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スーパーマーリン・アタッカー

小柳 篤司    コヤナギアツシ       . 
実機について
スーパーマリン・アタッカー "Supermarine Attacker" は、名機スピットファイアで有名なイギリスの航空機メーカー、スーパーマリン社が開発した同社初のジェット戦闘機で、イギリス海軍初の実用艦上ジェット戦闘機です。写真の機体は現存する唯一のスーパーマリン・アタッカーです。

撮影時期:2009年2月14日(土)
撮影場所 :ヨービルトンFAA博物館 http://www.fleetairarm.com/

スピットファイアを設計したスーパーマリン社の主任設計技師レジナルド・ミッチェルは、スピットファイアの栄光の生涯を見る事無く世を去った。ミッチェル亡き後を継いだジョー・スミスは、スピットファイアの後継機スパイトフルと、艦戦型シーファングを設計し、原型機は1944年7月30日に初飛行した。高性能を狙い主翼は新設計の層流翼、事故の原因となったトレッドが狭い外側に引き込む主脚は、トレッドが広い内側引き込みに改めたが、性能はスピットファイア後期型と大差無く、ジェット時代到来が迫っていたので軍の注文を得られなかった。軍から提示された単座ジェット戦闘機の要求仕様E.1/44,に対し、ジョー・スミスはロールスロイス・ニーンを装備するジェット戦闘機開発に着手し、1944年8月5日に原型機タイプ392を3機受注した。
 胴体はニーンの直径49.5インチに合わせた新設計だったが、開発期間短縮とコストダウンの為に主翼はスパイトフルから流用された為、脚配置はジェット戦闘機には珍しい尾輪式で翼内のイスパノMk5 20mm機関砲もそのまま残された。

 原型1号機(TS406)は1946年7月26日にボスコムダウンで初飛行、改良を加えられた2号機(TS413)タイプ398から公式にアタッカーと命名された。2号機は1947年10月に空母イラストリアス艦上で発着艦テストを実施したが、1948年7月に事故で喪失した。
3号機(TS416)は主翼を13インチ後方に移動、空気取り入れ口が拡大され、これらの改良が量産型の元になった。1948年9月5日に最初の量産型アタッカーF.1が63機発注され、初号機は1950年4月5日に初飛行した。原型機に主翼折り畳み機構が無かったが、量産機は折り畳み機構の有るシーファングの主翼が流用された。
 
アタッカー最初の量産型は1951年1月に787飛行隊に配属された。イギリス海軍は既にシーバンパイアで空母に発着艦を実施していたが、航続距離が短い等で要求を満たせず実戦部隊に配備されなかったので、アタッカーがイギリス海軍初の実用ジェット戦闘機となった。1951年7月に703飛行隊が二番目のアタッカー飛行隊になったが、機内燃料容量1,331リットルは、同時期のイギリス艦上戦闘機ホーカー・シーホークの燃料容量1,796リットルより少なく航続距離の不足が指摘されたので、胴体下面に1,136入りの補助タンクが装着された姿がアタッカーの標準になった。アタッカーは1951年8月に800飛行隊に配属、同年11月に800飛行隊に配属され、1952年3月に空母イーグルに就役し両飛行隊が最初の実戦部隊となった。 63機発注されたアタッカーF.1の最後の11機は戦闘爆撃機型FB.1仕様で製造され、エンジンをパワーアップしたFB.2が新たに48機発注された。
 アタッカーが配属された空母はイーグルだけ、朝鮮戦争に参加する事無く、ホーカーシーホークの配備で1954年7月から第一線から退き予備飛行隊に配属されたが、1958年には第二線からも退役した。
 パキスタンに艦上機の機能を持たない陸上機型FB.2が36機輸出され1949年1月に1個飛行隊だけ編成されたが、1956年にF-86Fセイバーと交替した。

 アタッカーのエンジン交換は胴体上部を外してクレーンで持ち上げるので、アメリカ機の様に後部胴体を後方に抜く方式より手間が掛かるが、ノースアメリカン社最初のジェット戦闘機が開発したFJ-1フュリーも同様の方式だったので、当時は整備性まで考慮する余裕が無かったと推測する。尾輪式のジェット戦闘機で実用化された例はソ連のヤコブレフYak-15が有るが、ジェット噴射の熱で滑走路を傷める問題が有る事も同様だった。
 尾輪式のアタッカーは前輪式より着艦が難しく、戦闘機としては上昇性能も高高度の運動性能も悪くかったので戦闘爆撃機として使われた。アタッカーは第一線機としての寿命は4年に満たない短命に終わったが、スーパーマリン社にはジェット戦闘機の習作イギリス海軍には繋ぎの役割を果たしたと言えるだろう。

●参考資料●
ATTACKER The Royal Navy's First Jet Fighter
Dalrymple and Verdun Publishing http://www.dvpublishing.co.uk/content/content.php?page=1000

POSTWAR MILITARY AIRCRAFT:7 SUPERMARINE ATTACKER,SWIFT AND SCIMITAR IAN ALLAN Ppublishing http://www.ianallanpublishing.com/home.php?cat=1013

(写真1) 斜め前方から。


(写真2) 主翼前縁からイスパノMk5 20mm機関砲の砲身が出ています。


(写真3) キャノピー下に803飛行隊のクレストが描かれていますが、この機体が同飛行隊で運用された記録は有りません。


(写真4) 主脚前方。


(写真5)主脚内側。 (写真6)主脚外側。

(写真7) 主翼折り畳み部。層流翼の翼断面が分かります。


(写真8) 後部胴体。ジェット戦闘機に珍しい尾輪式です。


(写真9) 尾部。後部胴体内にテイルパイプが通っているので、狭いスペースに尾輪を収める為に車輪は二重です。



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