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中島4式戦闘機 疾風 (ハセガワ 1/48 )
by 小山新一
(実機について)
軽戦の極致と言われた97式戦闘機の後継として、中島が設計、製造したのが1式戦闘機 隼であったが、このプロセスは実に難産というべきであった。速度優先か格闘性能優勢か、用兵側の陸軍にも迷いがあったためである。世界の戦闘機の趨勢は、速度優先の一撃離脱戦法に傾いていたが、陸軍の航空関係者の間には、パイロットも含め格闘性能優先をとなえる気風が根強く残っていた。結果、「速度は列強の戦闘機にひけを取らぬこと、格闘性能は97戦と同等レベルとする」との過酷な要求が突きつけられることとなった。速度と格闘性能は相反する要素であったから、完成した隼はパイロットから、どっちつかずの冴えない戦闘機とみられ、一時は採用が危ぶまれたほどであった。
隼が息を吹き返したのは、南方作戦で航続力の長い戦闘機が必須であったこと、実戦経験のあるパイロットの研究などにより、縦方向の旋回戦に持ち込めば97戦に勝てることが実証されたことなどが上げられよう。制式採用が遅れたぶん、太平洋戦争開始時点で、隼の前線への配備機数はまことに心細いものであったそうな。
速度優先の戦闘機を作ってみたいとの、中島のスタッフの意をくみ、軍が補完的に試作を認めた機体がキ44で、2式戦闘機として制式採用になり、鍾馗という名称もつけられた。戦争の進展とともに、用兵側も速度優先の戦闘機の必要を痛感するのだが、2式戦は着陸速度が速く、航続力の不足など、何かと使いにくかった。2式戦の改造・改良でなく、欠点を克服した新戦闘機が求められ、設計、製作されたのが4式戦闘機 疾風であった。
新エンジン誉を搭載し、速度を優先しつつ格闘性能にも配慮したバランスの取れた機体で、重武装(20㎜×2,12.7mm×2)で防弾にも配慮、航続力も隼と同等以上であった。万能の高速戦闘機誕生に、関係者は喜び「大東亜決戦機」と称して前線での活躍を期待する。その期待にこたえるように、いっときは中国戦線や南方で欧米の戦闘機と対等な戦いをしてみせたが、続かなかった。一言でいえば、この高性能機を戦争末期の日本は使いこなせなかったのである。別の言い方をすれば人材不足であった。製造にあたる工員の質は低下し、整備担当の整備兵のスキルも低下。とどめは疾風を乗りこなせるパイロットの不足であった。陸・海軍とも戦争前半で多くの熟練パイロットを失っていた。優秀な人材を養成し、維持し、補給するシステムが、戦中のわが国では確立されていなかったことの証左である。さらに踏み込むなら、軍の指導者層に共通した人命軽視の思想が、根底にあったと言えるのでないか。
2 右側面
(模型の制作)
ハセガワの1/48大戦機シリーズは、この疾風でピークに達した感がある。別の言い方をすれば、ハセガワ1/48大戦機シリーズは疾風以前と、疾風以後に明確に分けられよう。細部のパーツ割と表面ディテールの密度がはっきりと違うのだ。作った経験がある方は下のキット初販の年代をみて、記憶の中で比較してみられたい。
3式戦Ⅰ丁飛燕 1994
5式戦Ⅰ乙 1995
2式単戦 鍾馗 1995
4式戦甲 疾風 1999
1式戦Ⅰ 隼 2001
2式複戦 屠龍 2008
3 左側面(後方から)
私が想像するに、ハセガワのスタッフは疾風をキット化するために、日本にある実機を徹底取材し、「燃えた!」のでないか。「ヒコーキのハセガワ」と自認する以上、実機の完全再現を目指す!。そうした意欲とチャレンジ精神で、作りやすさを度外視した細かいパーツ割り、それに「超絶」と評される表面モールドに到ったのではあるまいか。発売当時の、このキットに対する模型誌各誌の絶賛は今なお記憶に新しい。
4 右側面(後方から)
そうしたわけで、ハセガワのスタッフの意欲に応えようと意気込んで制作したのだが、あちこちミスをしてしまったことを告白せねばならぬ。コクピット部のパーツはキャノピーも入れると30個ほどにもなるのだが、すべてを塗装し組み込んだはずなのに、レバー1本と配電盤が、箱の隅から出てきた。さらに、主翼の翼端灯と尾翼のライトはクリア・パーツが準備されているのだが、老眼の私には拡大ルーペをかけてもうまく接着できなかった。
5 手持ちのフィギュアたちと
塗装は筆塗りで、添付のデカール(22戦隊の菊水マーク)を貼って仕上げた。夏で塗料がカブリ気味で、いつもよりムラが出た。ムラをごまかすように、汚しを少しきつめにほどこしてある。
かくして完成した疾風だが、ハセガワのスタッフの意欲に、モデラーとして十分にこたえた作りにならなかったと反省している。いつになるか分からぬが、もう1機手掛け、今度は工作、塗装とも納得できる作品にしたいと思っている。
6 ボックス(小池繁男氏の描く22戦隊機)
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