Home  >フィンランド空軍のハリケーンMk.Ⅰ(エアフィックス・アルマホビー・ハセガワ 1/72)> 特集 世界の名機コレクションシリーズNo.19 ハリケーン >2026年5月号

世界の名機コレクションシリーズ No.19 ハリケーン

フィンランド空軍のハリケーンMk.Ⅰ(エアフィックス・アルマホビー・ハセガワ 1/72)

by 平針みなみ HIRABARI Minami





 フィンランドはソ連の侵攻で始まった冬戦争の最中、軍の装備の質と量の充実を迫られていました。その一環として、イギリスから12機のハリケーンMk.Ⅰが供与されることになりました。1940年3月上旬に10機のハリケーン(HU451~HU460)が順次到着しましたが、空輸途中のスコットランドとノルウェーで2機(HU461とHU462)が失われてしまいました。到着後まもなく冬戦争が終結したため、実戦投入は翌1941年の継続戦争からとなりました。

◎フィンランドのハリケーンMk.Ⅰのトリビアのようなものをいくつか。
〇イギリスから到着したハリケーンは、国籍マークの青いハカリスティが白く塗りつぶされ、胴体にはシビルレジスターが記入されていた
 イギリスからフィンランドに空輸するにあたって、ソ連に難癖をつけられたくない中立国スウェーデンの上空を通過するため、民間機を装っていました。国籍マークの青いハカリスティ(カギ十字)を白く塗りつぶし、胴体側面にシビルレジスターを記入していました。
 HU460には、シビルレジスター「OH-IPL」を記入している写真が残っています。

〇イギリスから届いたハリケーンの国籍マークの青いハカリスティはかなり細かった
国籍マークのハカリスティに塗られていた白い塗料を落としたら、規定よりかなり細いハカリスティが現れた。(本稿最後に国籍マークについてふれます。)
フィンランドのハリケーンの塗装やマークは、イギリスで通常のRAF昼間戦闘機の迷彩の上にフィンランドの国籍マークやシリアルナンバーが記入されましたが、主翼の国籍マークの青いハカリスティの棒の幅を、胴体のそれの寸法で描いてしまったため、本来のものよりかなり細くなってしまったということです。
また、白い円も少し大きめのようです。

〇シリアルナンバーは3通りあった
シリアルナンバーの推移の例 : HU451 → HC451 → HC-451(サイズが大きくなる)
 当初は機種を示す英字コードが「HU」で、HU451~HU462の12機でした。
1940年5月末に「HU」から「HC」に変更され、空輸中に失われた2機を除く10機がHC451~HC460となりました。
上側面オリーブグリーンとブラックによる戦時迷彩(以下、オリーブグリーンとブラックの迷彩をこう表記します。)の導入にともない「HC」と数字の間にハイフンが入り、文字のサイズが大きくなりました。この段階までに失われた機があったので、HC-451、HC-452、HC-454、HC-455、HC-456、HC-460の6機のみがこのシリアルを付けています。

〇ファブリックウイングとメタルウイングが混在していた
 フィンランドのハリケーンはMk.Ⅰでも初期のもののようですが、ファブリックウイングのものとメタルウイングのものが混在していました。どちらだったのかはっきりしない機もあるようです。
 また、当初はファブリックだった機が主翼を損傷したため、やはり損傷したが主翼は使用できる他機のメタルウイングと換装したといわれている機があります。

〇アンテナ支柱はすべての機が初期タイプだった
 フィンランドのハリケーンのアンテナ支柱は、12機すべて初期のタイプの幅が変わらないものです。
ハセガワ1/72もアルマホビー1/72も箱絵は正しく描かれていますが、どちらのキットにもこの初期タイプのアンテナ支柱のパーツはパーツ化されていません。アルマホビーの組立説明書には図とサイズの記載があります。(ハセガワ箱絵のアンテナ線の張り方は疑問、胴体と垂直尾翼それぞれの支柱を1本のアンテナ線が結んでいるだけでは。)
 ファブリックウイングのエアフィックスのキットは、2013年にA01010とA02067とが出ましたが、A02067の方にこのタイプのアンテナ支柱のパーツが含まれています。
 また、2021年にエデュアルドから出た「ハリストーリー」コンボキットのプラパーツはアルマホビーのもので、それにレジンパーツやエッチングパーツが付け加えられています。このエッチングパーツに初期型のアンテナ支柱が含まれていますが、ちょっと細く感じます。

〇戦時迷彩のオリーブグリーンとブラックの面積比は2対1
 おおむね、オリーブグリーンが2に対しブラックが1という面積比で塗られていたとのこと。
 なお、この迷彩で塗られたのは、HC-451、HC-452、HC-454、HC-455、HC-456、HC-460の6機のみです。また、レンドリースのソ連機のハリケーンMk.Ⅱから再生したHC-465もこの塗装です。


  今回作った3社のハリケーンについて
キットの内容については本誌をはじめ各所で取り上げられていますのでとくに言及はしません。

エアフィックス
RAF迷彩のHC456と戦時迷彩のHC-451
エアフィックスのハリケーンMk.Ⅰの主翼は、ファブリックウイングを再現している貴重なものです。
HC456はA01010、HC-451はA02067のキットを使っています。ですので、HC456の方のアンテナ支柱は自作したものです。
HC456のシリアルとラダーの「6」およびパーソナルマーク「HKとそれを貫く矢」はインスケールのデカール、垂直尾翼の白い横棒1本の撃墜マークはインスケールのデカールに含まれていなかったので、またサイズもドイツ機の1/72の撃墜マークものより大きそうだったので、タミヤ1/48 Bf109E-4/7 Tropから流用。なお、インスケールの1/48のハリケーンのデカールには撃墜マークも入っています。なお、パーソナルマークの「HK」はパイロットのHeikki Kalajaのイニシャルからとっているのだと思います。
HC-451の方はハセガワのキットのデカールを使っています。


アルマホビー
RAF迷彩のHC452
この機体のラダーの「2」は、このRAF迷彩のものと、戦時迷彩になったときのものとでは少し違いがあります。戦時迷彩のときの「2」は上下が少し詰まっています。インスケールの1/72のデカールのAC 018には両方含まれています。今回の「2」はハセガワのキットのものを使っています。
なお、戦時迷彩のHC-452は、フィンランド中央航空博物館で保存されています。そのラダーはRAF迷彩に大きな数字「5」となっていますが、これはHC455から持ってきたものです。左側の垂直尾翼に2.5機撃墜を表す2本半の白い横棒が記入されています。
この機体のパイロットだったエスコ・ルオツィラ(Esko Kustaa Ruotsila、1913年6月6日 - 1943年5月20日)中尉は、4.5機撃墜のうちの2.5機をこのハリケーンで記録しています。のちにBf109G-2(MT-203)でソ連機との空戦中に戦死。


  ハセガワ
RAF迷彩のHU460と戦時迷彩のHC-460(同一機体)
シリアルナンバー等のデカールは、どちらもインスケールのものを使っています。
胴体後部のモールドがクッキリしすぎているので鈍くしています。


  次の写真の中央後方は、不時着したレンドリースのソ連機を改修したMk.Ⅱ HC-465です。


  〇迷彩塗装の推移
RAF迷彩



  左から右へと推移しています。
一番左のHU460はRAF迷彩にフィンランドの国籍マークとシリアルナンバーを記入したもの。下面は機首・胴体後部・水平尾翼がシルバー、主翼は胴体中心から左が黒、右が白に塗られています。他の2機も下面はこの塗装です。
中央のHC456は、1941年6月からの胴体後部に幅50cmの黄色い帯が入り、主翼端下面も黄色く塗られた状態のものです。胴体中心線から翼端までの長さの2/3の位置から翼端までが黄色です。この境界線に国籍マークの中心がきます。
一番右のHC452は、1941年8月からの機首も黄色に塗られた状態のものにしています。その部分の長さは75cmということです。(なお、ラジアルエンジンの機体の場合は50cmです。)
 この3機の国籍マークは自作のため、ハカリスティの幅など不揃いです。

戦時迷彩
 各国から送られてきた航空機は、それぞれの国の迷彩などでフィンランドに届き、その塗装のまま運用していたようですが、1940年9月30日、修理やオーバーホールの際などに、上側面オリーブグリーン(近似色としてFS34096)とブラック、下面アルミドープの戦時迷彩に塗り替えることになりました。
 ハリケーンで最初に戦時迷彩が施されたのはHC-454で、1940年12月11日のこと。続いてHC-451が1941年8月10日。この2機の下面はアルミドープに塗られました。翌年、HC-455、HC-456、HC-460が迷彩を施されましたが、これらの3機は1942年5月7日付けの指令により、下面がライトブルーグレーで塗られました。残りのHC-452に戦時迷彩が施されるのは1943年になってからのことでした。
 戦時迷彩当初の下面アルミドープでは目立ってしまうのでどうしようか考えていた矢先、ルフトバッフェのDo17Zがフィンランドに飛来し、その下面のRLM65を見て下面色をライトブルーグレーに変更したということです。このようなことで、ある程度の期間ダークアース/ダークグリーンの迷彩機とオリーブグリーン/ブラック(下面はアルミドープのちにライトブルーグレー)のものが混在していました。
左のHC-451の下面はアルミドープ、右のHC-460はライトブルーグレー(RLM65)。


  〇フィンランドの国籍マークについて
・フィンランドの国籍マーク(1918年~1944年)
 スウェーデンのエリック・フォン・ローゼン伯爵による、ローゼン家に代々伝わる幸運のシンボルの青いカギ十字の2機のツーリンD型から発したフィンランド空軍の国籍マークについて、明確な寸法・比率は、1934年に制定された規程に示されています。


  白い地色に青い(ウルトラマリン)ハカリスティということで、図を示しています。それによると、ハカリスティの棒1本の幅を「a」とすると、その隣の白い部分の幅も「a」で、ハカリスティは5a×5aの正方形に収まることになります。また、国籍マークの白円の直径は、7.2aとなっています。ということは、ハカリスティの収まる正方形の1辺の長さが5aで、その対角線の長さは5a√2で、ほぼ7.07aとなります。円の直径が7.2aなので、ハカリスティは白い円の円周に内接せず、少し隙間(0.065 a)があることになりますが、模型では接してといっていい長さです。
この規程には「ハカリスティおよび円の輪郭線は描かない。」とも書かれています。 


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