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連載  世界の名作(迷作)キット発掘コーナー (第2回)

フロッグ 1/72 「ホーカーシドレー・シービクセンFAW.Mk2」

by 鳥巣 Torisu           / 
    
 初めに:
 梅雨の季節ですが全国のモデラー諸氏は湿度や長雨と格闘しながらすっきりとした夏空を待ち望む心でしょうか
今回は未だに安住の地を目指し世界の模型メーカーを旅する旧フロッグ社製「ホーカーシドレイ・シービクセンFAW.Mk-2」をご紹介します。

<キット解説>
当初はイギリスのフロッグ社製品最後期のモデルキットとして発売されましたが フロッグ社が倒産後その金型は他の製品と共に他社メーカーに流れました。 解っているだけでも
ノボ→ロシア:東欧系の「イースタンエキスプレス」→ドイツ・レベルと3つのメーカーを渡り歩いています。
レベルブランド以外の製品はインストやデカールの品質が悪くパッケージも袋入りやヨレヨレの箱を使用していた物もあり商品としてはクオリティーの劣るものばかりでした。
2000年代初めにドイツレベルの製品として再販されましたがこの再販も長くは続かず1~2年で市場から消えてしまいました。現在フロッグのシービクセンは店頭では入手難となっております。次はどのメーカーのブランドで再販されるのでしょうか
それとも2009年エクストラ社から新金型でキット化されたのでもう二度と模型市場には現れないのか他の旧フロッグ社製品と共にその行方が気になります。





 「実機解説」
 詳しい実機解説は別ページに記載されています小柳氏の解説と実機写真コーナーにお任せしますが、手短にお話しますと
1946年イギリス海軍の要請を受けてデハビラント社(後のホーカーシドレー社)は前作のバンパイアーを基礎にした双発エンジンを搭載し40°の後退角を持つレーダー装備の戦闘機(DH110)を開発した。同時期に空軍も高性能の夜間迎撃の構想を持ちデハビラント社に開発を依頼するがこちらは世界初のデルタ翼搭載のグロスタージャベリンの採用によりキャンセルされた。
空軍の受注は逃しをしたものの海軍の戦闘機として正式に採用されるがWW2戦後の財政難から今度は1949年には海軍からも契約をキャンセルされてしまった2機作られた試作機はキャンセルされた後もテストは続けられていた
 財政難の中海軍は低価格で直ぐ就役可能なシーバンパイアの発達型「シーベノム」を採用するが性能に満足しておらず

1951年ベノムの後継としてDH110を改設計した「DH110Mk-20X」を発注した。翌52年ファーンボローでデモ機が観客席に墜落する事故を起こした為その対策に追われ正式に生産を決定したのは1954年暮れのことで1957年生産一号機が初飛行した。
初飛行を終えたのちDH110Mk-20Xは「シービクセンFAW」と命名され1960年から空母へ配備されるが、後継機とされたF-4ファントムFG1が配備され始めた1968年から退役が進められ1972年に最後の運用飛行隊であった892SQが空母イーグルの展開を終えその任務を全うした。
シービクセンは61年にクエート危機や64年のインドネシアやアデン紛争・65年のローデシア紛争及び67年の南イエメン危機などの作戦に参加したが一度も戦闘参加の経験がない稀有な戦闘機でもあった。
シービクセンの名は海の雌キツネと言われるが転じて「口やかましい女」の意味も持ち合わせている。

 「製作」

<コクピット>

 順番通りコクピットの製作から始めます。
フロッグ製品のコクピットは内部が再現されておらずパイロットの頭部(サラシ首状態)だけが有ると言う非人道的な表現で有名ですがこのキットではパイロット・フロアー・椅子の3点で再現されています。但しレーダー手席側空っぽです。
ここを作りこむのもモデラーとしての醍醐味ですが今回は旧キットを手軽にカッコ良く作る主旨なのでパイロットをコクピットに取り付けるだけにしました。
 パイロットを載せることによって動きを演出することができます

(写真1) コクピット内部


(写真2) コクピット


<胴体の組み立てと修正・そして追加工作>
 古い製品ですが全体の合わせは悪くありません。
機体の特徴であるツインブームの接合部分と主翼の取り付け部分にガタと隙間が生じたのでドロドロ状態のタミヤセメントで接着した後瞬着パテとポリパテを盛り付けて修正しました。

 胴体側の主翼取り付け部と主翼の接着面が共に水平になっていなかったので角材に紙ヤスリを充て水平になるように削りました。このとき翼のツバの部分も一緒に削りました。

 胴体と翼を接合し全体の隙間や段ずれ等をチエックした後インテイクに取り付けてある整流板を修正します。
 あまりにも板の幅が厚過ぎたので胴体の接合の前に切り飛ばしてインテイクをリュターで整形しました。

全体の基礎工作が終わったので後0.5ミリのプラ板を差し込みインテイクの形状に合わせて再現しました。ここは眼につきやすい箇所なので追加工作をした方が良いでしょう


       (写真3) 修正前のインテーク

(写真4)インテークの修正


(写真5)薄いプラ版で整流版を再現


(写真6)組み立て第一段階終了


<モールドの削除とパネルラインの再現>

当初はモールドを活かした作品にする予定でしたが、胴体上面のモールド表現がデカールを貼る時に大きな障害になりそうだったので盛り付けたパテと一緒に全てのモールドを削り落しました。
 400~2000番まで番数を上げた紙ヤスリで磨きあげたら1200番の缶サフを吹いて1晩乾燥させて寝かせます

     (写真7)パテ修正



    
(写真8)パテ修正後サフを吹いた状態



< パネルラインの掘り直し>

パテを削る時に一緒に消したパネルラインを掘り直します
当初は3面図を参考に全て掘り直そうとしましたが当時のイギリス機は細かいハッチ等のパネルが数多くあり全てを再現するのは不可能と判断し、大きく目立つパネルラインのみ再現させて機体全体の美しい曲面を強調するようにしました。
 使う工具はハセガワ製P-カッターとトライツール・テンプレートセットそして近所では入手難(我が家の戦略物質)になってしまったモデラーズのマスキングテープ「細め」以上3点を使い1時間程の作業で掘り直しを終えました。

凸モールドを消して掘り直す作業は少し面倒で避けたい作業ですが後のデカール貼り作業で凸モールドに悪戦苦闘しながらデカールを貼る辛さに比べたら幸せかもしれませんよ




(写真9) パネルラインを掘り直した状態と使用した工具達


 <塗装>
塗装作業に入ります
このころの標準カラーであるグレーとホワイトのツートンカラー「ペンギン迷彩」をチョイスしました。

最初に下面にホワイトを塗ります
今回はウオッシングで汚しをする事を考慮してなるべく明るい白を塗ろうと思いクレオス製「EXホワイト」を使用しました。青味の入っている白ですが発色は良くウオッシングを施しても変に濁りません。

下面の塗料が乾いたらマスキングを行い上面色で汚れるのを防ぎますマスキング作業が終わったら上面色を吹き付けます
今回組み立てて作業以上に難しかったのが機体上面の塗装ですイギリス海軍気特有のブルーグレーですが参考に見たF社のF-4GR1のインストにはG社333番ダークシーグレーの指示があったので鵜呑みにして同色を塗りましたイメージしていたカッコ良いブルーグレーではなく紺色の暗い飛行機になりました。 数分間途方に暮れましたが気を取り直し陰影の影を付けるための暗い色に使おうと前向きに考えなおして「333番+ミデアムブルー+317グレー」の3色をブレンドしたオリジナル「ブルーグレー」を掘り直したパネルライを残すように塗装して単調にならないようにメリハリをつけました。

基本塗装が終わったらジャブジャブに薄めたエナメルのセミグロスブラックとレッドブラウンを混ぜた色で機体全体にウオッシングを施して汚しを表現しました。パネルラインの端に溜まったウオッシング色を溶剤で落として一晩乾燥させたら
塗装作業も終わりです。


(写真10)基本塗装1


(写真11)基本塗装2

(写真12)基本塗装3
(写真13)基本塗装4

<デカール貼りと細部部品の取り付け>
 デカールを貼ります
ホウキに乗った魔女で有名な890飛行隊のマーキングを選びました。レベルは自社開発以外の製品には冷たいのかこのキットのデカールは少々印刷のクオリティが低くラウンデルがズレてたりコーション類が読めないほどにじんでいました。しかし過去にこのフロッグのキットを再販したメーカーの殆どがデカールは使いものにならなかったので感謝しましょう。
 小さなタッパの器に入れたぬるま湯にデカールをひたし30秒後器から取り出しノリが溶け出して動き出したら所定の位置にデカールを貼ります。
テッシュでデカールの水分を拭き取ったあと完全に乾くまで一晩乾かします乾いたのを確認したらハンドピース用に希釈した「半光沢」を全体に吹き付けてマーキングは終わりです。
 

 最後に脚やミサイルそして空中給油プローブを取り付けます
ここで艦載機として重要な部品がないことが発覚!
 それは着艦フックが再現されていませんでした(どうやって着艦しろと)今回小柳氏から提供して戴いた貴重なシービクセンの写真の中にフックの写真を発見しそれを見ながら使えそうなパーツを探したところF-14のフック(もしくはA-4)が使えそうでした。
 早速フックをハセガワのF-14のキットからモギ取り長さを短くして取り付けました。本人はランナーパーツのどこかに有るハズと思いこんでいたので最後まで無いことに気付きませんでした。皆さんもパーツのチェックは組み立て前に必ず済ませましょう(苦笑)(~_~;)

全体の完成写真




 なんやかんや言いながらもプラモデル史上太古の製品として扱われるフロッグ社製
「ホーカーシドレィ・シービクセン FAW Mk-2」が完成しました。
流石に今の視点で見ると辛い所がありますが半世紀近く前の製品でこの機体の特徴を上手く捉えたキットは無いと思います。
もし押し入れや納屋に寝むっていたらもう一度触れてみてください
そこに年月共に熟成したイギリス機の豊潤な香りを感じるでしょう

今回シービクセンの制作にあたり多くの貴重な実機写真を提供して下さった小柳氏にこの場を借りてお礼申し上げます。
 ありがとうございました

Vol.6 2009 July.        www.webmodelers.com          Office webmodelers all right reserved   無断転載を禁ず  リンクフリー
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