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世界の名機コレクションシリーズ No.13  グラマンF-6ヘルキャット

フランス軍のF6F(イタレリ 1/72)

by 平針みなみ HIRABARI Minami



 フランスでは第二次世界大戦後、海外の植民地での運用を念頭に、F6F-5を導入しました。海軍ばかりでなく空軍でも使用。
 今回、これまで作る機会のなかったイタレリのキットでフランス軍のヘルキャットを作ってみました。
上の写真の左が空軍GCⅡ/6 ノルマンディー・ニーメンのF6F-5、右が海軍Escadrille 59SのF6F-5Nです。

イタレリ 1/72のF6F
 イタレリのF6F(1/72)は、scalemates.com によると2001年にまずF6F-3が発売され、翌2002年にはレベルからF6F-5が、イタレリからはF6F-5Nがそれぞれ出ています。さらに2005年にはタミヤのウォーバードコレクションNo.71としてF6F-3が出ています。そしてイタレリは2011年にF6F-3/5として二つのタイプのコンバーティブルキットを出しました。

 イタレリの旧キットのF6F-3とF6F-5Nを出してきて箱を開けてみました。写真左のグレーがF6F-3、ブルーがF6F-5Nです。基本は同一のもので、一部のパーツをそれぞれのタイプにあわせて差し替えています。
 F6F-3のキットの方は舵面の羽布張りの表現がフレームとフレームとの間を軽く抉ったような、古い簡易インジェクションキットで見かけた作りでした。一方、F6F-5Nの方は、普通の表現に改善されていました。念のためタミヤ版のF6F-3を段ボール積みの底から引っ張り出してきて確認したところ、改修されたものになっていました。
     

 透明部品は問題ありで、キャノピー部分の側面中央の縦フレームのモールドがありません。さらに大きな問題は、下の写真の左がF6F-3、右がF6F-5Nのパーツですが、ウインドスクリーンが入れ違っています。F6F-3のキットに入っているのがF6F-5のもので、F6F-5Nの方はF6F-3のものです。私のように両キットを持っていれば、交換すれば済むのですが。これは単なるミスではなく、メーカーの思い込みにあると感じました。
 なお、新しいF6F-3/5のキットでは当然ながら両方のウインドスクリーンのパーツが入っていますし、組立説明書の画像をネットで見た限りでは、組み立て指示も正しいものになっています。
 タミヤ版F6F-3の組み立て説明書の図を見ると、正しい形のウインドスクリーンが描かれていましたが、パーツはそのままでした。




   その他、とくに気になったところは次のようなところです。
胴体背面のアンテナ支柱取り付け用の穴の位置が左に寄りすぎているので、パテで埋めて中央寄りに穴を開けなおしました。
機体を組み上げて主脚を取り付けてみると違和感があったのでパーツをよく見ると、主脚柱とそれを脚庫内の穴に取り付けるダボとの角度がおかしくなっていました。胴体を、機首を左にして真横から見ると、主脚柱とダボが「く」の字になっているので、頭が少し上がったような姿勢になってしまいます。ダボを削って脚注が少し前に傾くように接着しました。
エンジンシリンダーのプッシュロッドが前面ではなく背面にモールドされています。
プロペラブレードがちょっと貧弱で、裏表が逆になっているよう。手元にあったハセガワのものを使っています。
機首の横から出ている排気管の後部が、カウリングから後方に少しのびているので削りました。
 主翼上面に編隊灯のモールドがなく、胴体下面に3色の識別灯のモールドもないので円形マスキングシートを貼って塗装しました。(左翼下面の着陸灯のモールドもありませんが、F6F-5にはないようなのでOK。)
ピトー管の表現が不十分。上部の三角形の部分が小さすぎてはっきりしない。
 主翼下面の空薬莢排出口の表現が、ただ長方形のモールドがあるだけで掘りこまれていない。
 胴体後部背面に二つあるライトは、ハセガワの1/48 F6F-5“フランス海軍”のキットの組立説明書にならい、前のものを削り取りました。実機写真を見ると位置が少し違うよう感じました。

            空軍のF6F-5
Wikipedia英語版には、「フランス空軍も 1950 年から 1952 年にかけて、インドシナでヘルキャットを使用し、4つの飛行隊に配備。その後、これらの部隊はF8F ベアキャットに移行した。」といったことが書いてあります。
スコードロン・シグナルの“VNAF South Vietnamese Air Force 1945-1975”の冒頭10ページにわたってインドシナのフランス空軍のことが書いてあり、それまで使っていたP-63Cの37ミリ機関砲が有効だったので、追加して配備したかったが入手できず、そこで48機のF6F-5を入手しGCⅡ/9 Auvergne、GCⅡ/6 Normandie Niemen、GCⅠ/6 Corseに配備したといったことが書いてありました。

 イタレリ(タミヤ)のF6F-3をF6F-5として作りました。イタレリのキットのパネルラインはF6F-5のものがベースとなっているということでしたので、F6F-3を作るより手間が省けます。
 塗装とマークは、1951年のインドシナにおけるGCⅡ/6 ノルマンディー・ニーメンの機体という設定です。ノルマンディー・ニーメンが以前使っていたP-63Cは、ドアのところに部隊マークである、赤い盾に2頭の金色のライオンが描かれていましたが、F6F-5にはありません。他の飛行隊では、カウリングや胴体に部隊マーク等が描かれているのにどうしてでしょうか。





   風防はF6F-3のキットのパーツそのままでF6F-5のものとなります。
 フランス空軍のF6F-5は、主翼の12.7ミリ機銃のうち一番内側のものを長砲身の20ミリ機関砲に換装しているケースがまま見受けられ、ノルマンディー・ニーメンの機体もそうなっていたので、エデュアルドのF6F-5のパーツを流用しています。
 ロケット弾を装備した写真が見つからなかったので、プラ板をカットしてロケット弾架としました。

 塗装は全面グロスシーブルーなので、クレオスのC365グロスシーブルーFS15042を全体に吹き付けたのですが、インドシナの環境で退色したイメージを出すため、上からC71ミッドナイトブルーとC14ネイビーブルーを適当に混ぜたものを軽く吹き付け、つやも抑え気味にして、少しくすんだ感じにしました。

 国籍マークは、Model Art Decal System 72-026 Hellcat/Sea Hawkのものを使う予定でしたが、外周のイエローの縁が版ずれしていたので、適当なデカールを探したところ、かなり以前のタミヤモデラーズギャラリーで購入した、T2M 1/48の“Republic F-84G Thunderjet Armée de l’Air”のものが同じ大きさだったので使いました。デカール自体はCarpena製です。国籍マークは、主翼と胴体ともに同じサイズのものですが、胴体のものは大きく、主翼のものは小さく感じます。

 胴体後部に2行にわたって機種「F6F-5」とシリアルナンバー(下3桁)「539」が小さく書かれています。前者はアカデミーのF6F-3/5のキットの米海軍機のラダー上部に貼るデカールを流用し、ジャンクデカールから当該数字を探して貼りました。


海軍のF6F-5N
フランス海軍は1950年から1953年にかけて、F6F-5を124機、F6F-5Nを15機購入し、インドシナでの戦闘に使用したということです。

 フランス海軍のF6F-5はわりとキット化、デカール化されることがあるのですが、F6F-5Nの方は見た記憶がありませんでした。今回、フランス軍のF6F-5の写真を探しているなかで、F6F-5Nの写真が3枚見つかりました。そこで今回はF6F-5Nの方を作ってみました。
その写真の1枚は不鮮明ながら、胴体にEscadrille 59Sを表す「59.S」の文字が確認できましたが、その後ろにあるはずの機番は、折りたたんだ主翼の影になっていて確認できません。この機体のレドームは白く塗られているように見えます。同じ写真で手前に写っているもう1機の方は、レドームが機体と同色のようです。こちらの機番等は見えません。国籍マークについては、奥の機体の右翼上面、手前の機体の左翼下面に描かれているのが見えるので、上下左右の4か所にあることがわかりました。(主翼の国籍マークは、海軍機、空軍機ともに左翼上面、右翼下面だけのケースもあります。)

 今回作った機体の機番の「7」は写真ではっきりと確認したわけではありませんが、britmodeller.comのフォーラムで59.S.4と59.S.7の写真は見たことがあるという方がいました。



 私が見つけた写真を見た限りでは消炎排気管ではないように見えます。そのため一旦接着した消炎排気管のパーツを剥がしています。またこの写真の機体は、胴体中央にドロップタンクを装備しています。
 なお、2枚目の写真の胴体左側の国籍マークの直前に機番の一部と思しき斜めの白いラインが見えますが、もしかしたら「7」の右側の棒かもしれません。もしそうであれば、レドームの先端を白く塗らないといけなかったのですが。

 3枚の写真に写っているF6F-5Nに共通する興味深い点は、主脚柱と主脚カバーが白く塗られていることです。主脚カバーが白く塗られているのは、3分割された主脚カバーの一番下の、脚収納時に主脚柱と一緒に90度ひねって主翼下面に収まるもののみのようです。
 風防パーツは、ハセガワのF6F-3を作ったときの余剰のF6F-5用のパーツを使ってみました。多少削り合わせした上で接着しています。
 20ミリ機関砲はキットのパーツが折れてしまったので、エデュアルドのパーツを流用しています。




 塗装は全面グロスシーブルーですが、F6F-5と同様に塗装しました。

 国籍マークは、F6F-5同様T2M 1/48の“Republic F-84G Thunderjet Armée de l’Air”のものです。F6F-5に貼ったところ、胴体のものが大きく感じたので少し小さいものにしようとしたのですが・・・
 胴体側面の「59.S.7」はジャンクデカールの切り貼り。サイズは、Model Art Decal System 1/72 72-026 Hellcat/Sea Hawkのデカールある57.Sのものを参考にしました。まず右側の胴体に貼ったところ、サイズが大きすぎたようであり、そのため文字の位置も上すぎたように見えます。そこで、胴体左側は文字の下のラインを下げて貼りました。胴体の国籍マークは少し小さいものにしようと思っていたのですが、なおさら文字が大きく見えるので、そのままにしました。
 海軍機の国籍マークの「イカリ」は、Model Art Decal Systemのものを貼っています。  


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