Aero L-39C “Albatros” 製作記(Eduard 1/72)
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by Kiyoshi Iwama(ひやめし会) |
Aero L-39C “Albatros” Eduard (1/72) Box Artより
チェコで開発、製造されたAero L-39 アルバトロスは、日本ではあまりなじみのない飛行機です。2013年にこの飛行機を使用するフランスの民間エアロバティックチーム、”Breitling Jet Team”が来日し、華麗な演技を披露し注目を浴びました。その時のスマートな飛行機のイメージが記憶に残っていたからでしょうか、その後行きつけの模型屋さんでこのキットを見つけ、購入しました。しかも米空軍のマークを付けた珍しいものでした。その後ストックになってしまったのですが、ようやく最近になって完成させました。
話は変わりますが、本機は2022年に公開されたトップガン・マーヴェリックでは空撮用のカメラ機に採用され、ノーズ先端部に撮影用カメラを取り付け、戦闘機の飛行シーンなどの撮影に使用されています。小型の単発機ですが機動性に富み、飛行特性の優れた機体のようです。それはカリフォルニア州に根拠地を置く民間のテストパイロット養成学校NTPS(National Test Pilot School)で仮想敵機として採用されていることからも推測できます。 |
実機紹介
東西冷戦時代、ワルシャワ条約機構軍の練習機として運用されていたL-29”Delfin”の後継機として採用されたのが、L-39”Albatros”です。開発・製造したのはL-29を生産したチェコ(当時はチェコスロバキア)のAero-Vodochody社。試作機の初飛行が1968年11月4日というので、随分息の長い飛行機です。1970年代に入って量産が開始され、チェコスロバキア、ソ連、東ドイツの空軍で採用されました。ベルリンの壁崩壊後はチェコ、スロバキア、ロシアの空軍の他、旧ソ連の衛星国、中東、アフリカ、アジア、中南米など世界45か国の軍民で使用されています。基本的には複座の高等練習機ですが、対空・対地の武器の搭載が可能で、一部では軽攻撃機としての運用実績もあります。
今回製作した機体についても少し調べてみました。1981年にAero-Vodochody社でL-36Cとして製造され、ソ連空軍で運用されていました。1993年にウクライナ空軍に移管され、2001年3月にアメリカに渡りNナンバー(N439RS)を取得します。2004年1月にTeton Warbird Training Centerに移管、そしてエドワーズ空軍基地の第412航空団第455飛行試験飛行隊(412thTW/455thTFS)にリースされました。リースは2005年3月までの期間で、その間米空軍は本機に00-0439のシリアルナンバーを付与しています。その後個人に引き取られエアーレースに出場したりしていますが、塗装は米空軍時代のままだったようです。
L-39Cの基本要目は以下の通りです。
乗員: 2名
全長: 12.13m
全幅: 9.46m
全高: 4.77m
自重: 3,455kg
最大離陸重量: 4,700kg
最大速度: 750km/h@5,000m
上昇率: 1,200m/分(海面レベル)
エンジン: Ivchenko Ai-25TL×1基
最大推力: 1,710kg
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L-39C “Albatros” Eduard(1/72)
製作
パーツの種類が27種で使用しないものもあるため、実際には25種ほどでパーツ数にすると60点ほどのキットです。すぐに出来上がると思ったのですが、以外に時間がかかってしまいました。仮組をしてみるとエデュアルドのキットとしてはパーツの精度が少し甘いようです。キャノピーは薄く、透明度も良いのですが胴体との合いが今ひとつでした。デカールは薄くてフィットしやすい良質のものでした。本機に関する手持ちの資料は皆無で、ネットで調べた情報を参考に工作に取り掛かりました。以下に工作の様子を紹介します。
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1.コクピット
まずはコクピットから始めます。コクピットは床サイドコンソール前後席分がモールドされたものと、前後席の計器盤から成ります。キットはウィークエンドバージョンのため計器盤、サイドコンソールともデカール仕上げです。それでもパーツには計器のモールドが施されているため、デカールを軟化剤で馴染ませて貼り付けました。(写真1)がサイドコンソールの付いたコクピット床部。(写真2)が前後席の計器盤です。左が前席用です。ペダルは別部品で塗装前に計器盤の支柱に接着しています。
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(写真1) コクピット床部
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(写真2) 前後席の計器盤
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次にコクピット床部に計器盤とそのグレアシールド部、そして操縦桿を取り付けるとコクピットが完成です。(写真3)
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胴体は左右二つ割りで、コクピット内側には内装のモールドが施されています。コクピット内はライトガルグレイですが内装部分とエアーインテイク内面は、インストの指示通りダークイエローに塗装しました。(写真4)さらに胴体中央部にはエンジンの圧縮機フロントファンを、排気口手前には最終段のタービンファンを取り付けます。それらが(写真5)で左が隔壁にモールドされたタービンファン、右が圧縮機ファンです。
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(写真4) 胴体内側
(写真5) エンジン圧縮機ファンとタービンファン
さらに後席の背面にはコクピットの隔壁、前後席の境に硝子板を取り付けます。(写真6)隔壁の後方に圧縮機ファンが見えます。
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(写真6) コクピット後席の隔壁と前後席境界の硝子板
またコクピットを前部胴体に組み込んだ状態が(写真7)です。機首部分に取り付けているのは鉛の錘です。
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(写真7) 機体前部に組み込んだコクピット
次は胴体の左右接合と主翼の取り付けです。主翼は左右一体の上面パーツと下面パーツを接着するだけです。その後整形が終われば、下から胴体に取り付けます。この接合部分があまり合いが良くなく、パテも使って修正したのですが、思った以上に時間がかかってしまいました。組み上がった状態が(写真8)です。この状態では、まだエアーインテイク部は付いていません。
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(写真8) 主翼を取り付けた状態
エアーインテイク部から胴体内のエンジン圧縮機ファンが見通せるので、エアーインテイク部の内部は事前に白で、リップ部をグンゼのスーパージュラルミンで塗装しました。また組み立て後の塗装が難しい、インテイク部の境界層制御板の裏面とその対面の胴体側面を白で塗装しました。さらにインテイクリップ部の金属部分をマスキングし、機体に取り付けました。塗装が剝がれてしまいますが、インテイク部と胴体の繋ぎ目の段差をなくし、スムーズに整形しました。(写真9)これで塗装の準備が整いました。 |
(写真9) 塗装の準備の整った状態
機体全面をインシグニアホワイト(FS17875:Mr.Color C316)で塗装しますが、その前に排気口周辺を黒鉄色に銀を少量混ぜて塗っておきます。乾燥後マスキングして全面にインシグニアホワイトを吹き付けました。乾燥後マスキングを施し、主翼端、水平尾翼端、機首をインストの図や実機の写真を参考に赤に塗りました。この赤はMr.ColorのC3です。塗り終えてマスキングを外した状態が(写真10)(上面)と(写真11)(下面)です。
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(写真10) 塗装を終えた機体上面
(写真11) 塗装を終えた機体下面
次にデカールを貼ります。デカールは良質で貼り易いものでした。数量も少なく、デカール貼りが苦手な筆者にとっては大変助かりました。(写真12)がデカールを貼った機体上面、(写真13)が下面です。機首上面のグレアシールド塗装部分もデカールです。 |
(写真12) デカールを貼り終えた機体上面
(写真13) デカールを貼り終えた機体下面
最後にコクピットに座席を固定し、ウィンドシールドと前後席のキャノピー、そして脚やアンテナ類、ピトー管、ドロップタンクなどを取り付ければ完成です。機首下面とコクピット後方のTACANのアンテナはキットになかったのでプラで板自作しました。白い機体のこともあり、墨入れは動翼の可動部分のみとし、最後に半艶のクリアーを吹いて色調を整えました。(写真14~18)が完成したL-39C アルバトロスです。 |
(写真14) 完成したL-39C Albatros
(写真15) 完成したL-39C Albatros
(写真16) 完成したL-39C Albatros
(写真17) 完成したL-39C Albatros
(写真18) 完成したL-39C Albatros
実機もコンパクトな機体ですが、出来上がったキットも全長が16㎝程の可愛いモデルです。キャノピーと胴体の隙間など修正しきれなかったところもありますが、テストパイロットスクールのマーキングを付けた白い機体は、気に入りました。
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