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誌上個展

 ホバートラック  1/35 バンダイ 

by かにまる 
 「U.C.HARDGRAPH」シリーズ M353A4 BLOOD HOUND

“ガンダム”と言えばファーストしか興味のない私が、このシリーズに手を出したのは、もともとAFVを中心に模型(ディオラマ)を作り続けてきたのと関係があります。
この「ハード・グラフ」シリーズは、ミリタリーの匂いがプンプン。
思わず食指が出てしまいました。

<車体製作記>
キットの箱もさることながら、キット自体が大きい!
それでもさすが「バンダイ」です。
組み立てにストレスはかからず、一日で組みあがりました。

それでもデカイです。

それをディオラマにしようと考えたのは、まずフィギュアの雰囲気がいいこと!“ディオラマにしてくれ!”とキット自体から叫びが聞こえます。  (下へ続く)
 (編)解説
 このモデルはガンダムの世界観から生まれた「08小隊」というOVAの中に出てくる、ホバートラックで
キットは ハード・グラフシリーズ No.3の 地球連邦軍 陸戦MS小隊ブリーフィングセットとして発売されていたものである。 メーカーのコピーによれば、ガンダムが戦った世界・時代を実際に感じるミリタリースケールモデル「U.C.ハードグラフ」シリーズという趣旨で、ホバートラックは、銃器、リベット穴の形状など細部にまでこだわり、世界観演出のひとつの道具として再現したということである。

 AFVモデラーである作者の ホバートラックのウエザリング塗装技術がすばらしい。弾薬箱、ガソリンカン、整備用ガスボンベなどの小物のリアリティとあいまって、実際には存在しないホバートラックが、あたかも実在したかのように、実感たっぷりに、リアルに再現している。
AFVの香りがプンプンする素晴らしい作品である。




ホバートラックの左側 デイテール。


後部ドア付近



出腹の上官、テントのイスなど細部ディテールも実感タップリ。 


ブリーフィング中の2人だけでなく、他にも兵士が、、、






 (上からの続き)

組み上げは簡単だったんですが、塗装が大変でした。

まず、何色にするか?
模型雑誌で資料をいろいろ探ってみました。

基本的には、フィールド・グレイっぽい。
それではオリジナル性が出ない。
NATO迷彩も考えましたが、作例がありました。
そこで気持ち的にダークイエロー系に染まっていた私の頭の中で閃きました。
「砂漠仕様にしよう!」

幸いフィギュアも砂漠に適応するようなラフな感じ。
ということで“サンドイエロー”に決定しました。

作業工程は、サフを吹いた後、ラッカー系のマホガニーで下地をスプレー塗装。
その後は3段階に分けてエアブラシで塗装しています。

最初は下地のマホガニーをエッジを残すように塗装。
2段階目は、サンドイエローにホワイトを少量加えて、広い面積部分を塗装。
3段階目は、さらにホワイトを強めて、出っ張りに吹きつけます。

後は工具類などのストラクチャーをラッカー系の塗料で塗装。
基本塗装はこれで終わりです。

この先、AFVならエナメル系の塗料でウォッシングをかけますが、
バンダイの製品の場合は、このエナメルに弱いんです。

注意深くウォッシングをかけましたが、やはり小さい部品がポロリポロリと取れていきます。これを修復しながらの作成です。
 
何とか最小限のダメージで済みましたが、最初は右側に着いている“アンダーグラウンド・ソナー”の固定フックを、部品に穴をあけ、0.3㎜の真鋳線を通して可動状態に組み上げたんですが、ウォッシングでやはり砕けて、泣く泣く固定にしました。
このキットの目玉でもある、アンダーグラウンド・ソナーですが、仕方がありません。

これまでならここでデカールを貼って、すみ入れをし、ドライブラシをかけて完成とするのですが、車体表面が広いこともあって間延びした感じが拭えないので、アクセントとして初めて“フィルタリング”に挑戦してみました。

使う塗料は、エナメル系のホワイト、ハルレッド、ジャーマングレー。
この3色をランダムに車体表面に点描していきます。
それをエナメル溶剤を含んだ筆で垂直方向になでおろしていきます。
が、またエナメル系で悩まされました。
ここで、またポロリポロリ攻撃です。
これも何とかだましだましながら作業を終えました。

最後にチッピングです。
今回のチッピングの方向性は2種類考えました。
ホバーというからには、車体構成はアルミやジュラルミンといった軽い素材ではないか。
しかし、アンダーガードには強度が必要なので鉄ではないかと考えました。

そこで車体の基本になる本体部分はジュラルミンと考え、シルバーでチッピング。
アンダーガードは鉄製と考え、グレイでチッピングを行いました。

こうやっていろいろなことを考える時間が一番楽しい時間です。
なかなか難しい作業でしたが、納得できる仕上がりになったと思います。


ディオラマの全景


<フィギュア製作>
バンダイの色ぷらは本当に細かい。
ただ組み上げてすみ入れをするだけで完成(綿密には違いますが…)に近い形になります。

今回はマルケン塗りを試してみました。
ホワイトサフを吹き付けた後、アクリル系の塗料をしゃぶしゃぶにして塗っていく、特殊な塗装法です。
マルケン氏が始めた塗装法ですが、私自ら教えてもらった塗装法ですので、最近のフィギュアの塗装はマルケン塗りにしています。
特に砂漠などの乾いた表現をするのにはマルケン塗りは適していて、今回も何のためらいもなくマルケン塗りを選択しました。
マルケン塗りは彫刻が命ですので、服のしわなどをデザインナイフでかなり掘り込んでいます。
またここでもエナメル塗料に泣かされました。
フィギュアの最終段階のすみ入れで、ポロリと…。
これもまた修復しながらの作業です。

<グランドワーク>
砂漠といってもいろいろあります。
砂山、波型の砂丘など、表現法はいろいろですが、今回は地面が赤く見える砂漠を表現してみました。
砂地でありながらごつごつした岩のある砂漠です。
ブリーフィングという設定もあり、まさか砂漠の真ん中でブリーフィングを行うとは思えませんので、オアシスの近い、雑草もある場所という設定です。

仮に設置してみると、車体が大きいためベースが34㎝×37㎝という大きさになりました。
ドフィックスをまんべんなく塗り、石膏を茶こしで振りかけて、ざらざらした地面の質感を表現してます。
それだけでは間延びしてしまうため、岩に見立てた石膏を砕いたものと雑草を自然に見えるように配置してみました。
 <ディオラマ設定>
キットにはテーブルなどのストラクチャーがあるので、使わない手はありません。それでもキットのものだけではブリーフィングしている雰囲気が出なかったため、デッドストックから小物をチョイスしてみました。

砂漠の日光の中でのブリーフィングですからテントなどもあった方がよいと思い、キットのデッキカバーを改造してテントに仕立て上げました。
このテントのおかげで間延びしていた空間が引き締まったと思います。

トラックのデッキには何を乗せるか悩みましたが、後方から前線へ補給品を運搬する途中という設定にし、タミヤの現用車両積載セットなどからそれらしいものを選択して配置してみました。
配置も実際に置くとしたらどこに置くか。自分なら手元に何を置くか…。
重いものなら取り出しやすいところに…、など考え始めると楽しい作業です。

<最後に…>
「ハード・グラフ」シリーズは、ガンダムの世界観を本物のように思わせる工夫が詰まっています。
特にAFVとの繋がりが強く、新しい展開がこれからも期待されます。
架空のものをいかに現実に置き換えるか、その楽しみがあります。


Vol.6 2009 July.        www.webmodelers.com          Office webmodelers all right reserved   無断転載を禁ず  リンクフリー
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