三菱が佐野栄太郎技師を主務者とし、愛知、川西との競合に勝って、昭和14年10月に海軍に正式採用されたのが零式水上観測機である。
戦艦に搭載し、弾着高空観測を任務とする機体に求められた性能は、高高度で弾着観測が可能であることと、敵戦闘機に匹敵する格闘性能を合わせもつということだった。
このため、三菱は格闘性能がよい複葉形式をあえて選び、当初は 翼厚10%の薄翼、アスペクト大の楕円平面翼であった。旋廻中の強力な自転現象に苦しみ、対策として、直線テーパー翼に大改造し、主翼に翼端ネジリ下げを実施、上半角を増やし 上翼が4°18′下翼が4°30′となり、最終的に現在の主翼形になった。
また、方向安定性不足のため、垂直安定板を85%増積し、方向舵も30%増積したので、最終的に大きな垂直尾翼となった。
外形で特徴的なのは 抵抗を減らすため、翼間支柱がI型一本となっていることである。このため、主翼桁間隔が狭く、翼ネジレ強度を海軍から心配された。
|
|
主翼張り線は 2本式で、前側が22Φの気流型(流線形)飛行張り線、後ろ側が14Φの気流型降着張り線である。その間にジュラルミン管の張り線振れ止めがついている。主翼は折りたたみ可能である。
エンジンは瑞星13型。潤滑油冷却器を主フロートの前脚に収容させ、空気抵抗の少ない機首形状となった。
胴体は後部が金属モノコック、前部が鋼管溶接構造である。
任務上、第一の兵器というべき通信機は96式空2号無線電信機を搭載した。出力40W,短波の場合500海里に連絡可能。
武装は 前方にビッカー九七式7.7mm三型改一ベルト給弾400発を2丁装備。後方は92式7.7mm旋廻機銃円盤型弾装が装備された。
格闘性能を重視した海軍最後の複葉機であるが、単翼機の技術を取り入れて、設計されているため、軽快な運動性を持つ洗練されたシャープな外観となっている。
|