソルニェ開発の戦闘機の系譜はこのMS406で終わりを迎えたと考えてよさそうです。モランソルニェも戦後ポテーズに吸収されて終わりました。 


デビュー当時「世界一の戦闘機」と宣伝されましたが、フォルムはなんとなく重い感じ。主翼上下の強化リブや水平尾翼の補助支柱といった所に、設計者が新しい構成に不安を残している様子が伺えます。モランソルニェのロゴはもう描かれなくなりました。


胴体に描かれたGCⅠ/2の「こうのとり」エンブレム。
 なんと40年以上昔のESCIデカールがそのまま使えました!



機首周りのアップ。ラジエターは引き込み式。
主脚は緊急時にゴムひもで引き下げる仕組み。




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