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立川 キ94Ⅱ 試作高々度戦闘機(1/48ソリッド・モデル)

by 小山新一



(実機について)
 戦局が日本に不利になってきた太平洋戦争後期、大手航空機メーカーは、前線からの戦訓をもとに、既存機の改良・性能向上の作業に追われていた。その上に、英米の新型戦闘機に対抗し得る新戦闘機の開発、試作を抱え、設計者も技師も心身ともに疲弊していた。
 こうした状況を打開すべく、これまで練習機など脇役的飛行機を主に作ってきたメーカーにも、戦闘機の開発、試作のチャンスが与えられることとなった。九州飛行機が担当した海軍の震電などは、その好例といえよう。
 同じようにして、大手の下請けや練習機、直協機などを作ってきた立川飛行機が設計、試作したのが本機、キ94Ⅱである。Ⅱとあるのはキ94Ⅰがあり、こちらは実大モックアップまで作られながら、中止になった。胴体の前後にエンジンを配し(串形双発)、左右の主翼から伸ばしたビームに尾翼をつけたラディカルな機体であった。
Ⅰの中止ののち、1年の準備期間をおいて、機体を単胴・単発の通常アレンジにし、排気タービンを装備する案が通り、1943(昭和19)年2月に設計をスタートしている。
 キ94Ⅰ、Ⅱとも設計主務者は長谷川龍雄で、Ⅰがスタートしたとき、彼はまだ27才の若さであった。これは、零戦の堀越二郎(三菱)、飛燕の土井武夫(川崎)、疾風の小山梯(中島)らと、干支でいうとほぼひと回り違う。新進気鋭といって良く、立川が初めてのぞんだ戦闘機開発に、意欲と情熱を燃やして取り組んだことは想像にかたくない。
 機体の規模と排気タービン・システムの配置は、結果としてアメリカのP47サンダーボルトに似たものとなった。中島のキ87や、川崎の5式戦改造機の排気タービンの装備法に比べ、キ94Ⅱのそれは正攻法と言っていいだろう。こうした点を買われたのか、試験飛行も行われずに終戦をむかえたにも関わらず、本機への評価は高い。
 試作1号機が完成したのが1945(昭和20)年7月で、エンジン調整中に終戦となった。

 戦後、長谷川龍雄はトヨタ自動車に入社、マイカー・ブームのさきがけとなったパブリカやカローラの主査をつとめている。

 左側面


[模型の制作]
 昨年11月13日に、コンビニで図面を1/48に拡大してスタートしている。図面は文林堂刊の「日本の陸軍機」で、作図は長谷川一郎氏の手になるものだ。完成したのが、2月22日だから、3ケ月と少しかかったことになる。キラン練習機以来3年ぶりなので、久しぶりの木削りに苦労する。

2     図面上に胴体ブロックをのせる


2の1   荒削りの主要パーツ


3     およそのモックアップ


本機の外形ラインは、どこか締まりがない。ベテラン設計者が引くラインは、曲線と直線のメリハリがあって小気味いいのだが。当時の若手設計者長谷川龍雄にとって、本機は空力で作る飛行機ではない、機能優先で作るのだとの思いがあったのだろうか。航空機ゆえ、むだな抵抗は廃するが、それ以上はこだわらない。その方針が、たとえば垂直尾翼の、あまり締まらない側面形になったのかも知れない。
 排気タービンはコクピット後下方で、このための配管が胴体下部、および側面を通る。エンジン排気をタービンに導くパイプは、機体下面に無造作にむき出しになっている。これに加え、中間冷却気吸入口が大きく(しかも2つ)張り出しているのは、模型的には面白いが、抵抗増になったであろうと、素人目にもわかる。
 小物の作成など、ソリッド定番の工作に過ぎないのだが、老眼が進んだせいで拡大ルーペが必須となった。加えて指先がおぼつかなくなったのか、小さなパーツを何度となく、机の下に取り落とした。そのたびに大捜索であり、能率の悪いことはなはだしかった。
 キャノピーは透明塩ビの絞り出し。今回は塩ビを折り曲げたレールを取り付け、スライドするようにした。ストックのタミヤ1/48晴嵐から、2名のクルーをスカウトし、1名は首を横に向け、夏服姿にし、もう1名は冬服着用に加え酸素マスクを着用させた。ときに乗せ換えると変化がついて楽しい。  

4     プレス部品の木型


5     ほぼ全パーツの配置


6     木製タイヤの削り出し


 塗装は試作1号機を基本にしたが、マーキングは架空のものにした。飛燕を装備し、帝都防空の任にあたった244部隊のそれを手描きしてある。排気タービン装備で30mm機関砲、20mm機関砲各2門搭載の重武装機を欲しがるなら、この部隊でなかろうかとの想像だ。機首の13は増加試作機13号機の意味で、これ1機ぐらいなら実戦部隊に回してもらえるかもと、これも私の想像である。この13のデカールのみ、既製品を用いた。他はすべて木やプラバンなどの素材から自作した。
 自分勝手に、故長谷川一郎氏をソリッド・モデラーの師とあおいでいるので、氏が自作のソリッド制作記事に記していた言葉でしめくくりたい。
 「すべて無の状態から、キ94Ⅱを作る」  

7     クレオスのサフェーサーを吹く


9     右側面(後方から)


10    コクピット部のアップ


11    ストックのフィギュアたちと


12    機体下面


13    旧作ソリッド九八直協と


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