Home > グラビア > 連載 ソ連戦車 第1回 T-55A (タミヤ 1/35) 


T-55A (タミヤ 1/35)

 by タンクダンク

■ この連載について
 この連載は ソビエトの戦車を 毎月1機種ずつ、楽に作れる手間のかからないキットを選び、できるだけストレートに製作してコレクションしてみましょう!というコーナーである。 1年で12台完成のはずだから、気がついてみれば ソ連戦車はほとんどコレクションできた! ということになるはずであります。
 現代の戦車プラモは キャタピラも含め、全部の部品を接着しただけで 戦車の独特のスタイルが楽しめる。その後で全体塗装しても 結構満足な具合に仕上がる。 これって楽しいことだと思いませんか?
  第1回目は T-55A。 1/35では 過去にエッシー、トランペッター、スキフと発売されていたが、組立づらかったりと、今一つの出来だった。
 そこに2003年正月にタミヤから真打登場。その タミヤT-55A 1/35を取り上げる。今回は ソビエト軍仕様とし、対空機銃を装備しないバージョンを ストレートに製作した。




■ 実車について
 ソビエトが大戦後、T-34の発展を極めた形として開発したのがT-54とその改良型 T-55である。戦闘重量はM48パットン47.6トンに対し、T-55は36トンと3/4の軽量で、全長6.4m,全高2.4mと被弾性に優れたコンパクトな車体と半球形の砲塔に、55口径100mm砲を装備し、当時の西側各国の標準だった90mm砲を威力で凌駕した。(自衛隊の61式戦車も90mm砲。) 
 T-55はT-54のエンジンを強化し、弾薬搭載量を34発から43発に増加している。1960年代初頭に登場し、ソビエトだけでなく、チェコやポーランドでもライセンス生産され、共産圏各国にも輸出され、シリーズで10万台に達する 大ベストセラーとなった。現在でもまだ中東や東欧で使用続けられている。
 実はT-55を一躍有名にしたのは1960年代後半のソ連のチェコ進攻で、自由化しようとしたチェコをソ連がいきなりT-55で蹂躙し、「連帯」による自由化運動はあえなく踏みつぶされてしまったのである。当時は毎日のようにテレビでT-55が進撃する姿が報道され、高校生だった私には とはいえ 後部の2個の補助タンクと砲塔の主砲と連動する大きな赤外線ランプが特徴的でかっこよかったものだ。
 しかし、第1世代に属する戦車なので、中東戦争では、第2世代のイスラエルのメルカバには歯が立たず、ケチョンケチョンにやられてしまい、多くの残骸をシナイ半島にさらす哀れなことになった戦車でもある。


■ タミヤのキットは
 タミヤの T-55Aは実は2代目となる。 初代のT-55は1968年に発売されたもので、もちろん今の目から見ればラフなディテールということになるのだろうが、モーターライズでゴムキャタピラでよく走る好いキットだった。
 今回の2代目のT-55Aはデイテールを重視した完全なミリタリーミニチュアである。可動部は砲塔回転のみ。 この素晴らしいディテールでモーターライズで走ると本当にかっこいいと思うのだが、この35年で技術は進歩したのか? それとも退化したのか? 
 複雑な心境になるのは、モーターライズも経験した私のような世代だけだろうか。我々が住んでいるのはまだまだ 可動か,非可動かの ニ者択一しかできない時代なのかしらね。
 キットの出来はいわゆるタミヤスタンダードで 部品の合いもよい。パーティングラインも目立たない場所に設定されていて、手間もかからず、組み立て易い。 部品のモールドは繊細で 砲塔上面や砲カバーのモールド、赤外線ランプなども実感がある。




 また、接着と塗装が可能な素材の樹脂ベルト式のキャタピラがついていて、ありがたい。ディテールもよくて、実感がある。
 今回は転輪にキャタピラを強引に接着して キャタピラのたるみを表現している。 
 組み立て式の部品数の多いプラキャタピラは個々の部品の実感が一見あるとはいえ キャタピラの組み立てだけで半日以上の時間がかかるのが普通だ。ベテランでもうんざりすることもあり、忍耐の限界を超え、完成を前にしてあえなく沈没することもある。
 だから、塗装もできるベルト式のキャタピラは革新的な技術で、お楽グッズが登場したものだと思う。 その点はタミヤさんを もっと 評価してあげてもいいと思うのだが。
 また、 タミヤのキットは説明書の解説がわかりやすく、手順もよく考えられていて、その通りに 組んでいけば、ビギナーにも必ず完成を見ることができる。これは、当たり前とは言え、プラモデルの基本中の基本であり、うれしいことである。

製作

製作 サスペンションとホイール
 キャタピラは接着乾燥に時間をかけないと強度が出ないので、一番最初に両端を接着し、リング状に作ってしまうと良いだろう。
 後は説明書どおり、10個のホイールにポリキャップ小を入れてロードホイルを組んでいく。回転が利くようにポリキャップに接着剤をつけないようにと注意書があるが、実は接着剤がついても大丈夫なので気楽に作業しよう。(冷静に考えると、ミリタリーミニチュアなので、ホイールが回転できる必要はない。)
 サスペンションは ジオラマで可動状態を再現できるようにか わざわざ別パーツにしてくれている。
 戦車単体で作る時は片側5個、両側で10個のサスペンション部品を水平に揃えることが必要となるが、実質は前後端の第1第5サスペンションアームと ダンパー(A40,A41)で水平が決まるので、この4箇所を注意して接着する。好みで、内側の6個のサスペンションはフリーにしておいても構わない。
 ロードホイール、アイドラーホイル、ドライブスプロケットはポリキャップなので差し込むのみで済む。
 説明書ではここで 後パネルに4個の増加燃料タンク支持架A4を接着することになっている。しかし、増加タンクの受け面を平行になるように接着しておかないと 2本の増加燃料タンクが後で、ゆがんで取り付いてしまうので どうしても格好が悪くなる。 ここは、先に増加タンクを作っておき、この時点で同時に 増加タンクを接着して調整してしまうと良いだろう。 
 
 さてここでコーヒーブレーク。テレビでも見ながら、リフレッシュして 接着乾燥を待とう。




車体上部の組み立て
 D47とD48は D27の下にもぐりこむので 先に接着しておかないと、後では取り付けにくいので注意。
 後上部のエンジンパネルにメッシュを取り付けるようになっているが、説明書のメッシュ実寸図を切り取り、それを型紙にしてメッシュを切るとよい。この際に、型紙の裏には両面テープを貼っておくと作業がしやすい。
車体前部、後部は小部品が多いので、ピンセットなどを駆使して取り付けよう。
 前部のドライバーハッチは開閉選択式だが、ドライバー人形がついているわけではないので、実質は閉めることとなる。
 左側に道具箱、右側に4つの燃料タンクをとりつけるが、燃料タンクの接続パイプを追加してもよいだろう。 



■ 砲塔の組み立て
 砲塔には組み立てるタイプによって 内側からピンバイスでガイド穴を明けるようになっている。この時点までで ソビエト軍を作るのかチェコ軍かなど決心しておかねばならない。私は一番シンプルな対空機銃を装備しないソビエト軍バージョンを選んだ。
 砲塔側面のフックは0.3mm,手すりは0.5mmの金属線線で置き換えた。プラスチック製の手すりは後で折れたりして修理が必要になることが多い。それならば 最初から金属に置き換えた方が気が楽というもの。
 また、砲身は継ぎ目のスジが目立つと非常にかっこ悪いので、よく消しておくことが必要だ。
手すりは0.5mm金属線で置き換えた。根元はしっかりとパテで埋めておくこと






■ キャタピラ
 キャタピラのたるみは、車体上部とキャタピラの間にティシュペーパーをはさみ、キャタピラを転輪に強引に接着した。タミヤのキャタピラは普通のプラ用接着剤が使えるので、以外と簡単にできる。
 接着後は まあそれらしい感じがでれば良しとしよう。
キャタピラのたるみが表現されているだけで、見栄えが全然違う。ぐっと完成度が上がった感じがするものだ。
参考までに実車のキャタピラは第1転輪につくかつかないかの感じである。 (下写真)。

ティッシュをはさむ。

上部キャタピラのたるみは 転輪に 接着後 このようになればOKとしよう


実車写真 (T-54/55の中国ライセンス版 T-59) 北京博物館


■塗装
 ソビエト車は 塗装色のバリエーションが少なく、オーソドックスにグリーンの塗装としてみた。

 まず、筆で隅々まで くまなく N0.42 マホガニーにツヤケシ剤を加えて下塗り塗装する。キャタピラもホイール裏も全て塗ってしまう。 
 上塗りは No.136 ロシアングリーン2を隅のマホガニーを残しながら吹きつける。マホガニーのこげ茶が影になるわけだ。

 ここでデカールを貼り、つやけしクリアーを吹きつけたら、油絵の具のローアンバーでウォッシング。その後 タミヤエナメルのサンド系でドライブラシを施し、ハルレッドで錆び汚れを再現して完了である。
 キャタピラはつやけし黒銀で適当にドライブラシし、ハイライトにほんの少し銀を筆で入れている。
ホイールのゴム色は面倒だったので塗っていないが、下塗りのこげ茶色が土の感じも出しているように見え、模型としては成立していると思う。

砲の布カバーは実感がよく出ているので、アクセントとしてカーキ系でドライブラシした。実車のカバー部は写真のような雰囲気で、実際は車体と同色で塗られているようだ。(北京博物館のT-59)
ライトや牽引ロープなどを丁寧に取り付ければ、完成となる。

組み立てに半日、塗装に半日、最後の仕上げに半日で、3日くらいで完成すると思うので、ぜひ作ってみてください。
楽しいですよ。 (完成)







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Vol.2 2009 Mar.        www.webmodelers.com          Office webmodelers all right reserved     リンクフリー


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