Home  >  川崎ベル47G-2「はるかぜ1号」 (フルスクラッチ1/32)> フルスクラッチビルド&ソリッドモデル>2025年11月号


川崎ベル47G-2「はるかぜ1号」 (フルスクラッチ1/32)

by Flappingwing



実機について
 川崎ベル47G-2は、第二次世界大戦後の西側諸国でベストセラーとなり、小型ピストンエンジンヘリの代名詞となった米国Bell Helicopter社のModel47型を、日本の川崎航空機(現在の川崎重工)がライセンス生産した機体です。Model47シリーズはイタリアのAgusta社や英国のWestland社でも生産され、生産総数は約5,600機といわれています。
巨大な金魚鉢のような風防ガラスを被ったキャビンの背後にむき出しのエンジンとトラスフレーム、パタパタと特徴的な音を立てて回るシーソーローターと、実に特徴的なデザインです。
機能をそのまま形にした飛行機械といった感じで、何ともいえない味わいがあります。それにしても温室の中のような操縦席は、夏場はさぞ暑かったこととでしょう。

はるかぜ1号について
  はるかぜ1号(JA7047)は、警視庁が日本の警察機構として戦後初めて導入したヘリコプターで、その後各地の道府県警に配備されていく警察ヘリの先駆けとなりました。
1959年に配備されて以降、大きな事故に遭うことなく無事に勤め上げて1976年に退役、その後はレストアされ都内の警視庁広報センターに現物展示されています。

作例について
 作例は、このはるかぜ1号を1/32スケールで再現したフルスクラッチモデルです。3Dプリンターで出力したパーツを組み上げています。
トラスフレーム再現は光硬化型3Dプリンター導入当初からの課題でしたが、造形サイズと解像度が向上した新型プリンター導入を機にトライしました。



データの作成
 Model47は有名機なので、フライトシミュレーターソフトなどのCG用に使えるデータセットがいろいろ公開されています。データ作成の参考として、価格が一番安かったものをネットで入手。
この元データ(メッシュ形式)をテンプレートとして、CADソフト上で編集しやすいソリッド形式のパーツに少しずつ置き換えました(モニター画面の中でマッチ棒細工を組み立てる要領)。
通常のプラモデル製造で使われるインジェクション成型と違って3Dプリントでは型抜きの方向を気にする必要がないので、複雑なトラスフレームやエンジンなどの形状も一体で作成してしまいます。

データの変換
  作成したデータをスライサーというソフトに読み込み、3Dプリンターが理解できるNCデータに変換します。その際、パーツの回りにサポートという構造が自動で付加されます(プラモデルのランナーのようなもの)。

3Dプリント
 加工データをUSBメモリを介してプリンターに取り込みプリントスタートしたら、終了するまで気長に待ちます。今回、トラスフレーム部やメインローターブレードなどの大型パーツ出力には8~10時間程度要しました。出力されたパーツは、ビルドプレートからはがし、よく洗ってから、パーツ周囲を覆っている大量のサポートをていねいに取り除きます。使用したUV硬化レジンの成形強度が低く、細いパーツはぽきぽき簡単に折れてしまうのと、トラスフレームとサポートの形状がよく似ていて、うっかりパーツの方を切断してしまったりと難儀しました。

透明パーツの製作
  今回、3Dプリント時に透明タイプのレジンも使ってみました。灯火類などの小さなパーツには十分使えますが、窓パーツなどにそのまま使える透明度はありませんでしたので、Model47の特徴的な丸いキャノピーは、3Dプリントパーツを木型として使い、塩ビシートをバキュームフォーミングして作成しました。


組み立て
 3Dプリントパーツ同士の接着には瞬間接着剤が使えますが、成形用のレジンを接着剤代わりに使う方法もあります。UVライトを照射して硬化させますが、光が届かないところは硬化不良となるので、接着面が広いパーツの接着には向かず、むしろ表面仕上げなどに適しています。

生地完成
塗装前の画像。当初使っていたグレーのレジンを使い切ってしまい途中から透明タイプのレジンに切り替えたので、部分的に2色成形になっています(笑)。 


塗装
 銀一色のシンプルな塗装です。Mr.カラーの8番をそのまま吹きましたが、ここで問題発覚。トラスフレームに気を取られていてキャビンなどのパーツの表面処理をおろそかにしていたため、塗装したら3Dプリントパーツ特有の積層痕がパーツ表面にくっきりと浮き出てしまいました(まるで木目模様)。当該部の表面処理をやり直し再塗装しましたが、仕上がりが少し汚くなってしまいました。テール部のイエローは発色をよくするため下地に白を吹きました。単色の機体によいアクセントになります。
ローターブレードは実機ではFRPで被覆した木製だったそうです。下面つや消し黒、上面ライトグレーとしました。両翼端はイエロー、さらにその先端を片側赤、もう片側白で塗り分けています。

マーキング
  別の警察ヘリキットにおまけで入っていたデカールをスキャンして自作したデカールを貼りました。
警察機であることを示す旭日章(通称「桜の代紋」)は、現存する機体ではキャノピー前面とキャビン左右に描かれていますが、現役当時に撮影された写真では前面のみだったようなのでそちらを再現しました(キャビン下面にも描かれているかもしれないが確認できず)。


その他の細部
  運用期間中、機体各部に灯火やアンテナ類が増設されていったようですが、それらがまだない時期のクリーンな姿を資料写真を参考に再現しています。キャビン内計器コンソール前の無線機器と思われるボックス類は、実機のクローズアップ写真を参考にそれらしく再現しました。ローターマスト回りも作品の目玉としてできるだけ細かく再現しています。トラスフレームごしによく見えるエンジン回りは、実機ではさまざまな配管類がうねうね走っていますが、すっきり再現できる自信と気力がなかったので今回の作例ではオミット。でも完成してみたらスカスカで寂しい感じとなってしまいましたので、再度本機を製作することがもしあればその際はがんばってみたいと思います。

サイズ比較
  試しに同じデータを2/3サイズ、1/48スケールで出力した成型品を今回の完成品と並べてみました。ベル47は航空機としては小型なので、このサイズであれば全体を一体で出力できますが、細部の塗装はやりにくいですね。


参考資料
  各国で運用されていた当時の画像や数多く残る現存機の画像、解説記事がネット上でたくさん見つかるので製作の参考にしました。なかでも一番参考になったのは「航空歴史館 日本におけるベル47ヘリコプターの歴史 History of the Bell 47 Helicopter in Japan」というウェブサイトです(http://hikokikumo.net/His-C&M-Bell47-000-000-Index.htm)。実機の運用関係者だったと思われる方も記事執筆に加わられているようで、とくに国内生産された川崎ベル47についてはダントツの情報量であり、おおいに勉強になりました。サイト関係者の方々にこの場を借りてお礼申し上げます。

最後に
  今回は、最近導入した3Dプリンターでどこまでできるかを試すのが主眼の製作で、パーツが出力できたところでほぼ満足してしまい、その後の工程がやや手抜きになってしまい反省です。
でも、CADデータを手に入れるか自分で作成してしまえば、キット化されていないどんな機体でもお好みのスケールで形にできることを確認できたのは収穫です。
すでに一生かかっても作り切れないほどのキットをため込んでおきながらフルスクラッチでもなかろうとは思いますが、けっこう楽しいのでこの製作スタイルがしばらくは続きそうです。


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