Home > 今月のハイライト> 連載 世界の名作発掘(第11回) エレール1/72 「Potez 63・11偵察機」

連載  世界の名作(迷作)キット発掘コーナー (第11回)

エレール1/72 「Potez 63・11偵察機」

by 鳥巣 Torisu           /    

<初めに>

 冬将軍最後の抵抗の寒気が全国を覆いサクラの開花が遅れ気味ですが暖かい春がやってきました。
 部屋に新しい風を入れると共に押入れの奥深い所に眠っている傑作キットを起こしてあげてください。 
 新たな発見が有りますよ



<実機解説>

1930年代のフランス軍用機のスタイリングは某航空評論家が「醜悪」の一言でまとめられたように特に爆撃機の分野ではアミオ機やブロック機等軍の要求に応えればスタイリングはどうでもいいと言ったマンネムリズムに陥っていた。そのような風潮の中で比較的戦闘機や軽爆撃機は高性能を目指しスタイリングも他の欧州諸国の物に近い形でまとめられていた。
 しかし双発の美しい多用機631から派生したポテ63・11偵察機は打って変わってマンネムリズムに退化した残念なスタイリングの機体として作られてしまった

 ポテ63・11機は元々「多用途(戦闘・地上攻撃・編隊指揮等)任務機」として開発・配備されたポテ631機の偵察機型として軍からポテーズ社へ改造指示を出された。
 
 タンデム3座の双発戦闘機を偵察機へと改造するにあたり機関砲を搭載していた機首部をガラス張りの観測員席と変更しさらにコクピットから下方を見やすくするためキャノピーが大きく左右に貼りだした格好になり前後に短くなった。
 この改造の結果機首部は「温室」と呼ばれるほど大きなガラス張りとなりコクピットは胴体からはみ出したとても前作のスマートな631機とは似ても似付かないスタイリングとなった
 さらに631から受け継いだノームーローン700hp(×2)エンジンの性能では機体形状の悪さと相まって400キロ台前半の速度しか出せずバトルオブ・フランスでは制空権を握ったメッサー機の前では生還も難しく225機が失われた。休戦後残存していた機はドイツに接収された後イタリアやルーマニア等の枢軸国に供与され敗戦まで使用された。



<キット解説>

 エレール社のキット中でも古参の部類に入る物でボックスアートが3度変わり1990年代から2000年代前半までは日本国内でもキットの存在が確認されましたがここ数年は生産が休止されているようで「SEMER」ブランドでも発売されておりません。
 製品はイタレリよりチョット柔らかめのプラでショットされており暗いグレーで成形されています。
 全体に複雑な脚周りの部品とコクピット内部の部品が多く感じますが基本パーツは少なめです。
 バリーエションの直協機型の部品としてガンパックの部品も同封されていますが今回の作例では使用しておりません
 透明パーツは肉厚ですが綺麗です
 デカールも台紙に黄ばみが見られますが使用するには問題がありません
今回の作例のキットは初版のボックスアートの物を使用しました

                箱絵 
デカール

胴体パーツ

主翼などのパーツ

制作

<コクピットから>

フローアーパーツと座席・計器盤・無線機・酸素ボンベ・防御用の7・5mm機銃のパーツで構成されています。
 機体内部の色は良く解らなかったのでMA誌2009年7月号のDo520の制作記事を参考にMrカラー317を塗りました。座席は銀・ボンベや計器盤・機銃はジャーマングレー・どう見てもチャリンコの座席にしか見えない(苦笑)防御銃座の座席はウッドブランで塗り分けました。
偵察員席やコクピッは手を入れたくなりますが透明パーツが肉厚で取り付けると中があまり見えなくなるので何もしませんでした。腹ばいになった偵察員やパイロットを乗せると動きが出て良いアクセントになるでしょう。


<胴体と翼の組立>

コクピットが終わったら胴体との接合と翼の組立です
胴体を張り合わせ時に上下の段ズレが生じますが輪ゴムを巻いて一晩程固めた後はみ出した接着剤を削れば綺麗に整形できます。
翼上下の貼り合わせも入念な仮組と干渉する個所をデザインナイフで削ればスムーズに行きます。
毎回主脚や脚周りの組立は制作の終わりの方で行うのですがこのキットの場合複雑な脚周りの組立と取り付けを先にしなければ後で脚収納部に取り付ける事が難しくなるので翼の上下の接着の前に組み付けました。
このキットに限らずエレールのフランス双発機シリーズは何故か複雑な脚周りがちゃんと再現されていて作り手側にとっては少々難儀なキットです(汗)

 翼の整形を終えたら胴体と接着します
フィレット部分と翼の接合面に大きな隙間が発生したので周囲をマスキングテープで保護しタミヤポリパテを盛り付けて完全乾燥の為1昼夜乾燥させてから削り修正しました。
この個所以外にももう一点大きな注意点があります
それはV字に広がった水平尾翼の取り付けです
角度の指示が無いのでネットで入手した三面図を見ながら角度を決めます
角度を決めて取り付けた後流し込み接着剤を接合部の隙間から流して補強しました。ここも胴体との間に隙間が生じたのでポリパテ修正を施しました。
全体を#400・1000・1500の順に紙ヤスリでペーパー掛けを行い#1200の缶のグレーサーフェンサーを吹き付けて表面を整えます
 全部消した凸モールドを彫り直したら塗装へと進みます





<塗装>

WW2時期のフランス空軍のカラーは「この色」と言った確かな物が無く悪く言ってしまうと子供がクレヨンで塗ったような不思議な迷彩です
説明書のインストがフランス語表記の為全く読めなかったので
MA誌09年7月号の作例記事とネットで収集した海外のモデラーの作例から推測した結果

機体下面―Mrカラー117番「ライトブルー」

機体上面―Mrカラー331とスカイブルーをブレンドした「ブルーグレー」

迷彩 (茶色)Mrカラーマホガニにサンドブラウン(少々)をブレンドした色 (緑)Mrカラー120番「ライトグリーン」

以上4色の色を使い塗装しました
基本色としてライトブルーとブルーグレーで機体を塗装したのち
茶色の迷彩をハンドピース用に希釈した塗料を細筆に含ませ塗り分けラインを書きます。薄くラインを書いたらハンドピースでラインから内側へ向かって吹き付けます。ノズルの先端を絞って薄く吹きつけると綺麗に塗れます。
茶色が終わったら同じようにライトグリーンの迷彩を施します。
今回の作例では茶色の面積が少し大き過ぎたのでこのキットを作られる方はブルーグレーの基本色を多めに残した方が良いでしょう
塗装が乾いたらエナメルのウオッシングで全体のトーンを落ち着かせます



<マーキング>

<細部部品の取り付けと仕上げ>

黄ばみが有り心配したデカールですが ぬるま湯に1分程ひたして台紙から剥がしたら問題なく使用できました
キットの保存状態が良かったようです。
 糊に不安があったのでタミヤのマークフイットを使用して定着させました。
ラウンデルや白い矢印の発色は最近のエレール社の物より数段良く滲みや印刷のズレは有りませんでした。
最近はクォリティーが落ちているのでしょうか。
デカールを貼り終えたら保護と仕上げの為にクリアーを吹きつけます
クリアーは定番のMrカラー「スーパークリアー」を使用しました
吹きつけ後1晩乾燥させた後まだ付けていないキャノピーやピトー管を取り付けて完成です



<最後に>

<参考資料>

未だにあの不思議な3色迷彩が解らなくてフランス機を作るのを躊躇していましたが今回このキットの制作にあたりフランス機を作るのが楽しくなりました
醜悪と言われても他の国に無いフランス機のセンスをあなたも感じてみませんか
今は休止品である貴重なエレールのキットを制作する機会を与えてくれた編集部に感謝です
今回は以下の資料を参考に制作しました

モデルアート2009年7月号「塗りが上達!飛行機モデル」
文林堂・第二次大戦イタリア・フランス・ソ連軍用機
大日本絵画・「世界の駄っ作機3」
光人社NF文庫「続々・飛べヒコーキ」
インターネットの海外サイトから資料画像を入手






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Vol.16 2010 Apr.     www.webmodelers.com /Office webmodelers all right reserved /editor Hiromichi Taguchi 田口博通
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