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<日本航空史> ロータリーエンジン
by
加藤 寛之
プラモデル コラム
ロータリーエンジンと聞けば、たぶん東洋工業(現マツダ)が実用車(初期には、コスモとか、ファミリアとか、カペラとか)に載せたエンジンを思い浮かべる人が普通(これでも少数だろう)で、小川精機(OS)の模型飛行機用エンジンとなると知っている人はさらに少ないと思う。
だが、今回のロータリーエンジンは、そのオムスビ型シリンダーが8の字に回るバンケル方式のエンジンのことではない。第一次世界大戦時代の、星型レシプロエンジンがグルグルと回転する方式のロータリーエンジンのことだ。
木村秀政監修『航空学辞典』(地人書館、1959年)には「回転[シリンダー]式発動機」の項があって、「冷却が不充分であると考えられていたために生まれた」「回転部分の重量が重いためにジャイロ作用が誘起られ、これが操縦に悪影響を及ぼす。またシリンダ群を回転させる機構などが複雑になるなどの欠点があり、今日では全く使用されていない」とある。同様のエンジンを搭載した第一次世界大戦の戦闘機であるソッピース・キャメルは左右の旋回時にかなりクセがあったことが、航空情報別冊『航空史をつくった名機100』(1971年)に書いてある。このジャイロ作用が原因だろう。
私がこの冷却方式のエンジンを最初に気付いたのは、航空情報臨時増刊『プラモ・ガイド 1967』の「フォッカーDr1」の記事を読んだときだ。そこに「新しいレベルでは、エンジンがカウリングとこすれてまわらないことがある。この機体はプロペラと一緒にエンジンもまわるのだから、そのつもりで工作すること」と書いてあった。当時の私は、エンジンがまわるって何? で、そのときに理解できなかったことを覚えている。この本は発行時に買ったわけでないので、いつ読んだのかはハッキリしないが、特にこの時代のエンジンに興味もないのでかなりの年数で気にせず、忘れていた。
さて、このロータリーエンジンの場合、エンジンを囲むカウリングはエンジンの冷却や気流を整えるためのものとはいえない。エンジンの回転とともに排気やオイルが吐き出されるので、周りを覆って操縦席へそれらを飛ばさないことが大事な機能なのだ。こんなエンジンだから、第二次世界大戦機のエンジンカウリングにあるカウルフラップみたいなものは要らないというか、あってはマズイのだ。
では、どんな感じに装着されているのか。掲載写真は当時の絵葉書で、機体はソッピース・パップだと思う。カウリングを外して整備をしているシーンで、エンジンの後ろにある円盤で排気やオイルを受け止め、それらを風とともに下にある穴から吐き出す単純な仕組みのようだ。プラモデルのエンジン接着方法みたいだし、エンジンから延びるシャフトもまるでプラモデルで、とてもおもしろい。人物の動きがかたいし、円盤がまったく汚れていないので、撮影用の再現シーンだろう。
カラーの方もパップで、カウリング後方は開口せず、しっかりと閉じていることが分かる。これはモノクロ写真を印刷技術でカラー写真っぽくした、カラー写真とは異なる彩色絵はがき。近年はAIによるモノクロのカラー化で着色写真を見る機会が増えたが、この絵葉書はちょっと手抜きのようで色数が少なく、なんとなく茶色っぽすぎる感じでもある。そうはいっても、実物が見られた当時に着色したものであるし、これを売る店があり、買うお客さんがいたのだから、それなりに妥当な色なのだろう。
記念印をみると1920年とあるから、この絵はがきは100年前を越えている。飛行機の形はだいぶ進化したが、軍事力を見せつけて平和を語る感覚は100年経っても変わらないようだ。この博覧会は何だ、と検索したらAIが教えてくれた。1920年(大正9年)7月に京都の岡崎公園で開催された「平和記念航空博覧会」のことで、同年5月にローマから来日したイタリア人飛行士アルトゥーロ・フェラリンのSVA機を展示したイベントだという。世界初の欧亜連絡飛行の偉業を記念し、フェラリン自身が開場式で挨拶し、機体組み立てを指導するなど熱狂したそうだ。
SVA機は、本日本航空史の2022年6月号でとりあげている。
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