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誌上個展

<日本航空史> 彩色絵葉書の資料性

  by 加藤 寛之
プラモデル コラム

 本<日本航空史>では、たびたび資料として彩色絵葉書をとりあげている。彩色には手彩色と人工着色(人着)があるが、ここでは人工着色のこと。人工着色による彩色絵葉書の原版はモノクロ写真で、これを印刷工程で「空は青」「草は緑」「日の丸は赤」のように色を付けて擬似カラー化したものだ。
 ある程度年月が経過したカラー写真の変色は多くの人が経験していると思うが、日光にあたらない場所で保存された印刷物は色がよく保存されている。本誌20232年1月号<日本航空史>のブルーインパスルはその好例で、印刷物である絵葉書は美しい色だが、同時掲載のカラー写真はかなりの色補正を要した。このブルーインパルスの絵葉書は元からカラー写真なので青は青、赤は赤になるので問題ないが、彩色絵葉書は前述のように人工的な着色である。それ故に、いろいろなことが起こる。

<課題1>


  <課題1>は、丁式爆撃機。丁式爆撃機は次号であらためて取り上げるつもりなのだが、先に彩色絵葉書の課題を検討しておきたい。胴体は灰色で、主翼上面も灰色だろう。木製のプロペラと支柱は茶色で木の色らしい。ラダーには日の丸がある。主輪のタイヤは灰色で、ゴムの色そのままなのだろう。主翼下面は陰なのか暗く塗りつぶされていて、色も日の丸も分からない。どこにも不自然なところはなく、カラー写真だと言われても納得してしまうだろう。

<課題2>


 <課題2>はどうだろうか。派手さに目を奪われる前に、背景をみてもらいたい。遠方の林の様子を比べると<課題1>と同じ原版だと分かる。派手な色は印刷で生み出されたものなのだ。右端の支柱の向こうに見える別機が消えているが、これも印刷の技。派手な機体色の<課題2>はデタラメな色だとは思うが、そう言い切れるだろうか。丁式爆撃機はファルマンF60ゴリアトという旅客機がモトだから「旅客機の色を再現したのね」と問われたらどうだろうか。そうなると<課題1>の灰色だって着色なのだから、「灰色は妥当だ」と思っても根拠にはならない。ゼロ戦の複座練習機型がオレンジなのか灰色なのかだって、モノクロ写真では分からないのだから。

<課題3>


 <課題3>は10式艦上雷撃機。昔、マルサンがプラモデル化している。そのときの箱絵は緑色に描かれているが、この絵葉書は暗いカーキ色というか、茶系のオリーブドラブになっている。この絵葉書10式艦上雷撃機だけでなく、当時の機体の絵葉書はほぼ茶色系で再現されている。この絵葉書をよくみると、胴体の日の丸の赤を茶色でごまかしてある。赤を1色省くことでコストダウンしたのだろうが、緑は草の色で使っているから、機体色の茶色は緑の代替ではないだろう。では、緑色だとの情報とは、どこに接点があるのか、となる。彩色絵葉書には、その色を受け入れるための判断が欠かせないのだ。

  絵葉書は商品だから、色変えや色の省略、背景のスッキリ化はよくあることだ。できることならば、元のモノクロ写真を見つけて比較することが大切。<課題2>でいえば、元の写真とみられるものと比較して明度をみると、多色塗装は疑問。だが、くどいようだが、それで旅客機の再現かも、とか、灰色の妥当性まで説明できたとはいえない。
 次回<日本航空史>は、こういった彩色絵葉書の課題を理解したうえで、<課題1><課題2>でとりあげた丁式爆撃機の色をさらに考えたい。

 蛇足:10式艦上雷撃機のプロペラは、掲載絵葉書にみられるように2枚が普通だが、十字型の4枚を装着したものもある。マルサンのキットを作るときには、これで他の人の完成品と違いをつけられる。完成させる方がいらっしゃれば、のことだが。


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