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誌上個展

<日本航空史> 復元した三菱製零戦の色

  by 加藤 寛之
プラモデル コラム

 先月は日本陸軍機の色だったので、今月は海軍機の色にした。
航空自衛隊浜松広報館に天井から吊られた零戦がある。館の説明によれば、この機体は昭和19年6月19日に米軍と交戦し被弾し不時着し放棄されたとされ、グアム島で発見された。昭和39年1月に日本に返還され、製造元の三菱重工業大江工場で復元作業を実施、同年10月に完成した。その後、全国各地で展示されたが損傷がひどく管理が必要となって、昭和42年11月に浜松基地に移送されたという。
 私は復元完成から間もないころに、航空自衛隊入間基地の航空祭で見た。その零戦はなんと黄緑色で、カウリングはボ~ッとしたような明るい紺色の、「変な色」の零戦だった。“零戦は濃緑色に黒いカウリング”というプラモ的常識と、あまりにも違う色で納得できなかったのだ。
公開されたそのときの色は、戦時中に三菱で零戦製造に携わった方々が再現した色だった。今でこそ三菱製と中島製の零戦で色や塗り方が違うと知っているが、当時はそんな情報は子供の私はまったく知らなかった。
 復元機は、それから数年で濃緑色に黒いカウリングの常識的(?)な色に再塗装されたようだ。先日、たまたまグンゼ産業が発行した『カモフラージュ/マーキング カラーガイドブック第2集』(昭和47年)を入手、ページをめくっていたら復元当時の零戦が写っていた。同書には、別ページに当該機を再塗装した後の写真もあるので、遅くとも昭和47年には再塗装されていたことが分かった。

  さて、数年前のことだが、復元当時に発行された雑誌のカラー印刷面を複数みて、GSIクレオスMr.カラーの既成品から似た色を選んでみたことがある。緑色は№124番「暗緑色(三菱系)」、下面の灰色は№332「ライトエアクラフトグレーBS381C/624」、カウリングは№14「ネービーブルー」が似ていた。緑色が№124番「暗緑色(三菱系)」なのは当然だ、なんて思ってはいけない。復元機のことで分かるように、色への認識が進化した結果なのだ。三菱機の緑色が、プラモデル用に発売されているほどに認知されたということなのだから。当時でも色の規定はあったのだろうが、実態は規定のようになっていなかったのだ。



 『カモフラージュ/マーキング カラーガイドブック第2集』に刺激され、色に違和感をもった入間基地での出来事を本Web誌の記事にするためにプラモデルで再現してみることにした。キットはハセガワ1/48零戦52型(旧版)に三菱製の機体のデカールがあったので、これを使った。しっかりとした良質のキットなので、ほんの2~3日で完成した。復元時の色は、私の印象に近い『丸 グラフィックォータリー 写真集零戦』(1970年)掲載写真を主に参考とした。ただし、『カモフラージュ/マーキング カラーガイドブック第2集』の色も、ほぼ同じだ。緑とカウリングは近い感じの色へ調整してみたが、細部の色はキット指定+テキトウで、垂直尾翼の機番もキット付属を貼っている。



 写真は私が見た11月3日のように晴天下で撮ってみた。プラモデルだけれども、私には入間基地での印象そのままだ。三菱の緑は明るいと既に知っている読者の皆様は、どう感じられるだろうか。
オマケに、浜松広報館にある当該機の現在の写真も掲載しておく。




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