Home >今月のハイライト> 連載 世界の名作発掘(第15回) エアーフイックス1/72 AICHI D3A1 Val (愛知99式艦上爆撃機)

連載  世界の名作(迷作)キット発掘コーナー (第15回)

 エアーフイックス1/72 AICHI D3A1 Val
(愛知99式艦上爆撃機)

by 鳥巣 Torisu           /    

<初めに>

念願の夏到来です、モデラー諸氏は如何お過ごしでしょうか
昨年以上の猛暑に堪えて制作ペースは落ちモチベーションは上がらないと思いますがやがて来る秋の展示会シーズンに向けて気合いを入れましょう。



<実機解説>

昭和11年日本海軍はこの年に採用された複葉の96式艦爆の後継機になる11試艦上爆撃機の開発を国内の航空機メーカー三社(三菱・中島・愛知)に指示した。中島飛行機と愛知がこれに応じ試作機を海軍に納入してテストを繰り返したが両メーカー共甲乙つけ難く結果昭和14年12月愛知飛行機の試作機が採用され、99式艦上爆撃機11型(D3A1)として昭和17年まで生産された。
機体の特徴として大きな楕円翼や背びれを含む大きな尾翼とスパッツは急降下爆撃時の方向安定を高めるために取り入れた物で命中精度の向上に寄与した。
また楕円翼を採用した背景には当時愛知飛行機はドイツのハイケンル社から技術提携を受けていたのと同社から輸入したHe70高速輸送機の設計を模倣とした経緯がある
14年11月の中国戦線での地上軍の協力の為華南に派遣されたのを皮切りに鉄道や橋梁の爆撃や海軍陸戦隊の支援等に活躍した。
 
太平洋戦争の引き金となった真珠湾攻撃には空母赤城を筆頭に6隻の空母から129機が出撃し戦艦群と飛行場を爆撃、59~75%と命中率を記録した。続いて昭和17年4月のインド洋海戦では艦爆隊の攻撃だけで英海軍の重巡2隻と空母「ハーミーズ」を撃沈する大戦果を挙げたがこの時が99艦爆の歴史の中で最大のピーク時であった。
機動部隊の99艦爆は珊瑚海海戦・ミッドウエー海戦とアメリカの機動部隊と戦い正規空母レキシントンやヨークタウンに多大な被害を与えたがベテラン搭乗員を多く失いさらにガタルカナル島を廻るソロモン航空戦では残存の艦爆隊はラバウルの地上基地から出撃しアメリカの輸送船団を攻撃しその戦力を回復できないほど消耗した。
 改良型の99艦爆22型が昭和18年に採用され運用されたが19年には主力艦爆は「彗星」に取って代わられた。
空母から降りた99艦爆は終戦まで基地航空隊から出撃しフィリピンの戦いではレイテ湾の輸送船団攻撃に使用され沖縄の戦いでは多くの99艦爆が特攻機として突入した。
正式採用されて以来6年もの間、零戦や97艦攻と共に太平戦争の激闘を最後まで戦い抜いた名機である



<キット解説>

 エアーフイックス社が発売している数少ない日本機の一つである99艦爆は何と1960年代に製品化された歴史の長いキットです
日本では1980年代にフジミが出すまでは1/72のスケールでは唯一のキットでした(フジミ・タミヤは大きい1/48や1/50でした)
キットはエアーフイックス社特有の全面リベットでモールドが表現されています。
パーツも胴体・翼・スパッツ・爆弾投下装置と25番爆弾といたってシンプルな構成です。
キャノピーも肉厚がありますが綺麗です
デカールは日の丸が滲んでいて透けた感じがします
 
箱絵

胴体パーツ

制作

<コクピット>

胴体内の突き出しピンにL字型の座席を付けるシンプルな構成で計器パネルや操縦かんは有りません
胴体内部を帝国海軍機伝統の青竹色(笑)を塗り座席を銀色に塗った後取り付けて終わりです。このような構成は初期のエアーフイックス社のキットに見られる物で99艦爆だけが手を抜かれているわけではありません。


<胴体と翼の結合>

<隙間と段差の修正>

座席を取り付けたら胴体を張り合わせ翼を取り付けます
接合部には酷いガタは無く接着剤を多めに塗って取り付けました


古いキットにも拘らず全体にパーツの整合性は良く今回はタミヤのポリパテを使わず昔ながらのプラパテのみ使用しました。
パテが乾いた後#400・1000・1500の順に紙ヤスリで盛り付けたパテの個所とリベット表現されたモールドを全て削りました
水気が乾いたら#1200の缶スプレータイプのサーフェンサーで表面を整えます



<消したモールドの再現>

サフ吹き後、表面のキズが無いのを確認したら消したパネルラインを再現します。手元に資料があればそれを参考にしますが見つからなかったのでキット付属のインストを参考に大まかな直線部分を彫り直しました。72サイズのレシプロ機の場合これで十分かと思います。



<塗装>

基本塗装として
下面にクレオス社MrカラーNo128「灰緑色」
上面にクレオス社MrカラーNo126「暗緑色」
を塗ります。
上下の塗装が乾いたらパネルラインに沿ってクレオス社MrカラーNo40「ジャーマングレー」を吹き付けて影の表現を付けます。再度基本色を重ね塗り陰影を付けて単調にならないようにしました
機体全体の塗装が済んだらエンジンカウリングからコクピット前部をクレオス社Mrカラー「カウリング色」で塗り分けた後エナメルの黒でウオッシングを施して塗装作業は終了です。




<デカール貼りと細部パーツの取り付け>

今回は尾翼が真っ赤な艦爆隊指揮官機
空母蒼竜「エグサ・タカシゲ」機です
デカールには赤い垂直尾翼と水平尾翼が再現されて若干大きいのですが問題なく貼る事が出来ました。
少々印刷が薄く色が滲んでいるのが惜しいところです
日の丸の滲みと透け具合がどうしても気になってしまったのでストックのエアロマスターデカールから日の丸を切り出して使用しました。
 デカールの貼り付けが終わったら
日本軍にはとても見えないパイロット(苦笑)・キャノピー・スパッツ・25番(250kg)爆弾と投下装置・プロペラ・ピトー管等を取り付けて半光沢のクリアーをハンドピースで吹き付けて乾燥させたら完成です。
半世紀近いベテランキットですが当時のエアーフイック社の実機の特徴を巧く捉える感性の凄さを垣間見るキットでした
今回も貴重なエアーフイックス社製99艦爆のキットを制作する機会をくださった編集部に感謝です。

制作時にあたり下記の資料を参考にしました
参考資料
文林堂 日本海軍機全集96艦戦から震電まで
光人社 続々・飛べヒコーキ(佐貫亦男著)









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