Home  > McDonnell Douglas F-4J “Phantom II”(Hasegawa 1/48)> 特集 ハセガワ 1/48>2024年5月号

特集 ハセガワ 1/48

 McDonnell Douglas F-4J “Phantom II”(Hasegawa 1/48)

by Kiyoshi Iwama(ひやめし会)


F-4J PHANTOM II ‘Show Time 100’(1/48) Hasegawa Box Artより

 最近では、1/48では造形村、タミヤ、アカデミーなどから新作が発売され、また1/72ではファインモールドがシリーズ化を進めるなど、F-4 ファントムIIのプラモは今もなお進化を続けています。しかし、かって市場を席巻したのはハセガワのキットでした。確かに現在の技術で製作したキットと比べると、いろいろ課題もあるのですが、そのプロポーションだけは今も高く評価できると思っています。そんなハセガワのF-4Jを製作してみました。トップのボックスアートは、ヴェトナム戦でMig17と空戦を演じるVF-96のCAG機で、「F-4J Phantom II ‘SHOW TIME’」のタイトルでハセガワからリリースされたものです。実は製作したキットのパーツはこの箱の中身ではなく、静岡ホビーショーのハセガワさんのブースで人だかりとなるジャンクパーツコーナーで買い集めたパーツで組み立てたものです。塗装もほぼ同じですが、今回の作品は1975年当時のもので、ボックスアートの機体とは別のものとなっています。

実機紹介

 実機については、本誌2022年12月号の第2特集記事「今は無きメーカのプラモデル」に投稿した「McDonnell Douglas F-4J“Phantom II”(ESCI 1/48)」の記事(https://www.webmodelers.com/202212iwamaF4J.html)において、J型について解説したこともあり、重複を避け、ここでは巻頭に述べた同じ衣装をまとった2機のファントムについて少し書いてみます。

 第二次大戦における航空戦とは違い、ヴェトナム戦での航空戦では敵機を次々と撃墜するようなエースパイロットは 現れることはありませんでした。そんな中、北ヴェトナム機を5機撃墜し、ヴェトナムでの米軍初のエースチーム(F-4は前席のパイロットと後席のRIOのチームで戦闘しているため)が1972年5月10日に誕生したのです。空母コンステレーションに搭載されたCVW-9所属のVF-96 “Fighting Falcons”のパイロット、ランディ・カニンガム大尉とRIOのウィリアム・ドリスコル中尉のチームです。そして彼らの乗機がNG/100のF-4J-35-MC(Bu.No.155800)でした。また彼らが使用したコールサインが”Show Time 100”で、ハセガワのボックスのタイトルは、このコールサインを採ったものです。

 実はそれまでの彼らの撃墜数は2機だったのですが、この日一挙に3機を撃墜しエースになったのです。しかも1日に3機の撃墜も新記録でした。しかし、いいことばかりではありません。意気揚々と空母へ引き返す途上、トンキン湾に出たところでSAMの至近弾を受け、カニンガムとドリスコルは機外へ脱出、機体はコントロールを失い急降下し、ハイフォン港近くの海中に姿を消したのです。脱出した二人は、幸いにも味方の救難ヘリに無事救助されました。

 失われたCAG機の後任に就いたのが今回製作しましたF-4J-34-MC(Bu.No.155580)です。その後この機体はVF-96からVF-161に移管され、厚木に駐留、その後海兵隊に移管されVMFA-235に所属し岩国にも駐留していました。そして1985年にノースアイランドの海軍修理工場でF-4Sへとアップグレードされ、改修後は海兵隊のVMFA-232に所属、その後QF-4S ドローン機へと改修され、2000年4月21日まで在籍したという記録が残されています。

F-4J “Phantom II Hasegawa (1/48)


製作

 キットのデカールが無いため、AeroMasterの48-502 “Phancy Phantoms Part II”からVF-96を選んで使用しています。デカールの解説には、1975年4月25日に撮影された写真をベースにしたものとありました。 このほかコクピットにはEduardのカラーエッチングパーツを使っていますが、アビエータを座らせたので、コクピット内のディテールはあまり見えなくなってしまいました。では各部の製作過程のポイントについて順を追って紹介していきます。


1. コクピット部
 まずコクピットの組み立てです。ハセガワのキットの主計器盤もサイドコンソールも細かく綺麗に彫刻されているので、このまま塗り分ければ立派なコクピットが出来上がるのですが、ここはエッチングパーツを使うということで、全ての彫刻を削り落としました。その後エッチングパーツを貼り合わせていくわけですが、前後席用の計器盤には丸型の計器があり、本来ならガラスの部分がありますので、計器を印刷したエッチングパネルと丸穴が抜かれた計器の外枠を表現したエッチングパネルとの間に01㎜の透明シートを挟み込み、重ねて接着しました。こうして出来上がった前席計器盤が(写真1)、また(写真2)が後席計器盤です。次にコクピットのサイドコンソールにもカラーエッチングの計器盤を貼り付け、前後席の主計器盤及びジョイスティックを取り付け、さらに前脚の収納口部をコクピットの下面に貼り付けるとコクピット部が完成です。(写真3),(写真4)が、コクピット部下面から前脚収納部を見た写真です。配管を固定する緩衝材と金属の固定金具を表現してみました。

(写真1) 前席用計器盤

  (写真2) 後席用計器盤

(写真3) 完成したコクピット

  (写真4) 前脚収納部

2. 胴体と主翼、そしてエアーインテイク部の組み立て
 胴体は左右パーツから構成されます。左右を貼り合わせる前にコクピット前後席のグレアシールド部を艶消しの黒で塗っておきます。そして先に述べたコクピットを組み込み(写真5)、胴体の左右パーツを接着し、次に主翼を取り付けます。

(写真5) 左側胴体パーツに組み込んだコクピット部


 主翼の取り付け前に、主翼下面の左右インテイク部に少し細工を施します。インテイクの奥まで、できるだけ均一な面でつながるように(写真6)のようなプラ板を追加したのです。

(写真6) 主翼下面のインテイク部に貼り付けたプラ板


 その後主翼を胴体に組み付けていきます。主翼は左右別々の上面と左右一体となった下面の3つのパーツから構成されます。筆者はまず下面パーツを胴体に仮組みし、主翼上面左右のパーツと胴体との接合面ができるだけフィットするようにすり合わせ、その後上下面、そして胴体とを接着しました。

 次に左右のインテイク部を取り付けますが、胴体側のインテイク部奥に写真を貼るための板を取り付けました。(写真7)この手法はESCIのF-4Jを製作した時と同じ方法です。(写真8)に示すインテイクダクト内部の写真を切り取ってこの場所に貼り付けます。

(写真7) インテイク部奥に貼り付けたプラ板



(写真8) 実機のインテイクダクト内部の写真


 次に事前に塗装済みの左右エアーインテイク部(写真9)を取り付けます。写真にありますようにダクト内壁面のピトー管も事前に取付けておきます。

(写真9) 左右のエアーインテイク部


 エアーインテイク部を取り付けた後、接合部を整形します。こうして出来上がったインテイクを覗いた様子が(写真10)です。スプリットベーンはまだ取り付けていませんが、こうして見ると何となく奥までつながっているように見えないでしょうか?

(写真10) エアーインテイクを覗く


 これで胴体、主翼、エアーインテイクがつながりました。(写真11)は前胴内に収まったコクピット、(写真12)は組み上がった機体下面の様子です。

(写真11) 前胴内に収まったコクピット


(写真12) 組み上がった機体下面の様子


  最後にエアーインテイクのスプリットベーンを取り付ければ、機体の工作は完了です。


3. 塗装とデカールの貼り付け
 機体色は米海軍の標準塗装の上面ライトガルグレイ(FS16440)、下面インシグニアホワイト(FS17875)となります。またフラップ上面とラダーもインシグニアホワイトです。
今回製作したVF-96の機体は、垂直尾翼のマーキングも主翼翼端も黒で派手な色ではありませんが、垂直尾翼いっぱいに描かれた黒のファルコンの画が目に留まります。
以上の様な色を塗っていくのですが、まずはエンジン排気口周辺のメタル部分から塗り出しました。(写真13)排気ブラストがまともに当たる部分には焼鉄色、尾部の側面部は黒鉄色を主体に塗装し、排気ノズルの取り付け部分はスーパーステンレス、後端のドラッグシュートの収納カバーは銀で塗装しています。 

(写真13) 排気口周辺の金属塗装


その後順次マスキングを施しながら、下面のインシグニアホワイト、上面のライトガルグレイ、レドーム、コクピット周り、主翼端、機首の補助インテイクなどを黒で塗装していきました。(写真14)は機体上面、(写真15)が機体下面です。  

(写真14) 塗装後の機体上面


(写真15) 塗装後の機体下面


 (写真16)が前胴部のクローズアップです。エアーインテイクのリップ部はナチュラルメタルですが、事前に塗ってあったもので、機体塗装時にはマスキングして対処しました。 

(写真16) 塗装後の前胴部のクローズアップ


 塗装が終わればデカールを貼ります。デカールは前述のとおりエアロマスターのものを使用しています。エアロマスターのデカールは少し厚めで、馴染ませるのに苦労しました。またウォークウェイはスーパースケールのデカールを使用しました。(写真17)がデカールを貼り終えた機体全景です。 

(写真17) デカールを貼り終えた機体全景


4. その他部品
 この項では機体以外のいくつかの部品を紹介します。最初はウィンドシールドとキャノピーです。塗装をしてデカールを貼った時点の状態で、まだマスキングテープが外れていません。(写真18)
次に水平尾翼です。ハセガワのキットの水平尾翼は、きちんとキャンバーが付いています。(写真19)

(写真18) ウィンドシールドとキャノピー

  (写真19) 水平尾翼

 (写真20)が前脚、(写真21)が主脚です。

(写真20) 前脚 

  (写真21) 主脚

 (写真22)はエンジンノズルです。所属するクラブの会長さんが3Dプリンターを操られるので、製作していただいたものを使用してみました。(写真23)がエッチングパーツに置き換えた前席のオプティカルサイトです。

(写真22) エンジンノズル 

  (写真23) オプティカルサイト

 (写真24)と(写真25)は前方前脚扉です。キットのインデックスライトの位置が実機より低いため、修正しています。しかしデカールを貼る時点で気づいたため、修正がラフになってしまいました。また前照灯やインデックスライトを収納したボックスをプラ板で自作して取り付けています。

(写真24) 前方部前脚扉
  (写真25)前方部前脚扉

  次にウェポンですが、自衛用のミサイルとしてAIM-9D×2(内舷パイロン)、AIM-7E×2(胴体後部ランチャー)、対地攻撃用にMk.83 500lb通常爆弾×6(内舷パイロンのTERに各3発)を準備しました。ウェポンは全てハセガワのウェポンセットのキットを使用しています。(写真26)がAIM-7Eスパローミサイル、
(写真27)がAIM-9DサイドワインダーミサイルとMk.83 500lb爆弾を搭載した内舷パイロンです。

(写真26) AIM-9E スパローミサイル
  (写真27) AIM-9DとMk.83を搭載した内舷パイロン


(写真28)が胴下のセンターラインタンクです。CAG機のセンターラインタンクだけにマーキングが施されています。  

(写真28) センターラインタンク


 最後に(写真29)が今回コクピットに座らせたパイロットフィギュアです。 

(写真29) シートに座ったパイロットフィギュア



5. 最終組み立てと仕上げ
 塗装とデカールを貼り終えた機体をスーパークリア(半つや:つや消し=6:4程度)でオーバーコートし、適度に墨入れと汚しを施しました。最後に前項で紹介した各パーツや兵装類を取り付けて完成です。今回キャノピーは閉状態で固定しましたが、流石ハセガワ、ほぼ違和感なく取り付けられました。(写真30~35)に完成機の写真を示します。最後の写真は以前製作したESCIのF-4J(VF-92)とのツーショットです。

(写真30)  完成したF-4J “Phantom II”


(写真31)  完成したF-4J “Phantom II”


(写真32)  完成したF-4J “Phantom II”


(写真33)  完成したF-4J “Phantom II”


(写真34)  完成したF-4J “Phantom II”


(写真35)  以前製作したESCIのF-4Jとツーショット


 古いキットではありますが、出来上がったハセガワのファントムは古さを感じさせません。これからも製作してみたいと思っています。


  Home>McDonnell Douglas F-4J “Phantom II”(Hasegawa 1/48)> 特集 ハセガワ 1/48>2024年5月号
Vol.189 2024 May.   www.webmodelers.com /Office webmodelers all right reserved /  
         editor Hiromichi Taguchi 田口博通 /無断転載を禁ず  リンクフリー
「webモデラーズ について」 「広告のご出稿について」

プラモデル模型製作特集1

TOTAL PAGE