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特集 日本海軍機

 中島九七式艦上攻撃機一二型 2題
(Hasegawa & Airfix 1/72 )

by 翔バナイカイ 大山 盛幹



 今月のテーマの「日本海軍機」にあわせて、九七式艦上攻撃機を紹介したいと思います。モデルアート創刊期の連載記事「ライバル登場」よろしく、今回は作り比べということでHasegawaとAirfixのキットを並行して製作しました。



  Hasegawa のキットは 1973年にManiaから発売され、その後同社活動終了後に1978年にHasegawaから発売されたもので、息の長いキットです。 Mania版発売時、九七式艦上攻撃機は有名機といえども1/75の日東のキットくらいしかなく、Mania版は同時のキットの水準を大きく上回るもので、発売に狂喜乱舞したことを覚えています。航空情報別冊プラモガイド1974年版では
「全体のプロポーションはやや主翼が薄く感じられる以外は申し分ない。細部はかなり細かく再現されており、特にコクピット内部はよくできている。」と評価されています。その後、デカール替え、爆弾等のレジンパーツの追加等により何度も再版されており今でも入手可能です。また、カウリングパーツを変更した一一型のキットも発売されていました。


  一方、Airfixのキットは 2015年に発売された1/72の九七式艦上攻撃機の最新キットです。さすがに21世紀のキットで、考証もよく、Hasegawaのキットを上回るコクピット内部が再現されています。


コクピットは胴体パーツに挟み込むのではなく、主翼パーツ中央に取り付けるようになっております。
また、武装、風防等のオプションパーツも多くセットされており、余ったこれらのオプションパーツはHasegawaのキットに利用できます。


  九七式艦上攻撃機は、昭和10年(1935年)に海軍が中島、三菱に十試艦上攻撃機として競争試作を命じました。両社の試作機に甲乙つけ難かったため、昭和12年(1937年)に中島案を九七式一号艦上攻撃機、三菱案を九七式二号艦上攻撃機として、共に採用されました。
中島飛行機で開発された一号(B5N1、後に一一型と改称)は、発動機に「光」三型を装備したため機首が大きくなっているのが特徴です(東宝映画「ハワイ・マレー沖海戦(1942年)」で見ることができます。また、兵庫県加西市の鶉野(うずらの)飛行場跡の施設「soraかさい」に実大模型が展示されています)。この一号の発動機を設計当初より予定されていた「栄」一一型に変更した型が九七式三号艦上攻撃機(B5N2、後に一二型と改称)で、真珠湾奇襲をはじめとして太平洋戦争前半の主力艦攻として活躍しました。



  さて、作り比べた二つのキットですが、翔鶴艦載機がAirfix のキットです。さすがに最新作だけあり、フラップダウンがデフォルトであり、主翼折りたたみも比較的簡単な工作で再現できるようになっています。魚雷、爆弾(800㎏、500㎏、250㎏、60㎏)と搭載武装はすべてそろっています。取り付ける武装によって胴体下面に開口する穴の位置が違ってきますので注意が必要です。このキットは、少し腰高の印象で、軽荷重状態のようです。実機同様にエンジンから突き出るようになった排気管は、カウリングからやっと顔を見せる程度で、短く貧弱でしたので、キットの排気管に真鍮パイプを被せて太く長くしました。電信員席の機銃は、Finemoldsのメタルパーツの機銃に置き換えました。


  赤城艦載機がHasegawaのキットです。こちらのキットはAirfix のキットとは逆に、オレオが最大に縮んだ過荷重状態です。キットの風防は閉状態のみで、全長が少し短く、かつ低く感じました。
そこで、前述のようにAirfix のキットの開状態の風防パーツを利用しましたが、特に調整の必要もなくフィットしました。開かれた内側風防のフレームの塗装は吹き付け塗装ができませんので、慎重に面相筆でパーツ内側に筆塗りしました。武装は魚雷しかセットされていませんが、全長が短く感じますので、魚雷を取り付ける場合は、Airfix キットの魚雷パーツの利用をお勧めします。また、淵田中佐機は魚雷を搭載しておりませんので、Airfixキットの800㎏爆弾を取り付けました。こちらも新たな取り付け穴を開口することなく、キットの魚雷取り付け穴に取り付けることができました。電信員席の機銃は、Finemoldsのプラパーツの機銃に置き換えました。


  塗装は、どちらのキットのマーキングは機番号を除き、塗装しました。Airfix のキット付属のデカールの翔鶴艦載機の胴体帯は単純に白帯となっていますが、実機では赤縁付きの白帯ですので注意が必要です。赤城艦載機の淵田中佐機は機体全体にわたって塗装の剥げが目立ちますので、全面に銀を塗装した後に、濃緑色を吹き付け、ペーパーで磨いて剥がれを表現しました。主翼下面の機番1はデカールがありませんので、塗装しました。水平尾翼の編流測定線は書かれていたのかもしれませんが、不明でしたので作例は記入しておりません。
 完成後、両キットを並べて写真撮影しました。正面写真からは、主翼端の位置が大きく違い、オレオの縮み違いが判ると思います。


また、側面写真では、プロポーションが微妙に違っていることがお判りいただけると思います。具体的には風防からカウリングまでのライン、垂直尾翼前縁・後縁の傾斜角や前述した主脚オレオの縮み具合等が挙げられます。


 全体的には最新作だけあってAirfix のキットが作りやすく雰囲気もよいと思いますが、Hasegawa のキットはほぼ半世紀前のキットにもかかわらず、Airfixのキットとプロポーションも遜色なく(カウルフラップの部分が絞りすぎのように感じますが)、実売価格としては千円札で購入できるコストパフォーマンスが高いキットと感じられました。



 資料としては、酣燈社 航空情報別冊「太平洋戦争日本海軍機(1972年)」、
文林堂 世界の傑作機「 旧版第74集九七式艦上攻撃機 (1976年)」、「 新版第32集97式艦上攻撃機 (1992年)」、
出版共同社「日本航空機総集第五巻改訂新版中島編 (1983年)」、
モデルアート臨時増刊「真珠湾攻撃隊(1991年)」、
そして光人社「空母機動部隊の打撃力(2006年)」を、
雑誌記事としてはレプリカ「真珠湾の101機(1990年)」を参考にしました。

 また、DVDでは東宝映画「ハワイ・ミッドウェイ大海空戦 太平洋の嵐(1960年)」が参考になります。この映画の撮影にあたっては、千葉県の勝浦海岸に1/1スケールの飛龍のオープンセットを作成して、零戦、九九式艦上爆撃機、九七式艦上攻撃機を、実大で再現して撮影されています。主人公の乗機が九七式艦上攻撃機であるため、戦後15年を経過したといえども、当時を知る方が存命で取材もされたようで、映画のセットといえども細部もよく作られていて参考になります。



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