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特集 日本海軍機

十二試艦上戦闘機試作1号機
(ファインモールド改造 1/72)

  by 翔バナイカイ 栗人@ケータイ



 大戦時の日本機といえばまず「零戦」。今回はその原点たる十二試艦上戦闘機の試作1号機をご紹介致します。制作には、数年前にファインモールドが零戦11型との2機セットでリリースした試作2号機のキットを使用しました。試作2号機はエンジン周り、後部胴体の形状や水平尾翼取付け位置等で、その後に量産化された零戦と違いがあります。ファインモールドの試作2号機のキット構成は、それまでマガジンキットとして販売されていた零戦のパーツに、先の相違点部分を新モールドで起こしたパーツを組み合わせた内容になっています。
パーツの精度、嵌め合わせは良好で制作にはほとんどストレスありません。しかし試作2号機は完成から半年足らずで試験飛行中に空中分解という大事故で失われた機体。どうせならもっと長い寿命を保った機体を制作したいと思い、キットをベースに試作1号機へバックデートさせてみることにしました。バックデートにあたり、各種資料を参考にさせていただきましたが、その中でも以前モデルアート誌に連載されていた「日本機大図鑑」中にある十二試艦戦のイラスト解説が大いに役にたちました。



  試作1号機の実物大復元モデルは岐阜かかみがはら航空宇宙博物館に展示されています。しかしその実像は、まだ諸説あって確定されていない様子です。そこで、今回の試作1号機の作品は、あくまで私の個人的な一説として見てやってください。
以下、試作1号機への改修点は、各写真のキャプションで述べてゆきます。

塗装はキットのインスト通りで全面灰緑色。初飛行時点では海軍領収前のため機体番号は描かれていないと考えられますが、それではちょっと寂しいので、垂直尾翼に機体番号「コ-AM-1」を黄橙色で描いて海軍領収後の姿にしてみました。



  ところで、そもそもファインモールドがモデル化したのはなぜ試作2号機なのでしょうか。勝手に推察するとこんなところかと。
・試作型をキット化するにあたり、エンジン周りや胴体後半で後の零戦との外形的な差異は致し方ない。
・主翼の舵面の違いまで反映すると主翼まで新たに金型を起こす必要がある。
というわけで、できるだけ既存のモールドを利用できるところで線を引くならやはり試作2号機でしょう。さすがファインモールドさんはよく調査されている、として勝手に納得です。


胴体下面のヒレが目につきます。この腹ヒレは1号機には無かったとか形が違ったとか諸説ありますが、とりあえずキットのままとしました。


 後の零戦との主要な相違点である瑞星エンジン搭載カウリング周りのアップ。
機首下面のオイルクーラを2号機のものよりも小型のものにバックデートさせています。
プロペラは2枚ブレード。キットのパーツはガバナ部分のモールドがあっさりしすぎと感じたので、それらしく追加工作しています。


  コクピット周辺。ここの辺りもキットではキャノピー後端やアンテナ支柱の傾きなど、後の零戦との違いがちゃんと再現されています。
試作1号機はクルシー無線方位測定器を搭載していないと考えられるので、ヘッドレスト後のループアンテナ取付け用の穴は埋めています。またヘッドレストの脇に酸素ボンベ開閉用のハンドルを追加しています(これがあるのは試作1号機のみらしい)。


 主翼下面を零戦11型と比較。(写真下段は零戦11型)
試作2号機以降と比べてエルロンとフラップの幅が異なっています。(写真の下段は零戦11型)
後にエルロン、フラップとも2号機以降と同じ構成に改修されたらしいですが、ここは試作2号機との相違点を出したかったのであえてバックデート改修しました。


 主翼上面を零戦11型と比較(写真下段は零戦11型)
試作機には20mm機銃の弾道調整用の点検口(緑矢印部分)がありますが、これは後の零戦には省かれています。


 零戦11型との2ショット。11型と比べると十二試艦戦はちょっと寸詰まりな感じで、水平尾翼の取付け高さの違いが目に付きます。


 零戦11型は排気管の位置をカウルフラップ1枚分上に上げて初期生産型に改造し、第12航空隊の所属機として制作しました。


 中国大陸に展開した零戦11型では胴体前半と後半で明度に差がある「2色塗装」が知られています。この塗装にも諸説ありますが、今回は「駐機時に機体に掛けたカバーからはみ出していた部分の色が褪せただけ」説で試してみました。明灰白色に白を加えて明度差をつけた色で塗り分けてみましたが、もう少しコントラストを出した方がおもしろかったかも。
制作した「3-170」号機は1940年9月13日の零戦初空戦時に三上一禧二空曹が搭乗して2機の撃墜を記録。この初空戦時の姿として仕上げています。
三上氏は大戦を生き延び、初空戦時に対戦した徐華江氏(三上氏との一騎打ちで撃墜されたが生き延びた)と1998年に東京で奇跡の再会。お互い涙とともに抱き合い、思い出話が尽きなかったとか。
(ちなみに初空戦当日、零戦隊が発進した漢口基地は、あの「武漢」にありました。)




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