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誌上個展

<日本航空史> 零戦のまだら塗装

  by 加藤 寛之
プラモデル コラム

 今月のWebモデラーズの特集に「タミヤ」があったので製作した1/48零戦32型は、応急の現地塗装にした。今回は、この現地塗装をとりあげたい

  零戦の特殊な塗装に、21型や32型の斑点迷彩がある。全面灰色の標準塗装の上に現地で緑色を塗り重ねたのだという。タミヤのキットの塗装図では、斑点塗装の斑点を暗緑色としている。その緑色だが、モデルアート臨時増刊『零戦』通巻第242号(昭和59年)p.111に収録の長谷川一郎氏「零戦の基本塗装」では「現地で在庫の暗緑色のラッカーでの迷彩が始まった。それまでのライトグレイ地の上に、チェッカーや雲形のパターンで上側面を塗装した。その時分の有名な話に、暗緑色の塗料が足りなくなり、白や下面補修色を半分混ぜて作った中途半端な緑色の機体も数多くあったという」とある。そういう緑色もあるのだ。この中途半端な緑色の実例でしばしばあげられるのが、文林堂『零式艦上戦闘機』世界の傑作機スペシャルエディションVol.6(2012年)p.117下写真の32型。応急で塗りムラがあるとはいえ上側面全体をほぼ覆ってあり、日の丸の白縁は綺麗に残してある。



 極端なマダラ塗装では、ここに掲載の編隊飛行する21型の写真がよく登場する。これそのものは古書店で入手したスクラップブックにあったもので戦時中らしい雑誌の切り抜きらしいが、出典メモはなかった。この写真の塗装をプラモデル的にみると、上側面が大きな斑点迷彩らしいこと、スピンナーは銀、カウリングは黒だろう。胴体の日の丸にある白縁にまで斑点迷彩が届いている。主翼前縁のオレンジは有無が判然としない。そして、手前から1番目と2番目は塗装パターンがそっくり。いや、2番目と3番目の塗装パターンも似ている。もしかしたら、合成して記数を増やした? そうなると、大胆な斑点までも加筆かと疑ってしまうのだが、大きな斑点の零戦は前掲文林堂『零式艦上戦闘機』p.86、88にもあるので、これはホンモノと信じたい。

 応急塗装のとき、主翼前縁のオレンジは、塗ったのか塗っていないのか、塗るならどう塗ったのか。ヒントは、前掲文林堂『零式艦上戦闘機』p.19の墜落した灰色の零戦32型にある。この機体は緑の上塗りがなくてオレンジに塗ってある。この写真は興味深いもので、風防内部の胴体上面が暗色であること、三菱のカウリング色は青っぽい灰色にまで褪色することも分かる。カウリングの褪色についても、長谷川一郎氏が前掲モデルアート臨時増刊『零戦』p.110で指摘している。

 もう一つ、前掲文林堂『零式艦上戦闘機』p.89の手前に写った21型は、緑色の位置が大雑把なので現地塗装だと思う。この機の主翼前縁のオレンジは下面の塗装範囲が広いようだ。後ろの他機も同様みたいだ。では、上面はどこまで塗ってあるのだろうか。これは分からない。
どうやら上側面の緑塗装や主翼前縁のオレンジ色の関係は、いろいろあるようだ。現地塗装だからね。
いろいろ書いてはみたが、結局はよく分からない。そうなると私は「プラモデルは好きなように塗ればイイや」に落ち着く。「私の好きなようにします」って感じだ。

オマケ:モデルアート臨時増刊『零戦』通巻第242号にはカラーチップが付いている。利用の際は、p.156の目次横にある「訂正とお詫び」を必ず確認されたい。中島製機の下面色と機内色が貼り違っていると書いてある。今回、私が作った32型はそもそも三菱製だし、しかも私はプラモデルを自分勝手な色で塗っているので、全然心配ない。 


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