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RA-5C ビジランティ  (トランペッター 1/72)   

by 厚木の助さん        。



 一ヶ月のご無沙汰でございました。厚木の助でございます。今月取り上げるのは RA-5C ビジランティ。RAというからには偵察機でございます。米海軍で最も美しい機体と謳われたビジランティでありまして、その姿は鶴を思わせる、すっと伸びたモデル体形であります。極めて大型の機体で、ファントムを軽く超え、A3スカイウォーリアに匹敵します。

RA-5Cの1/72キットはハセガワから40年前に発売された初期型と、最近、トランペッターから発売されたストレーキが伸びた後期型が在ります。今回は、新しいトラペ製を選んでおります。  トラペのキットは新しいだけに 全面スジボリで、フィルム計器板がおごられたキットで、翼端とフラップが可動状態にも選択できます。脚もしっかり固定できるようになっております。水平尾翼の強度が心もとないのですが、少し追加工作をするだけで、これだけの大型キットが意外と頑丈に組みあがります。
 トランペッター RA-5C 箱絵




実機について

ノースアメリカンRA-5Cは、A-3スカイウォーリアの後継機として開発された高速核攻撃機A-5ビジランティを改造して、偵察機とされたものです。ビジランティとは  自警団員という意味。この自警団員という意味は、マッハ2を越すA-5は胴体内部に核爆弾を抱いて、空母発進の核報復攻撃能力として運用するために開発されたものだったのです。 その後、核報復攻撃能力のポラリス潜水艦への戦略転換により、A-5は余ってしまい、高速を生かして偵察機に転用されたというわけです。
RA-5Cは1962年初飛行しまして、偵察航法士席から背中にいたるハンプバック状に胴体形状が変更され、偵察カメラ、電波、IRセンサーなどが収められたカヌー型のポッドを胴体下面に装着しました。 ECM偵察機材はポッド型にパッケージして胴体の核爆弾爆弾倉に収納されています。速度命の偵察機でありますから、極力、空気抵抗の増加する機外装備品を最小限にしています。
 侵攻速度マッハ2以上を生かして、北ベトナムの強行偵察などに多用されました。
しかし、「我に追いつくミサイル無し」とはいかず、損耗も大きく、18機が直接戦闘でコンバットロスされています。事故も含めた東南アジアでのロス総数は26機。
 生産機数は全部で79機。43機が攻撃機A5から改造され、36機が1969年から新造されています。新造機は主翼前縁のストレーキがインテークまで延長され、パワーアップされたJ-79-GE-10エンジンを装備しました。
実は、RA-5Cには弾頭威力1メガトンのMk43熱核爆弾を搭載できる装備が残され、1967年まで核攻撃任務についていました。あまり知られていない事実です。ちなみにこのMk43はトラペのキットに武装アクセサリーとして付属しています。

胴体下面のカヌー型偵察機材収納部


製作

 コクピット

 

コクピットはバスタブ型で 内部をダークガルグレーに塗り、サイドコンソールを黒に塗り、スイッチ類を白と赤で丁寧にドライブラシすればほぼ出来上がります。
計器板は、フィルムの計器と透明部品のパネルを重ねるようになった凝ったものですが、残念ながら 完成するとあまり見えません。
シートは 板鉛でシートベルトを追加しますと、実感もましてきます。 

板鉛を細切にして 自作したシートベルトは、先端を折り曲げて、バックルに見立てておりますが、小スケールではこれで充分でありましょう。


 胴体と翼

 

 胴体は かなりテールヘビーのため、機首にしっかりとおもりを仕込む必要がございます。
前脚は胴体左右接着前に仕込むように設計されていますので、塗装時に折らないように注意が必要です。
 主翼と胴体のつながりは上面を優先してスムーズにつながるように接着し、下面の隙間を埋めるとようにいたします。
 主翼端は別部品となっていて、折りたたみ状態も選択できるようになっておりますが、残念ながらイモ付け状態で接着強度不足。展開状態で接着する時には、主翼から貫通するシンボウをいれるように追加工するようにいたしますれば、かなり丈夫になります。
水平尾翼と垂直尾翼は接着ピンが細くて短く、強度が足りません。ここは、長めのシンチュウ線で置き換え、胴体側にシンチュウ線に合わせた内径のシンチュウパイプを仕込んでおきましょう。これでしっかりと強度が確保できます。
 ところで、プラモデルを組み立てておりますと つくづく実感しますのが、原因と結果の因果律。
「機首オモリが少ないとシリモチをつく。」
「イモヅケ接着部は 必ず壊れる。」
「細いピンは折れ、尾翼がポロリ」
どれも 原因なくして結果なしで、当たり前の事ではあります。しかし、以外と普段の生活の中では実感することのできない因果律です。まー、普段の生活では怪我をしてからでは遅いのではありますが。
やはりこの世は「神の作りしもの」と、万物の摂理を実感せずにはおられません。

塗装

 キットの指定マーキングを選びRVAH-3としましたが、デカールには手持ちのスーパースケールデカールを使わせていただきました。RA-5Cでは珍しいCAG風の塗装でして、垂直尾翼のGJのコードと上下のストライプの部隊ユニットカラーが美しい機体です。 レッド、イエロー、オレンジ、グリーン、ブラックの順に塗られております。NAVY標準のガルグレーとホワイトのハイビジの出で立ちで、両色ともグンゼの特色を使ってあります。
 翼前縁はダークガルグレーで塗り分けております。
インテークの赤ですが、これから決死の戦いに望むジェネラル ルージュであります。グレーの機体の中で紅一点。機体を締めるアクセントとなります。しかして、ここはデカールを型紙に赤で塗装した方がすっきりと仕上がります。
 美人は表面もつるつるとお化粧したいもの。デカールを貼った後、クリアをしっかりかけておきました。
 せっかくのスジボリですので、ごく軽く油彩のローアンバーでスミイレを行いました。やりすぎると美人が薄汚れて汚くなりますので、ご注意の程。フラップは可動状態で固定といたしました。
 


細部塗装

 
キャノピーの塗装ですが、マスキングゾルでカバーし、透明部以外を片刃のカミソリの先を鋭角に折って使うと、メスのように極めてシャープに切れます。写真は 貝印の一番安い片刃カミソリです。刃先を折る時は、必ず紙にはさみ、怪我をしないように折ってください。 切れなくなったら、次々と先を折って行き、常に切れ味が良い状態で使うようにします。
このカミソリは デカールの透明周囲を切るのにも重宝します。


完成した佇まい

 いかがでしょうか? おそらく一度も飛行機の実物など見たことがない人が設計したであろう中国製キットにかかわらず、それなりのスタイルになっているのが不思議です。それだけ、元の機体のラインがしっかりしていたということでありましょう。
ちなみに厚木にRA-5Cが初来日したのは、1964年10月ベトナム戦闘航海中のレンジャーが横須賀に寄港した時のこと。RVAH-5(NG)が厚木に降り立ちました。それからRA-5Cの姿が見られたのは1970年代前半までの短い期間です。RVAH-12のNK121が3軍記念日のオープンハウスで公開されたのは1967年のことですので、恥ずかしながら 私目も実物を拝んだことがありません。
頭に刷り込まれていない機体ゆえ、トラペキットのスタイルを許せるのかもしれません。機首がスマートすきるような気もしますが、気のせいかもしれません。資料写真もカメラのレンズのおかげで多少歪んでいるはずですし、これだけ大きな機体となると 本当の姿態をつかむのは難しいでしょう。
それにしてもぴんと青空に張った巨大な垂直尾翼がかっこよろしゅうございます。

今回はこんなところで、失礼つかまつります。
厚木の助でございました。 





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Vol.14 2010 Feb..      www.webmodelers.com /Office webmodelers all right reserved /editor Hiromichi Taguchi 田口博通
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