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ニューキット・レビュー
 BAC LIGHTNING F.1A (トランペッター 1/72)

by   田口 博通  Hiromichi Taguchi

 ニューキットレビューのコーナーは WEBマガジンの即時性を生かし、市販品の購入後、どの雑誌よりも もっとも早い 新製品レビューの実現を目指しています。

さて、今月のレビューは トランペッターから3月初頭に発売された1/72 BAC ライトニング F.1A/F.2 
 F.1Aは派手な塗装から 人気がある割りには 1/72では、40年前に発売されたAIRFIX製しか無かったので、大きな穴が埋まりました。ただお値段が 3990円と1/72では飛びぬけてお高い。 果たして その出来は?



■ 実機について
 BACライトニングは イングリッシュ・エレクトリック社(後のBAC社)が設計したイギリス初の超音速戦闘機です。1954年に原型P.1Aが初飛行し、3回目の飛行でマッハ1を超えました。
 極めて特徴的なデザインで、矢羽型の60度の後退翼、「鯉のぼり」のように あんぐりと大きく開いた機首のエアインテーク、縦置きにした双発エンジン。 まるでSF、サンダーバードか謎の円盤UFOを想像させます。
 このエンジンと機首から伸びるエアダクトが 機体容積のほとんどを占めるため、燃料を積むスペースがほとんど無く、防空戦闘機として運用を開始した後も、航続距離の短さに泣くことになりました。
 ちなみに 第1エンジンは主翼の下、第2エンジンは主翼の後ろ上に 互い違いに装備されていますので、縦長楕円の胴体形状になっています。
 F.1Aは F.1の改良型で、アビオニクスの更新により、胴体下側面に 長い配線カバーが張り出しています。
 下腹の着脱式燃料タンクは小型のままですが、左翼下面に空中給油用の受油プローブを装備着脱できるように 改造されています。1960年に初飛行し、28機が生産されました。 武装は 機首に30mmアデン砲2門。空対空ミサイルとして ファイアストリーク もしくは レッドトップ AAMを2発装備できます。

 F.1Aで 最も有名なのが 本誌作例の「ファイアーバード」です。第56スコードロン内に 公式デモンストレーション・チームとして編成されています 。 各翼前縁を 炎のような派手なREDに塗り、各地の航空ショーで 8機の見事なダイアモンド編隊を見せ、人気となりました。
 「ファイアーバード」に使われた機体は、F.1Aのレーダーをはずして、機首にバラストを積み、給油プローブも 装備しておりません。さすが、渋チンの英国であります。

ほとんど 鯉のぼりのような胴体形状である。


矢羽型の60度の後退翼と 縦置きのエンジンが ライトニングの特徴。


機首の「鯉のぼり」のようなあんぐりと開いたエアインテークと 2門の30mmアデン砲が特徴
 


    ■ キットの印象   

  
 トランペッターのキットはF.1A/F.2となっていますが、外形上の違いも無いため、F.1A の XM181,XM182, F.2のXN779のデカールが付属しているという意味のようです。
 箱絵は いつもながらの へたな絵で 決して製作意欲をソソラレル という種類のものではありません。 カラー塗装図と3機分の詳細なデカールが付属していて、F.1Aの 56Sqnも作れるようになっています。

 機首エアインテークや前脚収容部、エンジン排気口などの部品分割は、1/48AIRFIXの傑作キットを 参考にしたように 感じ取れます。フラップが別部品になっており、その気になれば、ダウン状態にも 可動出来るようです。脚カバーは 内側の彫刻も詳細です。
 現代のCAD設計のキットゆえ、部品の合いもよく、組み立ては簡単です。側面形と平面形の印象は かなりいい感じです。

 しかし、欠点が無いわけではなく、翼断面が なんともはや なさけなく JET機の翼ではありません。 垂直尾翼は前縁が分厚い涙滴形状。 主翼に至っては、複葉機時代の翼断面形状。 つまり、両方とも、キットの翼断面の最大翼厚部は翼前縁にあるのです。
 スキャナーとデジタイザーを使えば、写真から 側面形状を容易に読み取れても、飛行機の知識が無い人がキットを設計した ということなのでありましょう。
 この辺りの弱みは、中国メーカーは今後、改善の余地がありそうです。
 
 通常、ニューキットレビューは、キットをそのまま作るのが お約束なのですが、今回だけは さすがにどうしようもなく、作例は 垂直尾翼の前縁は金属やすりでガンガン削りこんでいます。
 主翼前縁も 下面をかなり削りこんでいます。が、こちらは下面のため、目立ちませんので、修正を省略しても良いかもしれません。
 48エアフィックスをお持ちの方は、その翼断面が、立体資料となりますので、参考にされてください。
 
 それから、中国製キットの特徴である離型剤は、ごたぶんにもれず、このトラペのキットにも強力に付着していますので、洗浄が必ず必要です。(そのままですと、派手に塗料をはじいてしまいます。)
 また、放電加工した型表面のままで、磨きをしないでコストダウンを図っているようですので、成型されたプラスチック表面が軽い梨地状になっています。機体表面は1000番くらいのペーパーで一皮むいてあげると良いでしょう。

箱絵


主翼部品


キットの垂直尾翼の前縁は分厚い。写真では少し削ってみたが、
まだまだ足りない。更に削って薄くする必要がある。
  胴体部品




それでは 製作へ、オープン ザ ボックスと参りましょう。

■ コクピットの組み立て
コクピットは (写真1)のように、バスタブ部品に計器板とグレアシールドをかぶせる形式になっています。 全面を ツヤケシ黒で塗り、サイドパネルの計器をチマチマと塗り分けておけば良いでしょう。  ちなみに、エアインテーク内部とショックコーンは 48エアフィックスを参考にしたような部品分割になっています。 奥行きもあり、エアダクト奥にはエンジンファン部品を配置するようになっています。今後も傑作キットの良い点を積極的にまねて欲しいところです。  エアダクトは型抜きピン跡を削り、内部をシルバーで塗っておきます。

  (写真1) コクピット部品
 (写真3)) ショックコーン


 (写真4) エアダクト

胴体を張り合わせる前に、かなりの量のおもりを 仕込まないとしりもちをつきます。エアダクトがあるため、おもりの場所がないので、コクピットの後ろに「釣り用おもり」を粘土でとめておきました。
(写真2) コクピット部分の組み立て


    ■ 胴体の組み立て
 
胴体は接着後、腹部の燃料タンク部に段差が出ないように、継ぎ目を整形します。
 胴体と機首エアインテークの合いは 良いほうですが、それでも 段差が多少出ます。瞬間接着剤をパテ代わりにしてスムーズにつながるように埋めました。 
 
 主翼の前縁は 下面を少々削ったくらいでは どうしようもないし、見える場所ではありませんので、修正をあきらめるほうが 完成への近道かもしれません。
 また、実機の主翼は主脚の上あたりから、前縁がカクンと下に折れ曲がるようなガル翼的な印象なのですが、キットは逆に上に折れ曲がります。接着時に手で修正を試みましたが、どうにもなりませんでした。
 フラップは主翼を胴体に接着時に同時に組み込めば、可動にできるようですが、後縁の直線が犠牲になります。 作例では 矢羽翼の後縁をキチッと直線が出るようにしたかったので、接着し、エッジを薄く薄く削りました。これで少しは男前があがります。
 
 垂直尾翼はとにかく前縁を薄く削って、層流翼形にしてみてください。垂直尾翼と胴体の接着隙間も 丁寧にパテで埋めておきましょう。こういう場所が 意外と 後で 目立ちます。
 (写真7) 主翼後縁
主翼端のエルロンとフラップ後縁は思い切って、薄く削り、キチッと直線を出すと、ジェット機らしくなる。

(写真5) 胴体と主翼の組み立て


(写真6)  胴体下面燃料タンク


(写真8) 機首
胴体機首とインテークは多少段差ができるので、
スムーズにつながるように、パテを使って整形する。
同時に機銃口部品周囲もパテで埋めて、整形しておく。

(写真9) 機首下面
前脚収容部前後もスムーズにパテを使って整形する。


■ 塗装
 56Sqnの 無塗装シルバーに 胴体フィンと各翼前縁がREDの塗装にしました。

 まず、赤の発色をよくするため、下塗りは全面を グンゼのホワイトサフェーサーで行います。乾燥後、表面を1500番のペーパーで均します。(写真10)
 赤にはグンゼ特色のサンダーバードREDを使用しました。。(写真11)
 次に塗装した赤の部分ををテープでマスキング後、シルバーの下塗りとして、銀に黒を混ぜて黒銀を作り、全面を塗装します。(写真12)

 上塗りのシルバーは グンゼのNo8シルバーを使いました。 下塗りの黒銀をパネルライン部に残しながら、各パネルの中心にエアブラシでまだらに吹いてゆきます。(写真13)
 すると、実感のあるシルバー塗装が出来上がって行くように感じます。 
 好みで、適当に シルバーの色気を数色変えながら、各パネルに調子をつけていっても良いでしょう。
 
 赤部分のマスキングをとると (写真14,15) のような具合に基本塗装は完成です。

 キット付属のデカールは、印刷もはっきりしていて、透明部も狭く、貼り易いデカールでした。主翼上の黒線がポイントですが 細いので 細心の注意が必要です。

 で、最後に、デカール保護のために、クリアーを薄く吹き付けて塗装は完了となりました。
 (写真10) ホワイトサフェーサーで下塗り。
(写真11)  

(写真12)RED部をマスキングして、
銀の下塗りの黒銀を全面に塗装する。

(写真13) シルバーを各パネルに まだらに塗装する。


(写真14) 上面 赤のマスキングテープをはずしたところ


(写真15) 下面



(写真16) 主翼上の細線もデカールが付属している。


(写真17) 尾翼


(写真18) 主翼下面


■ 小物、完成へ
 ピトー管は 金属パイプと洋白0.3mm線を組み合わせて 作り変えました。
 主脚は取り付け角度に注意します。前脚は後ろに傾き、後脚は前に傾いています。作例写真のように ちょっと 腰高なので、主脚タイヤの接地面を削って調整するとよいでしょう。
 脚カバーはイモヅケなので、接着には、スコッチの 多用途強力接着剤(透明)を使っています。
 前脚の後ろカバーの2本のステーが省略されているので、0.3mmの金属線で追加しておくと良いでしょう。

 武装は F.1Aですと、本来は ファイアストリークです。透明部品となっているので、頭を透明で残し、残りの部分を白で塗装すれば良いでしょう。 筆者は ファイアストリークの形が どうみても ウルトラ警備隊のミサイルですので、好みからREDトップAAM装備にしてしまいました。
 いずれも、弾体が少し太めのような気がします。
 
 キャノピーは透明度が良く、枠はツヤケシ黒としておきます。キャノピー枠の黄色のデカールがアクセントになります。
 完成すると、ライトニングF.1Aにしか見えない、なかなか精悍なスタイルになりました。 別売りデカールが 各社から出てくるでしょうから、イギリス機らしい、シックな塗装を並べるのを夢みるのも、また楽しいでしょう。

 とはいえ、このトラペの1/72キット 3990円というのは、72ではなく、48のお値段。ハセガワの1/32シリーズも買えてしまいそうです。
 中国製でも 確かに輸入品には違いありませんが、それにしては 常軌を逸した あまりのお値段ではあります。

 翼断面の欠点と コストパフォーマンスを考えると、
総合評価 ★2つというところでしょうか。

 同じ1/72では例えば、タミヤの傑作キットF4Dスカイレイが900円で買えてしまいます。
 結論としては、完成品の大きさと品質から、輸入品だということを考慮しても、900円から1480円といったところが妥当な価値でしょう。輸入販売者の販売政策の再考をうながしたいところです。

完成写真













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Vol.3 2009 Apr.   www.webmodelers.com /Office webmodelers all right reserved /  
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