Home  > ルーマニア空軍のBf109G-2、G-6(ファインモールド 1/72)>特集 世界の名機コレクションシリーズNo.20 Bf109F/G>2026年6月号

世界の名機コレクションシリーズ No.20 Bf109F/G

ルーマニア空軍のBf109G-2、G-6
(ファインモールド 1/72)

by 平針みなみ HIRABARI Minami

ルーマニア空軍のBf109G-2とG-6を、ルーマニアの国籍マークの推移とあわせて作ってみました。




1940年代、Bf109などの軍用機は3種類の国籍マーク、ラウンデル → ミハイ十字 → ラウンデル → 星型と推移していました。次の写真の左から右へとそれが見て取れます。



  1.ルーマニアでは1913年から国旗の3色によるラウンデルが使われていました。当初の数年は中心から黄・青・赤でしたが、1915年からは青と黄の位置が変わり、青・黄・赤となってこれが長く使われています。
2.1941年5月、長年にわたるソ連との領土問題や親独政権の誕生で、枢軸国側についてソ連へ侵攻することになり、国籍マークを先端がM字状で黄色い十字に青いフチ、その中心に小さく3色ラウンデルを入れたミハイ十字に変更しました。
3.1944年に連合国と講和し、9月から国籍マークをラウンデルに戻しました。
4.大戦後の1947年、ソ連の影響下で国王を退位・亡命させ人民共和国となり、国籍マークもラウンデルの外側の赤い円を星型に変形したものとなりました。このマークは、チャウチェスク時代の1985年にラウンデルに戻されています。ナショナリズムの高まりと長年の反ソ感情がその一因なのかもしれません。なお、ハンガリーやブルガリアも大戦後、同様のデザインの国籍マークを使っていましたが、この両国がデザインを変更したのはソ連崩壊後のことです。(参考文献1)

以下、国籍マークの違う3機を見ていきます。

1.ミハイ十字

イオアン・ディ・チェザレ予備中尉(Lt. Av.(r) Ioan Di Cesare)機 Bf109Ga-2 白227
この機体は、参考文献2では、ブラショヴのIAR工場で組み立てられたBf109Ga-2であるとしています。垂直尾翼の白い機番227の下に、W. Nr. 14646と記入されています。
イオアン・ディ・チェザレは、出撃210回、16撃墜確実、3機不確実。(参考文献3)(ルーマニアのパイロットの撃墜数については資料によって違いが散見されます。)
なお、ルーマニアでは1944年2月に独自の戦果算定システムを採用しています。単発機は1、双発・3発機は2,4発・6発機は3とし、過去に遡ってカウントしています。今回は、この数値は取り上げませんでした。

迷彩塗装はSDEソリッドカラーのG4(RLM74)、G5(RLM75)、G6(RLM76)を使用。マーク類はテクモッドのデカール72050を使っていますが、胴体右側のシェブロンと機番227が破損したので、ライジング・デカールRD72-017のそれを貼っています。そのため、よく見ると左右で形状が違っています。

機首下面、主翼端下面、胴体後部の帯が黄色で塗られています。

スピンナーの塗り分けは、資料によって前後で塗り分けたり、1色としていたりするものがありますが、1/3が白くなっている写真がありました。残りの2/3の色は資料によって、RLM70ブラックグリーン、黒、RLM71ダークグリーン説がありました。今回はブラックグリーンにしています。
スピンナーのカラーは、デフォルトというか工場出荷時はブラックグリーンで、東部戦線、西部戦線、本土防衛などの戦域によって塗りなおされたようです。その際のグリーン系は、RLM71ダークグリーンとしている資料があります。(参考文献2)

 次の写真はイオアン・ディ・チェザレのBf109E-3とG-2で、どちらにも機首に“Hai Fetiţo”、左側胴体キャノピーの下にパイロットの名前Ioan Di Cesareの頭文字IDCを重ねたものがあります。


  後日談ですが、イオアン・ディ・チェザレは軍を離れて3年後、セクリターテ(秘密警察)に逮捕され、暴行・拷問を受け1年間投獄。証拠不十分で釈放されましたが、引き続きセクリターテから嫌がらせを受け続けたということです。しかし、最終的にはルーマニア空軍の中将にまで昇りつめ、ルーマニアの航空界にも貢献しました。

2.ラウンデル



テオドル・グレチェアヌ中尉(Lt. Av. Tudor Greceanu)機 Bf109Ga-6 黒316
 この機体はIARのブラショヴ工場で最初に作られたGa-6ということです。

テオドル・グレチェアヌは、出撃347回、空戦100回以上で、18機撃墜確実、5機不確実。(参考文献3)

迷彩塗装はSDEソリッドカラーのG4(RLM74)、G5(RLM75)、G6(RLM76)を使用。
 この時期の塗装では、翼端が白く塗られていますが、その幅は広いものと狭いものとがありました。この機体がどちらなのかわかる写真が見つかりませんでしたが、参考文献2に掲載されている側面図は狭い方にしていたのでそのように塗りました。なお、ハセガワ1/48 メッサーシュミットBf109G-6 ‘ルーマニア空軍’のキットの箱絵に描かれた「赤2」は幅が広い方です。この機体は、ルーマニアのトップエースであるコンスタンティン・カンタクジノが、Fw190を撃墜直後にBf109Gに奇襲され、胴体着陸した際の乗機のようです。(参考文献3)
 
この機体のマーク類のデカールは寄せ集めです。国籍マークのラウンデルは適当なものが見つからなかったので、ダコ・プロダクツのDCD7270ベルギー空軍のスピットファイアの中から適当なサイズのものを選び、中心の黒い部分をブルーで塗っています。ラダーの3色はテクモッド72050に入っているデカール。垂直尾翼の機番「黒316」は、タミヤ1/48のP-47Dバブルトップのシリアルナンバーがサイズ的に合いそうだったので数字を抜き出して使っています。

3.星型



ボレス・コンスタンティン中尉(Lt. Av. Boreş Constantin)機 Bf109Ga-6 赤319
この機体もIAR製のBf109Ga-6で、機番317以降の機体は「ボイレ」の後部が後に延びているユニークな形状のバルジに特徴があります。ファインモールドのG-6は、「ボイレ」の前後が別部品になっているので、ボイレ後部のパーツのかわりにプラ板を加工するなどして適当な形状のものを取り付けることになります。今回は、ハセガワ1/72 Bf109E(旧)の胴体の増槽ラックを使いました。現物合わせで前部をカットし、後端は適当に整形しています。旧キットのものを使っているのは、その方が平べったく、ボイレ前半と高さをあまり調整しなくて済むからです。

この機体は、1952年7月5日にユーゴスラビアへ亡命した2機のBf109のうちの1機で、編隊長であるGh. Gheorghiu大尉の乗機は機体番号363、そのウィングマンであるボレス・コンスタンティン中尉の乗機がこの機体番号319です。
この時期のユーゴスラビアは、ソ連やその衛星国とすでに決別していたことから亡命先として選んだのでしょうか。

 この機体のもう一つの特徴はその塗装で、プロペラブレードなども含め全面ライトブルーグレーとなっています。この色はソ連機の下面色AMT-7のようです。この機体の写真(亡命で着陸した際に右脚を折った写真)を見るとわりと明るく見えるので、そのイメージで手元にある適当なカラーを混ぜて塗っています。
 国籍マークは、たまたま手に取ったMARK Iのデカール付きの冊子“Ilyushin Il-10”にルーマニアの国籍マークも入っていたので貼りました。このデカールの星型は根元が少し太めになっていて、赤319についての塗装図にある通りのものです。ただ、サイズは少し小さいように感じます。垂直尾翼については、タミヤ1/35 T-62の赤い星のデカールを貼り、その中心にファインモールドのデカールのミハイ十字から中心の青と黄の部分を切り取って貼り付けました。機番の319は、フジミ 1/72 MiG-21PF(初期)に入っている数字デカールにちょうどいいフォントのものがあったのですが、サイズが大きすぎたので、多少の形状の違いには目をつむりフジミ1/72九九艦上爆撃機の数字デカールを使いました。

  参考文献
1 苅安望、『世界の軍用機国籍標識図鑑』、えにし書房、2022.
2 Morosanu, T. L. & Melinte, D. A. “Romanian Fighter Colours 1941-1945” 、MMP BOOKS、2010.
3 デーネシュ・ベルナード、柄澤英一郎訳、『第二次大戦のルーマニア空軍エース(オスプレイ軍用機シリーズ45)』、大日本絵画、2004.


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