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Team Lotus type 49 (1967)  (エブロ 1/20)

by 田口博通 Hiromichi Taguchi
 


 エブロから 待望の1/20 ロータス49が発売されたので さっそくNEW KITレビューで紹介しよう。

 ロータス49はF1のエンジン排気量規定が1.5リッターから3リッターに変更された1967年のF1オランダGPから投入されたフォード・コスワースDFVエンジンを搭載したF1史上に残る名マシンである。 エブロのキットはオランダGPでジム・クラークが優勝を飾った⑤号車と 以後のイギリスGPからメキシコGPまでのバリエーションを部品替えで作ることができる。

 ロータス49は45年前の1968年にタミヤから1/12の名キットが 発売されて以来のモデル化で、1/12は大きくて高価なため、作りやすい価格帯の手ごろな大きさの1/20 キットの登場を待っていたモデラーも多かったと思う。
 ちなみにコベントリー・クライマックス1.5リッター時代の ロータス25は15年前にタミヤから1/20で発売されていて、 2009年5月号のwebmodelersでも製作記事が掲載されている。
これでLotus25とLotus49を同スケールで並べて飾ることができるようになった。
 同じビンテージ葉巻型の1960年代F1レーサーでも この15年間でプラモデル設計は3次元CAD導入など大きく進化しており、それを反映して、モデルも進化しているように感じる。 

手前⑤が3リッター Lotus49(1967) (エブロ 1/20 新発売)、 奥④が 1.5リッター Lotus25(1962) (タミヤ 1/20 1998年発売)



 エブロのLotus49は 期待にたがわない出来で、作ってみた感触はタミヤとほぼ同じテイストの部品構成、きちっとしたモールド、説明書、イタリア製のデカールで 緻密な模型に仕上がっている。それも道理で、エブロの設計陣が元タミヤの出身だからだ。(7月号のModel Graphix に代表の木谷さんのインタビューが特集されていたので 本屋でご参照を)  ロータス49の構造は3リッターエンジンが後部バルクヘッドにむき出しで直結され、リヤサスペンションはエンジンに懸架されるようになった。エブロのキットでは このあたりの緊張感が素晴らしい雰囲気で再現されている。筆者は黒のプラグコードと ファンネル・カバーを金属メッシュで追加してみた。




 前部カウルは取り外し式で ラジエターとオイルタンクがモデル化されている。サスペンションもよく再現されていて、ブレーキディスクは オランダGP,イギリスGPの2枚合わせベンチディスクと イタリアGPのソリッドディスクが選択できるようになっている。
また、ウインドースクリーンも4種入っていて、ドライバーとGPに合わせて作り分けることができる。
 前後の太いタイヤのパターンのモールドも秀逸だ。タイヤのFirestoneの文字とゴールドのラインは最初からタンポ印刷されていて 親切だ。

   


箱絵 オランダGP で優勝したジム・クラーク車ゼッケンNo⑤
デカール (イタリア製)


車体部品とタイヤ、4種入っているウインドースクリーン

モノコックシャーシー部品、メッキ部品、エンジン部品など

製作の注意点と補足

 製作は説明書に従って順序通り組んでいけば、それほど難しくない。が、それでも パズル的な要素もあり、初心者には難しく、ある程度の経験が必要だ。箱には14歳以上のHOBBYISTSが対象とある。 
 組み立て説明書は一方向から書かれていて 裏側に接着する部品は具体的な接着位置が把握しづらい箇所もある。また、言葉が少なく、部品図だけで表現されているので、経験者でも 今組んでいる箇所の図だけでなく、次の図、次々工程の図の説明内容まで見て仮組をしっかりした方が確実に組んでいけるだろう。
 残念なのは 組み立て説明書に部品名称が無いこと。超F1マニアならばいざしらず, 入門者にとって今組んでいる部品が実車で何という部品なのか解らないで ただ図を見て組んでいくほど 楽しみをそがれることはない。
 説明書が煩雑にならない程度で シフトレバー、ショックダンパー、メンバーなど 基本的なものだけでもいいから 名称をつけていただけると プラモ作りが楽しくなるのだ。
 
  また、組み立て説明書は部品ごとに塗装してから接着する方式を前提にして書かれている。キットとしては これでもちろんいいのだが、実際的な組み立てでは 小さい部品が多いため、その方法だと 接着場所の塗料を剥がす手間も必要だし、接着強度も低下する。それで、ある程度ブロックに組んで接着を確実に行ってから塗装した方が強度が確保できることもあり、説明書をにらみながら、どの場所をどこまで先に接着してブロック化するか 頭を使うことになる。
 塗装の際の注意点としては 部品ランナーが中国で生産したためなのか成型時の離型オイルが少し残っているようで、ラッカー塗料をはじくので、組み立て前に部品ランナーを洗剤でよく洗うか、Mrカラーのシンナーで ごしごしと拭くとよいだろう。

1 モノコックの組み立て

 モノコックボディは組み立て説明書では(第1図)から(第3図)までに分割されて説明されている。
 (第1図)はモノコックシャーシー(写真4)までなので、一度、(第3図)のモノコックボディ完成形 (写真5)まで仮組をして見よう。 すると シートとメーターパネルをのぞいて接着してしまい、それから塗装をしてもよいことが解る。特に前後のバルクヘッドは力のかかる部品なので、しっかりとモノコックシャーシーに接着してから塗装したいものだ。
 
 説明書の指定でモノコックシャーシー内面をニュートラルグレーで、前後バルクヘッドをフラットアルミで塗り分ける。
 モノコックシャーシー外面は塗装指示がないが、(写真5)までの仮組で、モノコックシャーシー下面が車体下部に露出することが解るので、この部分をボディを塗装する時に同時に車体色のグリーンに塗装するようにする。
(写真1) モノコックシャーシー部品

(写真2) モノコックシャーシーの組み立て 

(写真3) モノコックシャーシーと前後バルクヘッド、計器パネル、シートなどの全部品 

(写真4) モノコックシャーシー部分の仮組

(写真5) モノコックボディ全仮組
車体外皮パネルと こういう具合に組まれる。

2 ボディの塗装

 ボディパネルはカウルを含めて6点に分かれていて、モノコックシャーシーに組みつける前に ボディ部品全てのロータスグリーン塗装を終えておく必要がある、シャーシーに組んでからではマスキングが難しくなるからだ。
 グリーンは塗り重ねる回数で色が濃く(暗く)なっていくので、できるだけ 6点同時に塗装する方が部品毎の色の濃さの違いが発生するのを避けられる。
 塗料のグリーンはMrカラー旧版No.3の残りがあったので それを使ったが、最近 色味が白が加わった彩度が落ちた別色に変わってしまったようなので、これからならば Finisher'sのピュアグリーンを買い求めた方がよいだろう。 
 黄色のストライプはイタリア製のデカールが付属していて、問題なく使えるのだろうが、カウル先端の曲面にうまく貼れる自信がなかったので、結局マスキングして塗り分けた。2009年5月号のLotus25の製作記事でマスキング方法が詳細に述べられているので、そちらを参照されたい。
 デカールはイタリア製で、印刷も良好。ただし糊が強いので一度貼ってしまったら もう動かすことができない。位置決めを慎重に!!

塗装が済み、デカールを貼ったボデイ部品と モノコックシャーシー
(シャーシーの下面をグリーンに塗装することもお忘れなく)

ボディ部品の塗り分け 

グリーンを塗装
 グリーン塗装後、黄色のストライプを塗装するが、デカールをカラーコピーし、塗り分けの型紙を作って、マスキング位置決めをしていく。
4点の部品に分かれるのでストライプが一直線になるように注意。

3 フロントバルクヘッドの組み立て

 組み立て説明書は一方向から書かれているので 裏側に接着する部品は具体的な接着位置がつかみずらい箇所もある。 (第4図)フロントバルクヘッドでのブレーキペダル部品、ダンパー部品などは裏側から見ると 右写真のようになる。 
また、B3とC13でメッキ部品のフロントアッパーアームD7を上下で挟み込んで接着する格好になる。
 フロントバルクヘッド (写真下側が 実物の上方向なので注意)

4 フロントアップライトの取り付け

 ブレーキディスクは どのGPで作るか、選択式になっている。
今回は オランダGP ジム・クラークが乗った⑤仕様で作っているので、ベンチ ディスク(ventilated Disk)を選択している。
前輪の角度はフロントアッパーアームD7とロワーアームD8,D9の長さと位置設定で決まってしまうが、エブロの力量を信じて そのまま作っておこう。
 またB13のピンを先にD8の穴に入れるように 組み立て説明書(第5図)で指示されているので必ずそのようにしよう。そうしないと B13をC35に接着した後ではD8の穴にはB13のピンを入れられない。R側も同様だ。 説明書の右下図とは矛盾するが そういうことである。
 
組み立て説明書では次工程(第6図)でラジエターをフロントアップライトに取り付けるように指示されているが、ラジエター支柱が細く、ボディにエンジン取り付けの際に壊してしまい易いので、ラジエターの取り付けは最後にした方がよいだろう。
 組み立て説明書 (第5図)


モノコックボディにフロントアップライトを取り付けた状態

5 エンジンとトランスミッション、リヤサスペンション

 フォード・コスワースDFVエンジン部品はエンジンヘッドが2種付属しているので作りたいGPに合わせて選択しよう。オランダGPはC31を使う。
ファンネルとハイテンションコード(プラグコード)も同時に組むように指示されているが、これはボディにエンジンを取り付け後の最終段階にした方がファンネルの向きバランスや コードなど組みやすく、綺麗に仕上げられると思う。

 また、リアサスペンションの組み方も要注意で (第9図)から(第12図)までを通しで読んで、理解しておく必要がある。
 
 まず、(第9図)トランスミッションのC5,C6部品はドライブシャフト穴のKEY切欠きが上方向を向くように接着する必要がある。ドライブシャフト側にもKEY(凸起)があるのだ。(筆者は見事に間違えたが、部品の画を見るときちんとそう書かれていた。) 各部品の画を漠然と見るのではなく、注意して見ることも必要だ。

 エンジン本体とギアボックスの間に入るD24部品の取り付け方がトリッキーで、これも要注意。
 筆者はしばし考えた末、説明書の指示とは違うが、エンジンをバルクヘッドに取り付ける前にエンジンにD24とトランスミッションを接着してブロック化した(右写真)。
 
 さて、右の写真のリヤサスペンションのディスクユニットは 実はまだブラブラできちんと位置固定されていない。

 エンジンとトランスミッション、リヤサスペンションのブロック

 エンジンを胴体に取り付け後、(第12図)でラジアスアームを取り付けるのだが、(写真下)、このアームの役割を説明しておこう。

 (第10図)で示されるD24部品上部の穴とリアサスペンションのブレーキディスク基部(B1-B8)の上部の穴には (第12図)のラジアスアームE6の先端が貫通する。そして 初めてD14の角度が決まって固定される。(それまではD14とディスクユニットはぶらぶらするので、マスキングテープででも 仮固定しておけばよいだろう。)
 また、ブレーキディスクユニット(B1-B8)の下部に2つの穴があるが、上の穴にB17ダンパーのピンが入り、下の穴には (第12図)のラジアスアームD26の先端がD14のオーム型の溝を通して差し込まれてやっと固定される。

 つまり ブレーキディスク基部(B1-B8)は貼り合わせたら、アームの先端が通りやすいように あらかじめ ピンが通る孔を極細やすりで よーく整形しておく必要があるのだ。

 また、ラジアスアームも先端に角度がついて曲がっているし、ドライブシャフトも曲がっている。3D設計の成果なのだろうが、空間的な固定位置は立体的に各部品の微妙な取り合いで決まっていく。 よって、位置と平衡バランスが決まり最終固定する段階で流し込み接着剤を細い筆先につけて各部を固定するのがよいだろう。 

 組み立て説明書は部品の絵と塗装指示があるだけで、言葉が少ないが、図内で完結しない場合は、ちょっと一言 「ここには (図12)でE6が差し込まれて固定されます。」などと 注意書きを加えてもらえれば、もっと入門者にも組み立てやすくなると思う。

6.ハイテンションコードと ファンネル

 エンジンがボディに組みつけられ いよいよ最終段階。
イグニッションコイル部は、各GPで選択式となっている。そこから出る8本のハイテンションコードは外径0.4mmの黒ビニールチューブが指定されているが、手持ちが無かったので、ちょっと太いが0.56mmの線で代用した。後は、説明書の通りにヘッドカバーの穴に入れるだけなので、簡単にできる。
 ファンネルは4個を左右でひとまとめにしておいて、角度のバランスをみて慎重に取り付ける。

最終段階でエンジンにハイテンションコードとエアファンネルを取り付けていく。


ハイテンションコードを配線している所。



 さて、エアファンネルのカバーだが、キットでは透明部品で付属している。これは金属メッシュで自作して置き換えると一段と実感が増す。簡単に自作できるので その方法を紹介しよう。
 用意するものは 60番程度のシンチュウメッシュ。これは 鉄道模型を扱っている模型店か、東京なら東急ハンズで買える。今の時代ならば、インターネットでシンチュウメッシュで 検索して通販で購入も可能だ。
 1.2mmのプラ板に透明部品と同じ径(5mmくらい)の穴を丸やすりで開ける。
 筆の先を耐水ペーパーで丸く削っておく。
金属メッシュを小さく切り、プラ板の穴の中に筆の先でゴシゴシ押し込み、成型する。
これを 金切はさみで丸く切れば完成する。想像よりもはるかに簡単にできる。
 ファンネルには透明エポキシで接着しよう。

シンチュウ網、穴の開いたプラ板、先端を丸く削った筆先。
丸く見えるのがキット付属の透明プラ製ファンネルカバー部品



成型したシンチュウ網で、これを小さな金切ばさみで切ればファンネルカバーの完成!


エアファンネルに自作ネットを 透明エポキシで接着固定してとりつける

完成へ

 ラジエターは先端カウリングと干渉しないように調整しながら取り付けよう。
 また、(図12)のB26パイプ部品は先端の取り付け先が指定されていないので、胴体のパイプA16と一直線になるように接着しておけばよいだろう。
 ウインドースクリーンの接着には透明エポキシを使うのが無難だ。最後に砲弾型バックミラーを曲がらないように取り付ける。

タイヤはゴムブッシュL1が弱く、重さで抜けやすいので、注意。
これで各部を一通り点検し、タッチアップを入念に行い、完成となる。 あとは好みで フロントサスペンションのブレーキパイプ、シートベルト、ファンネル基部に燃料のインジェクションパイプを透明チューブで追加してもいいだろう。

できれば飾り台をデコパージュ板などで自作しておごってやりたい。
ベテランでなくても 一週間くらいで製作可能と思われる。

 実感として、ちょっと組み立てに苦労する箇所はあったかもしれないが、それはそれで、きっと楽しい思い出となるはず。エブロのこのキットは製作中のメカニック感がたまらない。充実した製作時間を過ごすことができた。

また、完成した Lotus49の姿は実に魅力的だ。

あなたにもぜひの一作をお奨めしたい。

 ロータス49は1960年代からプラモデルにどっぷり浸かった熟年モデラーには思い入れの強いF1レーシングカーだろう。いつの日か ライオンのタテガミの如きホンダ RA273(1966)が 同じ1/20 で並べられると、これほどうれしいことはない。
 エブロさん ぜひ 開発をお願いします。









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Vol 57 2013 July.    www.webmodelers.com /Office webmodelers all right reserved /editor Hiromichi Taguchi 田口博通
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