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特集 スモール スケール

  M4A1 シャーマン (エッシー 1/72)

  by Takafumi



 エッシーから発売されていた1/72スケールのM4A1 シャーマンを製作しました。エッシーはすでに存在しないメーカーですが、このキットは現在イタレリから発売されています。私が購入した製品はエッシー アーテル (ESCI ERTL) 版です。総じて見ると組み易いキットでした。部品の接着位置を決めるダボとダボ穴の位置がずれている箇所があるなど、いくつか難点もありますが、修正は容易でした。昔の1/72あるいは1/76スケールの戦車のプラモデルに付属する履帯は、裏面にはモールドが無いポリ製のベルト式の部品が定番でしたが、このキットにはプラ製の連結式履帯が付属しています。組み立て説明書は、車体前部に接着するディファレンシャルカバーの部品の向きが間違って表記されているなど、一部に誤りがあります。イタレリ版の説明書が訂正されているかどうかは手元に現物がないので未確認です。



  このキットが再現しているM4A1は後期型車体です。後期型車体は、車体上面にある乗員用ハッチが以前の生産型より大きくなったのが特徴です。大型化したハッチに由来する「ラージハッチ」あるいは「ビッグハッチ」と呼ばれることがあります。M4A1ラージハッチ車体に載る砲塔は76mm砲搭載型が標準仕様ですが、キットが再現している砲塔は75mm砲搭載型です。M4A1ラージハッチ車体に75mm砲搭を載せた車輌は実在しましたが、生産数は少なかったとのことです。また、WW2当時に撮られた写真も少ないようで、今回見つけることできた当時の写真は数えるほどでした。搭載された75mm砲搭は後部上面が高い位置にある「ハイバッスル」と呼ばれているタイプだけが、今回参考にした資料写真に写っています。また、砲塔前部右側の厚さを増した「チークアーマー」と呼ばれている仕様であることも共通しています。現存車輌がイギリスのスラプトンとフランスのノルマンディーにあり、インターネット上で写真画像を確認できます。現存車輌はどちらも水陸両用のシャーマンDD(以下DDと記します。)に改造された車輌です。また、戦時に撮影されたものもDD用に改造された車輌ばかりです。75mm砲塔を搭載したM4A1ラージハッチは全てDD仕様だったのかもしれません。
 本作はDDではないノーマルの車輌として製作しました。先述したように入手できた写真に写っているのはDD仕様だけなので、車体の仕様の一部は76mm砲搭載型を参考にしました。



 75mm砲搭を載せたM4A1ラージハッチの鋳造製の車体上部、いわゆるハル部分の側面には、板状に盛り上がっている箇所が散在しています。ハル側面に散在する突出部は、車内の弾薬庫を防御するために増厚した部分です。M4A1 は当初、車内の弾薬庫を防御するために鋳造車体の要所に増加装甲板を溶接していました。M4A1を製造していたいくつかの会社の内の一部で、鋳造車体を製造する段階で要所の肉厚を増す工程に変わったとのことです。
 キットのハル側面には増厚して突出した部分が再現されていませんが、この生産型の特徴なので、プラ板を貼って再現しました。板のへりにある曲面は、プラ板を車体に貼り付ける前に紙やすりで削って再現しました。車体に貼り付けた後では板の境にあるハル本体も削ってしまう心配があったのと、貼り付ける前に削るほうが作業が容易であると判断したからです。プラ板を貼り付けた後、板のへり以外の曲面を紙やすりで削り出しました。鋳造車体に増加装甲板を溶接したのではなく、突出部がある鋳造車体であることを意識しました。弾薬庫が被弾して炎上、誘爆する問題は、後に湿式弾薬庫を装備したことで改善されました。
 ハル後面下方にある切り欠きの形が実車と違うので、切り欠きにプラ板を貼り足して形を修正しました。キットの切り欠きは乗員用ハッチが小さかった頃の仕様を再現しているようです。
 キットに付属する75mm砲塔は実車と同じハイバッスル砲塔です。先述したチークアーマー砲塔の増厚分を、ハル側面を増厚した時と同じ手順で再現しました。
 ほかに手を加えた箇所は、ディテールアップと呼ぶべきものばかりです。車体と砲塔の所々にある吊り上げ用フックを真鍮線で作り直しました。サイドスカートを外している状態にしたので、取り付け用金具を、帯状に切り出した真鍮板で再現しました。砲塔にある機銃架は、真鍮板、真鍮パイプ、プラ丸棒材などを組み合わせて作り直しました。



   塗装はオリーブドラブの単色です。国籍マークはデカールではなく塗装で再現しました。国籍マークを塗装で表示する手順は本誌2025年2月号に掲載された「M4A1シャーマン カリオペ (モノグラム 1/32)」と一緒です。オリーブドラブを吹き付ける前に国籍マークを表示する箇所をつや消しの白で塗装して、その上にマスキング用の星型のシールを貼りつけました。オリーブドラブは手元にあったMr.カラーとガイアカラーのなかから混色して作りました。



   小さい模型が存在感を放つにはどうすればいいのか思案した結果、ディオラマベースに展示しました。
 ディオラマの中にアイキャッチとして針葉樹を配置しました。主役はシャーマンなので、針葉樹が主役を食ってしまわないように注意しました。針葉樹の幹はバルサ材を削りだしたものです。幹の表面をワイヤーブラシで擦って樹皮を表現しました。幹の表面に水で薄めた墨汁を筆塗りして着色しました。バルサ材に墨汁で着色して実感を出す手法は、昔読んだ書籍で得た知識です。幹にキリで穴を開け、枝葉に見立てたドライフラワーを差し込み、接着しました。幹に差し込むドライフラワーの茎に木工用ボンドを塗布して接着しました。幹の頂点付近は細くて穴を開けられないので、枝葉を樹皮に直接接着しました。枝葉を樹皮に直接接着したときに使用したのはゼリー状瞬間接着剤です。今回使用したドライフラワーは過去に模型店で購入した製品です。ディオラマ用の製品が陳列されていた売り場で購入したもので、手のひらに乗るほどの大きさの袋に詰められていました。ラベルが無く、商品名は分かりません。元々大きな容器に入っていた製品を袋に小分けにして販売したものと思われます。薬液のようなものが葉の表面に付着していて、透明な袋越しからも葉が濡れているのが見て取れました。購入後、今回使用するまで未開封の状態で保管していました。
 ディオラマベースに使用したのは100円ショップで購入したフォトフレームです。フレームの内側の大きさはハガキ1枚分ほどです。フレームには養生としてマスキングテープを貼りました。また、裏板とフレームを木工用ボンドで接着してから地面を作る作業を始めました。
 高低差がある地面を作りたかったので、高くする部分には土台となる発泡スチロールの板片を接着しました。針葉樹が生える場所に配置する発泡スチロール板には、ベースに接着する前に幹の径より少し小さい穴を開けておきました。針葉樹を配置する際、幹の底部に木工用ボンドを塗り、発泡スチロール板に開けた穴にねじ込むように挿入しました。地面は本誌2024年2月号に掲載された「パンターG 後期型 (グンゼ産業 1/35)」のディオラマベースを製作した際に使用した軽量粘土で作りました。今回は「軽いねんど 黒」と「ふわっと軽いねんど 茶色」を混ぜたものを使いました。木工用ボンドをフレームの内側全面と接着済みの発泡スチロールに塗った後、粘土を盛り付けました。地面に生えている草は麻ひもをほぐしたものです。ディオラマの舞台を1944年の晩秋から初冬頃のヨーロッパ戦線と設定したので、枯れ草を表現しました。   


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